宮崎学「森の動物日記」

森と里と野生動物たちから教わった自然のメッセージ 信州・駒ヶ根在住の動物写真家宮崎学のフォトエッセイです

火の鳥「アカショウビン」と3兄弟


(Photo:森のなかの「火の鳥」 アカショウビン)

「ヒョウロロロロロロ・・・・・
ヒョウロロロロロロ・・・・・」

中央アルプス山麓の駒ヶ根高原にある仕事場で、朝目覚めると、アカショウビンの涼しげな声が連続的に起きていました。
ここでアカショウビンの声を聞くのは、とても珍しいことです。
「へぇー ここにもアカショウビンが来ているのか」、とうれしくもなりました。
アカショウビンは、たぶん、渡ってきた直後で、目的地に向かう途中に立ち寄って鳴いているのかもしれません。
あるいは、このまま中央アルプスの森のどこかで子育てをするのかもしれません。


(Photo:ヤマアカガエルはアカショウビンの主食にもなっていた)

しかし、なかなかその姿を見つけることはできません。
「キョロロロロロ・・・」と小さく同じメロディーで鳴くのを何回か確認しましたが、
ある日偶然、森を一瞬に飛び抜ける真っ赤な「火」のようなアカショウビンの姿を目撃しました。

その後注意深くアカショウビンの姿を追っていくと、いつも必ず止まる枝のあることに気づきました。
こうなればあとは時間との勝負です。
ボクは、アカショウビンの止まる枝のそばに迷彩色のテントを張って、そのなかに隠れて静かに待つことにしました。
40分ほどテントで待ったでしょうか。アカショウビンがいきなりやってきて枝に止まる姿がカメラのファインダーのなかに飛び込んできました。

真っ赤な鳥、です。神々しい姿から、火の鳥と呼ばれています。
眼が、生きています。
嘴は蝋でできているみたいに妖しげな光りを放っています。
まるで、太古の恐竜時代の野生の不気味さをもっています。
やはり、アカショウビンはスゴイ存在感のある野鳥です。
思わず「やったぁー」と心のなかで叫んでしまいました。
アカショウビンは、まさに森の緑にとてもよく映えていて森の精に出会えたような感動がありました。

 
(Photo:これは、ヒグラシをくわているようだ)

 


(Photo:サンショウウオも、アカショウビンの貴重な餌)

 

アカショウビンの仲間で有名な3兄弟として、ほかにカワセミとヤマセミがいます。
アカショウビンが森林の「火の鳥」なら、ヤマセミは渓流のハンター。
そして、本家カワセミは水辺の宝石と呼ばれています。

こんなにすばらしいアカショウビンの姿に出会えたのですから、ボクはカワセミの仲間のすべてに会いたくなりました。
森は水をつくり水を蓄え、その水が渓流となって、やがて川へいき海へと注ぎます。
そんな水辺にいるヤマセミとカワセミを探してみたのです。

これら三種はそれなりに個性をもった美しさがあります。
アカショウビンは先ほど言いましたように、「火の鳥」です。
ヤマセミは、白と黒の絣模様でなかなかにシックな美しさがあります。
カワセミは、オレンジ色の胸にコバルトブルーの背をしていて、これまた文句のない輝く美しさを持っています。
どれも、まさに甲乙つけがたい魅力的な野鳥たちです。


(Photo:カワセミが水に映って、写真のタイトルは「一石二鳥」)

 

そのヤマセミもカワセミも、必ず止まる枝を見つけましたので、撮影ができました。
これらの撮影も、ブラインドテントの中から相手に気づかれないようにして待ちつづけていたら、向こうからレンズの前までやってきてくれました。
こうして、ボクはカワセミ三兄弟を写すことができました。
この三種は、カメラのファインダーを通して語っていると、自然界にはほんとうに「造化の神様」がいるとしか思えない美しさを感じました。
こういう美しい野鳥たちが自然界に生きていることのほうが不思議でなりません。そんな彼らに出会える自分も、つくづく幸せ者だなあ、と思ってしまいました。


(Photo:小魚を捕まえて得意顔のカワセミ)

 


(Photo:どんなに美しくてもカワセミだって捕食者にはただの餌なので、こうして食べられた跡もある)

 


(Photo:カワセミの生息環境)

 


(Photo:ヤマセミは、絣の浴衣のような模様をしている)

 


(Photo:ヤマセミの生息環境)

 


(Photo:アカショウビンの生息環境)

 

 

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コメント

  1. いつも楽しく拝見させていただいています。

    アカショウビン、私の住む山梨県北杜市にもいるとの情報(小淵沢近辺で)がありますが、未だお目にかかったことはありません(当然?鳴き声も)

    我が家の直ぐ側を流れる尾白川には時折ヤマセミが飛来してきます。
    決まって止まる木が川原の中にあり、「ヤマセミの立ち寄り木」と呼んでいます。
    立ち寄り木から20mほど離れた土手の上に車を停め窓を半開きにして待っていると、三日に一度くらいはやって来て30分程は止まって楽しませてくれていました。
    冬の時期の毎日のようにやって来ていましたが、昨年の台風や大雨で川原の様相が一変し、最近は現れる回数も激減したようです。

    別の川でカワセミも確認出来ましたが、最近は全くお目にかかれません。
    食べられたのかもしれませんね。

    これからも楽しく拝見させていただきたいと思っています。

  2. 山本 庸博 さま

    カワセミの仲間だけに限らず、自然に生きている生物の姿はみんな美しく健気でいいものですね。
    そんな生きる姿を少しでも知りたくてボクは日々自然に親しんでいます。
    これからも、いろんな自然界の機微を発信していきますので、どうぞよろしくお願い致します。

  3. なるほど3兄弟ですね。
    私は最近になってようやくカワセミを見ましたが、ヤマセミやアカショウビンは見たことがありません。うらやましいです。
    この3兄弟の中で、カワセミが一番小さいのでしょうか。

  4. 我が家の近くの住宅地に囲まれた池にはカワセミが毎日来ます。
    カワセミを撮りに来るカメラマンも毎日数人(笑)。
    海岸の小さな水路にいるカワセミもいます。
    街中ですがカワセミは確実に増えているような気がします。

    砂金堀に行く山北の川はヤマセミで有名らしく、迷彩テントで前の晩から粘るカメラマンたちが駐車で地元ともめているみたいです。
    カメラマンさんたちが張っているところより、何にもかまわない砂金掘りの前を白と黒のまだら模様はよく飛んでくれます。
    大きな鳥なので結構迫力があります。

    アカショウビン、見たことがありません。見てみたいです!
    (里山の宝石といわれるブッポウソウも一回でいいから見てみたい!)

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