エッセイ集 薪ストーブの里から

宮崎学 フォトエッセイ 森の動物日記

森と里と野生動物たちから教わった自然のメッセージ 信州・駒ヶ根在住の動物写真家宮崎学のフォトエッセイです

ムササビの眠る森

2012/4/28 miyazaki | カテゴリー: ムササビ | comments(5) »


(Photo:樹幹を登るムササビがこちらをじっと見ていました)

本州から四国、九州の山野には、ムササビという動物が棲んでいます。
リスの仲間で、大きさはネコくらい。
前肢と後肢の間に皮膜があり、これを座布団のように拡げて森を滑空することもできます。
夜行性で、昼間は樹洞などに寝ているためにほとんど目にする機会がありません。
このため、神社や寺の境内、里山にもムササビは生息しているのに、その存在にほとんど気づいていないのが普通です。

ボクは、そんなムササビの存在が好きでたまりません。
どこにでも生息しているのに、それに気づいていない人間にある意味興味があるのかも知れません。
あまりにも身近にムササビがいるのに、ほとんどの人が気がつかないということは、みんなが身近な自然にまったく無関心な証拠だからです。


(Photo:このようにムササビは夜の森を活発に動き回っています)


そんなムササビをもっと知ってみようと、ボクは仕事場の庭にある樹木に巣箱を仕掛けてみました。
巣箱には、内部が観察できるように赤外線のCCDカメラを埋め込み、映像ケーブルを部屋までつないできていつでもモニターできるようにしました。
赤外線カメラなのでムササビには光も見えませんから、安心して普段どおりの生活をしてくれるのでムササビを脅かすことはありません。
とにかく、こうして夜行性のムササビが昼間はどんな生活をしているのかを見てみたかったのです。


(Photo:庭に仕掛けた巣箱)

仕掛けた巣箱には、ムササビがすぐに入ってくれました。
そして、昼間はぐっすり眠っていて、夕方になると巣の外へ出勤していったのです。
このようなムササビの毎日をほぼ10年にわたって観察してみました。


(Photo:ボクが廊下を歩くと、このように巣箱からすぐに顔を出してくる)


そこで、気づいたことは、ムササビは思いのほかたくさん生息しているということでした。
とにかく、100メートル置きに一頭いるのではないかと思えるくらいに、数が多かったのです。
こんなにも数が多い動物なのに、やはり人々はなかなかその姿を観察することはできません。
ムササビが夜行性なので、私たち人間の目で観察するのには限界があるからです。
でも、巣箱だけでなく、ボクは森の樹木の空間にも無人撮影ロボットカメラを何カ所かに設置して、ムササビが樹間を滑空したりして活動するところも狙ってきました。
すると、やはり、無人カメラにはムササビが思いのほか活動的に撮影されることが多かったのです。

こうして、夜行性でまったく見ることのできないムササビの活動を無人撮影しながらそのときの時間や行動パターンを分析して、見えない夜の世界を想像していくのです。
撮影された現実を点と線でつないでいくと、ムササビの生活がかなり実感として想像できるようになりました。

黙して語らない自然の姿を少しずつ「語らせる」ことに、ボクはとても楽しみを覚えます。
あなたも森で木を観察して、大きめの穴を見かけたら、ムササビが眠っているかもしれないと思って見てみてください。


(Photo:樹洞でこんな寝相で寝ているとは思わなかった)


(Photo:昼間、巣穴から顔を出した若いムササビ。眠くて眠くてよだれがたれてしまいました)


(Photo:滑空してきたムササビをロボットカメラがキャッチ!)


(Photoム:ササビの糞はこんな形をしています。)


(Photo:注意してみると森の中にムササビの巣を見つけることができます)


(Photo:巣穴から顔を出してこちらを見ています)


(Photo:ムササビは樹洞以外にも、このように枝先に巣をつくることもあります)

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