冬の渡り鳥のおみやげ
今年も冬の渡り鳥たちがやってきました。
遠くシベリア方面で夏の間に子育てをしていた野鳥たちが、日本で越冬するためにやってきたのです。
水辺を利用するカモの仲間から人里や森を利用する陸の野鳥たちまで、いろんな自然環境に定着して冬を越します。
日本にやってきた野鳥たちは、ひっそりと休んで落ち着いてから「来ましたよ」というように小さく鳴いたり、姿を現したり、そんな野鳥を見つけるたびに冬の到来を実感するものです。
(Photo:人家周辺で越冬するジョウビタキ。冬の渡り鳥のなかでもひときわ鮮やかなオレンジのお腹が目立ってファンが多い鳥です)
ボクの拠点は長野県の伊那谷。
ジョウビタキは例年だと10月14日がボクの記録ではもっとも早い渡来ですが、近年では11月中旬までずれこむこともあります。
また、ツグミは「キィキー」と喉の奥にくぐもったような声の挨拶をしてくれるので、これを聞くと、やっぱり今年もちゃんと渡ってきたのだね?…とうれしくなってしまいます。
もちろん、水辺にはカモの仲間も日増しに増えていき、冬の足音が否応なく近づいていることを実感します。
(Photo:住宅地のため池に小群のカモたち。ボクの住んでいる長野県では冬になるとこんな風景をよくみかけます)
ところが、今年もよからぬお土産を運んできたみたいです。
それは、「鳥インフルエンザ」…。
すでにハクチョウやツルの飛来地では強毒な鳥インフルエンザが見つかっていますが、山野で越冬する大小の野鳥たちもウイルスを十分に持っている可能性があります。
一般的にウイルスは密状態になると変異して強毒になるのではないのか、と考えられています。
それは野鳥のウィルスも同じなので、ハクチョウの湖のようなところで「餌付け」が行われて、自然界では考えられないような野鳥たちの密集状態がつくられてしまうことはマズイのかもしれません。
このようなところでのウイルス発生は、やはり気をつけなければならないことでしょう。
ということは、野鳥を保護をしようと善意で餌撒きをしてしまうことに、私たち人間は反省をしなければならないところにきているのではないでしょうか。
餌を与えて野鳥たちをたくさん集め、そこに密状態をつくりあげていくことにより、鳥インフルエンザウイルスを強いものに変異させてしまう恐れが十分にあります。
(Photo:ハクチョウの餌付け場所に異常に群れるオナガガモたち。渋谷のスクランブル交差点のようです)
なので、やはり、野鳥は保護などと言わずに、そっとしておくことがイチバンの共存につながるでしょう。
生物がいる限りそこには必ずウイルスがつきものですから、自然界との空間バランスが大切なのだ、と思います。
もっとも、野鳥だけに目を向けるのではなく、大陸から季節風に乗って大量に渡ってくるクロバエの仲間がウイルス源とする研究者もいます。
冬のハエの存在なんて私たちはまったく考えもしないことですが、ハエの存在も視野に入れていかなければいけないとは・・。
冬の渡り鳥を見ながら、過密社会とウィルスの脅威にまで思いが及んでしまう今日です。
(Photo:鹿児島県に飛来してくるナベヅルたち。餌付けによって猛烈に増えてきたけれど、すでにここでもウイルスが見つかっている)
(Photo:スズメほどのアトリの大群。越冬のためにたくさん渡ってくるが、困ったお土産をもっていないとは言い切れないでしょう)
(Photo:こちらはタシギという水鳥。単独ないしは少数で生活するので、密にはなりにくいと思います)
(Photo:ツグミが原因不明で路上に死んでいました。このような野鳥には手で直接さわらないほうが良いです)
(Photo:ハクチョウは美しいからつい保護の手を差しのべたくなるけれど、「自然環境とは何か」と根本的に考える時代にきていると思います)