宮崎学「森の動物日記」

森と里と野生動物たちから教わった自然のメッセージ 信州・駒ヶ根在住の動物写真家宮崎学のフォトエッセイです

となりの塀は「けもの道」

中央アルプス山麓の高原地帯。
その森林のなかに、ボクの仕事場があります。
森林を別荘地のように開発したところなので、森や住宅地がモザイク状に広がっています。


(Photo:こんな森の中なので人より動物たちのほうが多いハズ。矢印が仕事場)

これらの別荘地は300坪単位の広さで利用権を売り出していますから、森の中とはいえ隣近所とは塀などに仕切られて人間の“ナワバリ”が決まっています。
人間なのでそこはルールを守って利用していますが、野生動物たちにはそんなこと関係がありません。自分たちが好きなように人のナワバリに侵入しています。
人と動物のそんな関係が面白くて、どのような動物がいるのか無人撮影ロボットカメラで調べてみることにしました。

ボクの敷地と隣り3軒はブロック塀や金網フェンスで仕切られています。
その塀の上はまさに獣にとっては「道」になっているハズなので、3軒が交差する塀に向けてカメラを設置してみました。
カメラはデジタル一眼レフにセンサーとストロボを組み合わせ、AC電源ですべてをカバーするようにしました。
こうすることで、電池交換の手間が省け電源管理ができるので数年間をメドに撮影が可能となります。
とにかく、塀の上を何かが歩いてくればセンサーがその動きを捉えてすべてを瞬時に撮影してしまう、という装置です。

こうして、撮影してみて驚きました。
まさか、こんなにも野生動物たちが自由に塀の上を歩き回っているとは知らなかったからです。


(Photo:大きなニホンザルがブロック塀のコーナーをショートカットで移動していました)

とにかく、写ること、写ること、といったらありません。
これは人間社会でいうところの「道路を監視する防犯カメラ」です。
街中の人の動きをみんな捉えてしまう防犯カメラですから、野生動物だって捉えないハズはありません。
自然保護とか獣害とか、近年は野生動物との軋轢も増えてきました。
しかし、それはほとんどが現場を目撃しないだけで、人の心のなかで自然界を勝手に想像した夢物語でしかありません。
ツキノワグマが、まさか夜間に人知れず仕事場に現れているなんて想像したこともありませんでした。
人が直接“目撃”したことだけが「目撃情報」としてカウントされている今日ですが、夜間行動の多い野生動物は目撃できないことのほうが圧倒的に多いのです。
そこをキチンと見届けるのが、野生動物の無人撮影ロボットカメラの威力だと思います。

いやはや、野生動物たちは私たちの知らないところでこんなにも活動していることは、ひとつの発見でした。モザイク場に敷地を区切っている「となりの塀」はまさに「けもの道」なのです。


(Photo:ハクビシンが子どもをつれてやってきました。後ろには隠れていますが子どもは2頭います)


(Photo:ムササビが塀の上を歩くとは新発見です。木から木へジャンプしているだけじゃないんですね)


(Photo:ツキノワグマもこんなところを歩いているとはビックリ。しかも、耳にタグをつけており一度捕獲され奥山に再放獣されたハズなのに「お仕置き放獣」とはいったい何でしょう)


(Photo:隣家のオジサンが草刈り中)


(Photo:リスも軽やかにお散歩中…。樹木の枝を渡り歩くより移動しやすいのでしょうか)


(Photo:子猫も散歩にやってきた)


(Photo:カケスがドングリを隠す場所を探しています)


(Photo:キツツキの仲間のアオゲラが、ブロック塀をなぜか散歩…)


(Photo:サルはなぜかドヤ顔のことが多いです)


(Photo:テンは顔が黒くなって夏毛に毛変りしようとしているところです)


(Photo:アカネズミは他の動物に比べたらこんなにも小さいということがわかります。天敵と同じ道を利用しています)


(Photo:貫禄充分な野良ネコが悠然と歩いてきました。ネコにとっても便利な道です)



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