宮崎学「森の動物日記」

森と里と野生動物たちから教わった自然のメッセージ 信州・駒ヶ根在住の動物写真家宮崎学のフォトエッセイです

スズメと女の子


(Photo:スズメもよくよく見れば可愛らしい表情をしています。そして、人間を実によく観察もしています)

学校帰りの小学校高学年の女の子が道路でスズメのヒナを拾いました。
そのヒナは傷ついていて、その少女は大切に育てました。
警戒心の強いスズメのヒナなのに、少女だけには心を許し、掌の上で横になって眠るほどになついていました。
少女もそんなスズメが可愛くて、スズメが死ぬまで面倒をみてやりたいと思うようになりました。

そうしたら、近所の自然保護の知識のあるオジサンが「スズメは野鳥だから法律で飼育してはならない。すぐに逃がしてあげなさい」と言ったそうです。
少女は悲しくて親に相談したら、親御さんが「どうすればいいのでしょうか…?」と、インターネットに載せてしまいました。
そうしたら、案の定ネットは賛否両論で炎上してしまいました。

日本の法律では、確かに野鳥を理由なく飼育することは認められていません。
それは、日本の野鳥たちを守るための法律なのですが、反面ではインコやクジャク、アライグマやキョン、タイワンリスなど外国の「野鳥」や「動物」「昆虫」の飼育は何の問題もなく許されています。
ボクは、このことに多いに疑問を感じています。
それは、外国の野鳥だけでなく亀や昆虫や魚などが野放し状態で日本に入ってきて、結果は野生に逃逐され「外来種」として日本の自然界にインパクトを与えているからです。
このような風潮を生みながら、特定外来種として今日では駆除することもできず社会問題化して大変困った状況に陥っています。

(Photo:ドバトやヒヨドリ、ユリカモメにまじってコンテストに出場中!?)

なので、ボクは、外国の野鳥などを飼育するより日本の野鳥を飼いつづけたほうが日本の自然環境を守り、理解することができる、と思っています。
スズメやメジロ、ヤマガラやシジュウカラなんて、ほんと全国どこにでもたくさん生息している野鳥なのだから、そのくらいの野鳥は飼育してもなんら日本の自然環境にマイナスにはなりません。
むしろ、飼育を通していろんな自然教育が身につきますから、インコやソウシチョウなどフィンチ類を飼うよりプラス面が大きいと思います。

ですから、少女の拾ったスズメは少女から取り上げてはいけない、とボクは思いました。
そういった子どもは、警戒心の強いスズメの心を解き放す特殊なオーラをもっているはずだから、そうした人間こそ将来には、自然と対話ができる大切な人になるからです。
たしかに巣立ったばかりの鳥のヒナが座り込んでいるところを、親にはぐれたと勘違いして拾ってきてしまう人はいると思います。
でも知らないでしたことに対して、「それは誘拐です」と諭す大人までいて、ボクはびっくりしました。
優しい心をもった少女からスズメをとりあげることは少女の心をも誘拐してしまうようだと、ボクは思いました。スズメなんて、ほんとどこにでもたくさんいます。

ボクの庭にも、毎日40羽ほどが遊びにきています。
チャボと犬の餌をアテにして彼らはやってきます。スズメはまさにイマドキの時代を人間社会と共に歩んでいるのです。
小さなスズメのそんな生命から、観察眼さえ磨けば教わることは大きいものです。


(Photo:東京では外人観光客から餌をもらう「手乗りスズメ」が出現してきた)

(Photo:雪のなかでも人家周辺で生活するスズメたち)


(Photo:稲を食べるスズメ)

(Photo:コシアカツバメの巣を乗っ取って自分たちの「巣」にしてしまったスズメ)

(Photo:昆虫類もスズメは好んで餌にする)


(Photo:トビの巣にちゃっかり「巣づくり」をしてしまったスズメ)

(Photo:ニワトリの羽毛を巣材に運ぼうとしています)


(Photo:沖縄県宮古島の街路樹で眠るスズメ。日本中どこにでも暮らしています)

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