ポールキャスナー 薪ストーブのある生活

日本における草分け的存在が贈るカントリーライフの提案。薪ストーブにまつわる様々なストーリーをお届けします。

バーモントキャスティングスを訪ねて

  

今年のゴールデンウィークに、私とファイヤーサイドのスタッフ3人と
バーモントキャスティングスの工場へ研修に行ってきました。
私は少なくとも年に一度参りますが、今回は4名の旅でした。

 

爆弾テロ!

中部国際空港からデトロイト経由のボストンのルートでしたが、
デトロイトに到着し、乗り継ぎを待っている間のこと。
ターミナルのレストランで地ビールを飲んでいたら、
大きなテレビに「ボストンマラソン爆弾テロ」のニューズだ!
ボストン便の運休などが放送されたので、
我々は「どうしよう」と懸念したが問題なく飛べました。
ボストンに着いたら昼間なのに町に人が出ていないこと!
普段はにぎやかな町なのに寂しい感じでした。

ホテルのチェックインの時は警察が多いこと警備の厳しいこと。
チェックイン前に荷物の中まで検査されました。
「町に出ないでください!」など言われました。


閉じ込めれたBoston Marriott Long Wharfの部屋からの眺め! 


どうせお店はどこも営業していなかったので、
あきらめてホテルのバーで乾杯することを決めた。


バーのテレビは続いてテロのニューズばかり!
しかし当日夜9:30ころに「容疑者が捕まった」の情報が流れ、
外に出てもOKになりました。


町の中は祭りのようで、国旗を持ち、踊り回ったりのシーン。
次の日はボストンのウォーキングツアーにしました。
ボストンは私の故郷なので、もちろんポールがツアーガイドです。

 

ポールのボストンツアー


先ずはボストン生まれの薪ストーブの発明家、
ベンジャミン・フランクリン氏の彫像に行きましょう。
ご存知の方が多いでしょうが、ベンジャミン・フランクリン氏は従来のレンガ製の暖炉を鋳物化してドアも加えて、現在の薪ストーブの原点になるものを発明した。
我々にとって薪ストーブの神様に近い素晴らしい人物でした。
フランクリン氏は政治家や新聞出版者でした。
アメリカ最初の大学と郵便局も設立しました。


1740年にベンジャミン・フランクリン氏は、どこでも設置できる暖炉を鋳物で作り、火をドアに閉じ込め、レンガの暖炉より熱効率が良く、薪の消費量も少なくなるよう考えた。写真がそのペンシルベニア・ファイヤープレイスです。
空気の流入をコントロールできる工夫をして、燃焼効率を高めた薪ストーブの初めでした。
その後、ベンジャミン・フランクリン氏が考案した「フランクリンストーブ」は、長年にわたる改良によって様々な形に変身し、現代の薪ストーブにつながっています。


その後ボストンのレンガ並びの建物の外観ツアー。
ちょうど100年前に京都からボストンへプレゼントされた桜が満開でした。


ニューベリ・ストリートのレンガビル。後ろはプルデンシャル生命ビル。
伝統建築とモダン調の建築のコントラストが面白いところですね。


バックグラウンドにストリートミュージシャンの音楽を楽しみながら
森さんとアウトドアカフェで休憩。


古いレンガの壁。これから薪ストーブを考える方に模様のアイデアになるかね。


ボストンマラソン爆弾テロの現場:アメリカの国旗、お花、スニーカー、ゼッケン、Tシャツなどが捧げられていた。これより先は立ち入り禁止でした。

 
アメリカは車検がないので、クラシックカーは普通に走っていた。


数日前にテロがありましたがにぎやかでした。
ストリートパフォーマンスが多いクインシーマーケット。
彫像と思ったら実は顔まで銀色の化粧をしていた。お金を出せば動き始める。
うしろの黄色のバスは水陸両用車。
そのまま海や川で走れるダックツアーのフネ兼クルマです。


ボストンのノースエンドはイタリアンの町です。
この地区の店では最高に美味しいカプチーノが飲める。
観光客は知らない店ですよ。Vittoria Cafe。


私の少年時代の実家を訪れました。
思っていたより小さく感じました。
二階の右の窓は私の部屋でした。懐かしい!


ウォールデン池のソロー氏の小屋を訪ねました。
彼は1845年より2年半、自給自足の生活をここで送りました。
アメリカの環境保護運動の先駆者として評価が高く、
日本ではアウトドア愛好家に信奉者が多い事で知られています。


Mr Henry David Thoreauさんですか?
調理用の薪ストーブが暖炉に付いていました。


自給自足の生活をするには薪ストーブが必需品です。
アーリーアメリカンのデザインは素敵ですね!


よく見かけるドアの上のファンライトのアーチです。


アンコールの薪ストーブのドアの模様は
ニューイングランドの建築からデザインされたことがよくわかります。


アクレイムの薪ストーブのドアは、バーモント州・ウッドストックという町の銀行の窓の形ではないか?


バーモントキャスティングスのストーブのデザインは建築から影響を受けていますね。


バーモントキャスティングスはベセルにあります。
ウッドストックから18マイル(約29キロ)です。


ウッドストックイン(ホテル)のロビーの暖炉!
私は中に入りましたよ。(暑かった!)
薪は1メートル以上だ。ドアやダンパーがないので普通の暖炉は燃焼や暖房効率が悪いが、石の壁を触ると暖かい!
常に熱を壁に送り続け、蓄熱しているのでロビーがかなり暖かい。


ウッドストックにはアメリカ初のスキーリフトがあります。
クリント・ギルバート氏の牧場で、フォード社のモデルTのエンジンにケーブルをつけて丘の上まで歩かなくても登れるようになった。
この発明が初めてのスキーリフトになった。


モントピリア市はバーモントの州都です。
写真は州会議事堂です。金箔のドームは美しい。
アメリカの州庁の金箔ドームは11個あります。


チーズはバーモントの名物です。
シャープチェダーやジャックが特に美味しい。

 

ミーティングスタート!

さて、そろそろ目的の研修の日が来ました。
月曜の朝6時からバーモントキャスティングスのミーティングがスタート!
今回の目的は、日本仕様(今現在ファイヤーサイドが出荷するまでに手を加えている内容)を工場の生産工程に加えていくのが目的です。
先ずはチーム各自の自己紹介です。


チームメンバー;左前からマイク・ライス(品質管理技師)、ゴーディ・ノールズ(ホウロウ製造技師)ローレイン・スコット(リーン生産リーダー)、私(背が低い!)、シェリー・ホーダー(国際サポートスタッフ)、ビル・コリー(チームリーダー)、マイク・ハドソン(品質管理部長)
左後ろからブランドン・ロック(本体組み立て技師)、ロイ・ジャクソン(鋳物品質管理部長)、塚本正晃(FS開発研究部)、ピーター・マクレー(VC開発研究部長)、森一広(FSストーブ品質技師)、ビル・オコナー(FS開発研究部)
   
 
一日目は、物づくりのプロセスにおいてどの時点で効率を高めることができるのかを確認し、生産工程の改善案を話し合いました。(全てトヨタ自動車方式の改善方法なのでよく日本語が出てきました!)
一つ一つの工程に毎回同じ結果を出さなければいけないことが品質の基本です。
ストーブ100台を作っても1台目と100台目が同じでないといけない。
当たり前のことですが、一台のアンコールを作るにも1000以上の工程があります!フロントドアだけでも50位の工程がありますので、人間、方法、機械、天候、計算、材料の6つが製造に影響されます。
一つでも変わると商品の品質に影響する。


先ずはこの原理を理解するためにボール投げゲームをします。
ボール投げ機、テープメジャー、6個のボールを用意します。
ボール投げ機のアームを170°の角度に引っ張ってリリースし、ボールが飛んだら床に当たった位置を測る。
一人3回投げます。参加者は10人なので30回投げます。
30回のデータを取り、チャートに書き込みます。
目的は100%同じ位置に当たることですが35%しかできません。


どう改善すれば100%になるか?
先ずは工程表を作り、ボール投げのばらつきを探し出します。
「1.ボールをセットする 2.アームを170°まで引っ張る」など。
次に人間、方法、機械、天候、計算、材料の6つの影響を探ります。
ボール投げ機のアームが170°ならば必ず同じ距離に飛ぶはずです!
皆同じ角度になっているのでしょうか?
「ボールが6つなので、重さや大きさが異なると当たる位置が変わるでしょう?」など。

次は改善案を出します。
170°に必ず止まるようにストッパーを作ったりして、一つ一つ改善案を出していく。ボール投げのプロセスを改善した後もう一度ボール投げを行いました。(30回投げます)
改善後、80%以上同じ位置に当たるようになりました!
さらに改善すれば100%になるでしょうね。


デファイアントのドアの工程表を書き出した。
ここで45個の工程があるのがわかります。
ストーブ作りは奥深いものです。


ロイ・ジャクソン氏と改善案の打ち合わせ。
皆さんストーブ作りに熱烈です。
会議室ばかりの打ち合わせではなく、工場の現場に出て実務が多かった。

 

バーモンターの熱心な薪ストーブ作り

製造中の工程やラインの流れを確認しました。
実際作っている作業員たちの「生の声」を取り入れて、
より良いストーブが仕上がります。


リサイクルされたグレードの高い鉄が鋳物のストーブになる。
一日に数十トンを溶かしています。


1371℃で溶かした鉄を鋳型に流し込む。
14°の温度差があるだけで仕上げが大きく影響されます。
厳しい環境です。素晴らしいストーブづくりがここでスタートします。


鋳型です。必ず裏表の2枚がセットです。
これはストーブのどこの部分か分かりますか?


出来上がった鋳物はきれいですね。


イントレピッドのドアの穴を開ける金型です。
両開きが特に難しいのでここは技術の見せ所です。
金型もバーモントの職人たちが作っています。


デファイアントのダンパーの穴開け用のジグです。
私たちが関心したことの一つはジグや金型です。


全てはジグに任せません。やはり職人も頑張っています。

 
リーン生産リーダーのロレーンさん。
製造がスムーズに流れることを確認する責任者です。


ホウロウ仕上げは最も難しい技術です。
顔料の原料はガラスや石です。
ガラスや石を鉄の玉と一緒にドラム缶に入れて何千回もぐるぐる回します。
鉄の玉がガラスを砕き、粉末状態になります。


ホウロウが鋳物に付着しやすくするために表面に微細なショットブラストをします。
色を付ける前に一度鋳物に下地を塗り、乾燥させて窯を通す。
数時間815℃の窯に入れる。


次に水に溶かした顔料をスプレーして、もう一度乾燥させて窯を通す。


ホウロウ技術士のゴーディさん。


815℃窯の中。アンコールのドアが熱で真っ赤になっています。


仕上がりのホウロウは本当に美しいですね!

 
ストーブの気密性を保つグラスファイバーロープを鋳物の溝にしっかり差し込む。
鋳物どうしの間の全ての隙間が埋められます。


工場内の販売機です。
中は飲み物ではなくて、マスクや軍手や小道具です。
従業員番号を入力して必要なものを取る仕組みです。
これで必要なものをすぐに手にし、そして使用量も測りやすいシステムですね。


バーモントの住民はバーモンターと呼ばれています。
アメリカの中でも独立思考でたくましい人種です。
バーモンターはプライドが高く妥協しない人たちです。
バーモンターがバーモントキャスティングスの心です。

  

鋳物の薪ストーブの製造は3Kばかりです。
きつい、危険、汚い仕事です。
工場は毎朝6時からスタートし3時に終わります。
その後、農業やメープルシロップ作り、
フィッシングやハンティングなどをやる人が多いです。


「日本のストーブ愛好家の皆さまが快適に暖かい冬が越せるように頑張りますよ」と
右のブライアン・ロウーさんからのメッセージです。
ブライアンさんはクエストラル(チョウケンボウ)の巣を作っています!
チョウゲンボウの赤ちゃんの数を確認したりしています。


バーモントキャスティングスの薪ストーブのデザインは見た目だけではなく、薪燃焼の研究、鋳物の技術、ホウロウの技術が融合した奥深いものです。
バーモントキャスティングスの薪ストーブは世界中に愛されています。
バーモンターたちが勢いっぱい薪ストーブの世界を広げています。
バーモントキャスティングスの皆さん、ありがとうございます。

 



このWebマガジンはファイヤーサイドが提供しています。

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コメント

  1. こんにちは。

    原宿のとある薪ストーブを扱う商社ではビルの中で薪ストーブを販売し、薪ストーブを焚いています。ビル内で薪ストーブやペレットストーブを焚くためには、どのような事柄をクリアしていけば良いか教えていただけないでしょうか?

  2. オツジさま、

    コメントありがとうございます。
    地区の規制やビルなどの設置については現場によって事情がことなることが多いので、コメント欄では詳しい説明が難しいです。お近くの薪ストーブ専門店にご相談したらが一番早いと思います。

    詳しくはファイヤーサイドの販売代理店のリンクは:
    http://www.firesidestove.com/dealer/
    にご覧ください。

  3. はじめまして。

    バーモンドキャスティングスが、どのような姿勢でストーブを作っているのか、その一片を知ることができました。

    10年ほど前から赤アンコールを使用していて、メンテナンスなどで改善の余地があることを感じておりますが、雰囲気・機能とも気に入っております。

    バーモンドキャスティングス、とは言いませんが、ファイヤーサイドを訪問するのを当面の目標にしておきます。

    今後とも、よろしく。

  4. naomintさま、

    コメントありがとうございました。

    ここで見せられるバーモントキャスティングスの工場の姿勢がほんの一部しか表現できませんが、実はここで紹介した内容よりももっと奥深いです。

    10年前のアンコールの設計は1992年の設計のものです。おかげさまで今年の7月3日にNEWアンコールが日本で登場し新発売になります。NEWアンコール(NEWデファイアントも)今までのない新型「フレックスバーン燃焼システム」がついています。メンテナンスなどで改善と思われることがすべて答えられております。詳しくはこのURLを見て下さい。

    http://www.firesidestove.com/products/woodstoves/flexburn.html

    ファイヤーサイドへの訪問をお待ちしております。

    ポールより

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