宮崎学「森の動物日記」

森と里と野生動物たちから教わった自然のメッセージ 信州・駒ヶ根在住の動物写真家宮崎学のフォトエッセイです

自然界の悪しき実

日本の森には安全な樹木や植物ばかりではありません。
なかには、毒があってとても危険なものも少なくありません。
有名な植物にはトリカブトがありますが、まだ他にも有毒なものはたくさんあります。

なかでも、シキミという木がありますが、この木は樹皮から葉、実にいたるまで毒があります。
シキミとは「悪しき実」からきた名前で、実には多くの毒が含まれ人間が誤食すれば重篤な危険性があると言われています。


(Photo:シキミの実は猛毒なので、「悪しき実」からその名前がついたと言われています)

このシキミは、その臭いを野生動物も嫌うため西日本では墓地によく植えられていたり「仏花」として捧げられていることがよくあります。
これは、その昔の土葬時代にオオカミやツキノワグマが掘り起こして食害してきたことへの備えとして用いられて来たとされています。


(Photo:お墓の横に植えられたシキミの木。桜の巨木に挟まれるように育っていました)

そして、その時代から研究が進みシキミの葉や皮を乾燥させ粉末にして、「焼香」や「線香」になってイマに至っているのです。
こうして乾燥させたものを「抹香」ともいいますが、マッコウクジラの腸の一部にこれと同じような臭いのする部分があって「抹香鯨」という名前はここからきているのは事実のようです。


(Photo:平安時代から続く奈良の「室生寺」の仏像にもシキミが供えられていました)

この抹香ですがイマでは葬儀につきもののような考え方が定着していますが、使い方によってはツキノワグマ避けにもなるとボクは信じています。
そう思っていたからいままでは、ツキノワグマに出会いたくない場所では「蚊取り線香」を焚いて対策をとってきました。
山の急斜面で逃げ場のないような場所で6時間とか長時間座ったまま遠く離れた山並みを静かに見つめながら野生動物の観察をよくします。
そのようなときに、自分を中心に50mくらい離れた場所で風向きを計算しながら蚊取り線香をいくつか燃やしていくのです。
こうすることで、足音も立てずにひっそりとやってくるツキノワグマとの至近距離での出会いを防ぐために、蚊取り線香のニオイがまずは熊の鼻に届くから、熊は避けて通ると考えているからです。
このため、次回からはシキミで特製の焼香をつくって実験してみようと思っています。
たぶん、市販の蚊取り線香より効果があるのではないかとボクは信じます。


(Photo:ツキノワグマは日本の自然界ではスカベンジャーです。土葬の時代は、人間も食べていたと思われます)

熊対策には「鈴」や「笛」「ラジオ」というような音の出るものが効果的だというのが定番ですが、ボクは、近年のツキノワグマは音には非常に慣れている個体が多いので信じていません。
その昔から「山の神」のような女人禁制の信心が示す通り、オオカミやツキノワグマが人を襲ってきたのは加齢臭や生理臭、汗、頭髪の臭いなどに敏感に反応して事件を起こしてきたといえます。

やはり、シキミは平安時代以前から仏花として利用されてきた歴史がありますから、そこに気づかなければならないと思いました。
毒のある植物も、人類は長い時間軸のなかで経験則から「毒」を利用してきたのですから、やはりそこはイマでもボクは考えたいと思っています。

自然界の悪しき実たち(毒性があります)

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コメント

  1. 毒のある植物興味あるんです。そして、その生育場所も自分の行動範囲のなかでおさえてあります。犯罪に使うつもりはありませんが‥‥。

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