宮崎学「森の動物日記」

森と里と野生動物たちから教わった自然のメッセージ 信州・駒ヶ根在住の動物写真家宮崎学のフォトエッセイです

新雪の跡からさぐる動物の動き

ボクのスタジオは、信州の南、中央アルプスの山麓、伊那谷という場所にあります。
伊那谷は信州でも雪が少ない地域です。
長野県でも南部に位置し静岡県や愛知県に境を接しているので、太平洋側の気圧配置に支配されているからです。
なので、長野県というだけで雪が深そうに思われているところがあるけれど、伊那谷には豪雪という言葉が当てはまりません。ボクのスタジオは、後ろに中央アルプスを控えているので、夕方や夜中に雪はパラパラパラと舞うようにやってきて1cmくらい積もることが何回となくあります。
雪が降ってもうっすらあっさりの雪なので、冬の里山の雪景色を適度に楽しめるのが、伊那谷の特徴なのではないかと思います。
加えて、平地でも標高が600~800mと高いので寒さだけは厳しく、ピリッとしたメリハリのある冬を感じることができます。

そんな伊那谷ですから、雪が舞った翌日には、ボクは生きものたちの動きを知るためにフィールドにでかけます。
わずかな積雪に動物たちの足跡がくっきり残されているから、彼らの動きを知ることができて楽しいのです。

新雪に残った足跡から、野生動物たちが気圧の変化を敏感に感じ取り、反応して活動していることが感じ取れます。
低気圧がやってきて、長い時間にわたって深々と雪が降りつづけるような夜には、動物たちは出歩きません。
しかし「どんなに雪が降っていても低気圧が過ぎてやがて雪が止む」といったような天候なら、動物たちは降り続く雪のなかでも出歩きます。
野生動物たちには気圧を知るセンサーが、どうやら備わっているようなのです。
こうした動物たちの習性を知っていると、雪の降り方を察知しながら、フィールド歩きのチャンスを見極めることができ、それが撮影のチャンスにもなるのです。


(Photo:この冬に行ったフィールド観察会の様子です。冬ならではの観察ポイントはたくさんあります。)

 


(Photo:シダの一種にうっすらと積もった雪。このくらいの積雪が、冬の里山観察にはちょうど良いのです。)

 


(Photo:水を飲みに来たシカの足跡です。前肢と後肢のヒヅメの特徴がはっきりと見えます。)

 


(Photo:雪の薄化粧はこれまで見えにくかった「けもの道」をいきなり教えてくれます。)

 

(Photo:ニホンザルの手形が雪の上にはっきりと残っていました。)

 


(Photo:これはノウサギの糞の跡です。脱糞直後は暖かいので、雪を溶かして沈んでいきます。)

 


(Photo:新雪の上に残るキツネの足跡です。あの人家にコンポスターがあって、食べ物を探しに行っていることがこれでよくわかります。)

 

(Photo:冬は、葉が落ちて見やすくなった樹木を観察するチャンスでもあります。シカが角を研いだ跡(左)、ミズキにクマ棚がありました(中)、ムササビが巣材を集めた跡(右)。)

 


(Photo:雪の上に野鳥の足跡が交錯していました。足型の大きいほうがツグミで小さなのがホオジロです。両者はどちらも足を交互に出して歩くので一本足跡となります。)

 


(Photo:ツルウメモドキの実をテンが食べている証明です)

 


(Photo:ツルウメモドキの真紅の実。こんなふうにきれいな色をしています。)

 


(Photo:リスの足跡はこのくらいの大きさです。観察にはメジャーを持参していくと分からないコトがあっても専門家に聞くときには便利です。)

 

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