宮崎学「森の動物日記」

森と里と野生動物たちから教わった自然のメッセージ 信州・駒ヶ根在住の動物写真家宮崎学のフォトエッセイです

野鳥のフンから見つめる自然環境

最近のボクは、生きものたちの「フン」ばかりを撮影しています。
それを言うと、けっこう笑う人が多いのです。
でもね、ボクは野鳥や動物たちがどのようなフンをしているのか気になって仕方がありません。

フンは、食べものにも関係しているし、どのように消化されているのかを見てみたいし、とくに植物の種子は、野鳥や動物たちに食べられて運ばれているからです。
これは、植物たちが生きる戦略として種子をわざと生物に食べさせているという事実もあります。
しかも、食べてもらってフンに出してもらうことで、初めて種子から芽が出てくるようになっている植物も少なくありません。
食道から胃へいって腸で吸収されるプロセスで、植物種子の殻が揉まれて発芽しやすくなるのです。

こうして考えてみると、山野に生える木々も含めて、あらゆる緑が「フン」が絡んでいるのではないのか、っと思えてしまいます。
そこまで考えてしまうと、ますます生きものたちのフンに興味がいってしまいます。
そこで、今回は野鳥のフンをお見せしたいと思います。

一口に野鳥の「フン」といっても、それを探すのはなかなか難しいものです。
偶然見つかったり、観察していて脱糞したところを見て大急ぎで現場まで行って撮影するというようなこともしてみました。
だから、よけいに糞(フン)に愛着がわいてしまうのです…。

野鳥は飛び立つ前にフンをして体重を軽くしてから飛び立つということもあるので、フンを発見することで、野鳥の巣やとまり木などを推測できるという楽しみもあります。


【カワセミ】とても美しい野鳥なので多くのファンがいますが、フンは意外にも知られていないと思います。
魚や水棲昆虫などを餌にしているため、フンにはリンが多く含まれており白いペンキのような色をしています。


【ムクドリ】里に多い野鳥ですが、雑食性で植物の種子から昆虫まで幅広く食べます。このため、季節によってフンはいろんな色になっていきます。これは、リンゴなどを食べたフンです。


【キジ】雑草などの種子や若芽などをよく食べます。このため、ニワトリのフンによく似ています。写真のフンは、メスのキジが卵を抱いているときにする「巣ごもりフン」といって非常に珍しいものです。抱卵中は数日間にわたって巣に伏せたままで脱糞にも出かけません。このため、数日分の便秘を溜めた特徴的なカタチをしたフンです。


【ヤマシギ】山野の湿地帯でミミズなどの土壌生物を餌にして生きています。このため、リンの多い水溶性のフンをします。このフンは湿地の水分の多いところでは6時間ほどで微生物に食べられて消えてしまうことがよくあります。
したがって、ヤマシギのフンは発見しにくくとてもレアでもあります。

【ソウシチョウ】中国原産の帰化野鳥です。ウグイスのフンが美肌をつくるといわれ化粧品にもなっているそうで、そのウグイスのフンの代用品としてソウシチョウが中国から日本にたくさん輸入され飼育されてきました。それが、篭脱けして野生化してしまい、いまでは東北から九州まで広く勢力を伸ばして日本の空にたくさん飛び交っています。


【スズメ】スズメのフンとはこんなカンジです。集団生活をしているため車の屋根などにたくさんフンをすることがあります。スズメは穀類をはじめ、雑草の種子や昆虫も食べるため粉状に消化されたものが内部に入っています。


【ハクセキレイ】市街地から高原の水辺まで広く分布しています。主に昆虫などを食べるので、フンはペンキのような水溶性の白い色をしています。水辺の石の上などを探せば、かなりよく目につきます。


【ツグミ】ツグミは冬鳥としてシベリア方面から日本へ越冬にきます。日本ではほぼ半年間を過ごしていきますが、主に果実を好んで食べます。土中のミミズや虫なども食べるため、フンは白くて内部には粉状の餡のようなものが含まれています。


【ヒヨドリ】市街地から山林まで広くたくさん普通に生息している野鳥です。木の実や昆虫類を食べていますが、冬はとくにカキとかリンゴなどを好みます。このため、季節によってヒヨドリのフンはいろいろな木の実の色をしています。


【フクロウ】フクロウはネズミが主食です。このため、ワシやタカと同じように白いペンキのような水分の多いフンをします。写真のように岩の上に落とされ雨が降らなかったりして条件がいいと3週間くらいも消えることはありません。肉食の野鳥の特徴的なフンといえます。

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