ロッジ社 キャンプダッチオーブン12インチとトライポッド&4種のアメリカン・クック・レシピ 後編
また少し、小雨がぱらつきはじめました。
雨具を着た森さんが、バーベキュー台と離れたところに焚き火台を設置し、
トライポッドを立て、12インチのキャンプダッチオーブンを吊り下げています。
トライポッドはいろりの自在鉤と同じ役目を果たす、火の道具。
焚き火で料理をする時、炎から鍋を遠ざけたり近づけたり、
チェーンの長さで火力を自由に調節できるすぐれもの。
焚き火料理の楽しさも2.5倍くらいは盛り上がるはず。
バーミーズ・シュリンプ
(4人分)
※本で紹介されているレシピはすべてアメリカの計量カップでの分量です。1カップ=240cc
- 食用油 …小さじ4
- 玉ねぎ …2カップ(うす切りに)
- エビ …900g(殻をむく)
- サワークリーム …2カップ
- 白ワイン …小さじ4
- しょう油 …小さじ2と1/2
- チリパウダー …小さじ3/4
- ショウガ …大さじ1(すりおろす)
- サフラン …小さじ1/2
1.白ワイン、しょう油、チリパウダー、ショウガ、サフランを
すべて小さなボウルなどに入れてよく混ぜておく。
2.火にかけてプレヒート(予熱)したキャンプダッチオーブンに油をひき、玉ねぎを入れ、
しんなりするまで炒めて一度とりだす。
3.とりだしたら、もう一度油をひき、エビを赤くなるまで焼く。
4.1の混ぜておいた調味料を注ぎ、ふたをして10分ほど中火にかける。
5.サワークリームと炒め玉ねぎを入れ、よく混ぜる。ライスとともに盛りつける。
こちらの「バーミース・シュリンプ」という料理名ですが、
バーミースとは現在のミャンマーのこと。
日本人にはなじみ深いしょう油、サワークリームのまろやかさ、
チリパウダーやショウガの辛味が海老にからんでおいしいソースになりました。
レシピ中、調味料を入れ、ふたをする時点で海老のぷりぷりの食感を残したいので火にかけすぎないこと。
10分より短くてもいいくらいです。
ごはんと共に・・の添え書きにしたがって、スパイシーライスといっしょに盛ると
ソースがぽろぽろした玄米の歯ざわりをおぎなって、しっとり食べやすくしてくれました。
クック・レシピにはこの他にもギリシャの肉料理“スブラキ”、
韓国の“プルコギ”など世界各国の代表的な料理名がたくさん並んで。
“スブラキ”は作家、沢木耕太郎さんが「深夜特急・5」の中で語っていた料理ではないか・・・と
なんとなくうれしくなりました。
アガサズ・キャロット・ケーキ
(4人分)
※本で紹介されているレシピはすべてアメリカの計量カップでの分量です。1カップ=240cc
- にんじん …2カップ(すりおろす)
- パイナップル缶 …小1缶(果肉は4つ切り、シロップも使う)
- 卵 …3個
- 食用油 …1カップ
- バニラエッセンス …少々
- くるみ …1カップ(きざむ)
- 薄力粉 …2カップ
- 上白糖 …1カップ
- 重曹 …小さじ2
- シナモン …小さじ2
- 塩 …小さじ1
- ベーキングパウダー …小さじ2
1.薄力粉、上白糖、重曹、シナモン、塩、ベーキングパウダーをボウルに入れ、よく混ぜる。
2.別のボウルで食用油、卵、バニラエッセンスをやさしく混ぜ、粉類のボウルに入れ、混ぜる。
さらに、くるみ、すりおろしたにんじん、パイナップルをシロップごと入れ、よく混ぜる。
(レーズンは前編のスパイシーライスで余ったもので、飛び入り参加です)
3.油を薄く塗ったキャンプダッチオーブンに種を流し、中火のオーブンで1時間ほど焼く。
キャンプタイプではない10インチのダッチオーブンで焼くことになったので、
ふたの上に炭を置くことができず、困りましたが、
ポールさんのアイデアでコンボクッカーのふたに炭を置き、上火にしました。
ケーキはやっぱり上下からの熱が必要ですので。
◆
レシピ名の“アガサ・・”とはもちろん人名です。
著者のJane Cooperさんはアメリカ各地の友人、知人、いろんな人からレシピを提供してもらったらしく
料理名に“グウェンズ・・” “シェリーズ・・”などなど人の名前がつけられているものも少なくありません。
どんな人が考えた料理なんだろう、と空想しながらレシピを読んでいくのも楽しみになりました。
雨もあがり、テーブルには次々と料理が並んでいきます。
「お昼にしましょうか?」
みんなそれぞれ自分用の食器持参。
スタッフの岩村さんは手作りの布製カトラリーケースです。
「う~ん、おいしいね!!」
テーブルの上を、友人の話、映画の話、様々な話題が飛びかい、だいぶ食事もすすんだころ、
「ケーキはどうなった?」
竹串をさして確認します。
「もうすこしかな」
弱火の状態でゆっくり火を通します。
そして柔らかいケーキ種が串に付かなくなり、
指で表面をそっと押すと押し返すような弾力を感じるようになりました。
そこで、ケーキを落ち着かせるために火から降ろして
しばらくのあいだダッチオーブンに入れたまま置いておきます。
西部開拓時代のカウボーイたちは牛追いの旅に出る時は必ずダッチオーブンをたずさえ、
焚き火で料理をしていました。
私たちは現代のカウボーイ、カウガールになって、森の中を馬で散策することにしました。
カウボーイ・カウガール
馬は繊細な心をもった生き物。
乗り手がきちんとコミュニケーションをとれないとどこへ進んだらいいのかわからず、
馬の好きなところへ行ってしまう危険もあります。
乗る前に、落ちたり怪我をしても不服を言いません、という「誓約書」にサインをしました。
小学生の娘は馬に乗るのも、まして一人で手綱をあやつるのも初めて。
「大丈夫かな・・・。」
20分ほど馬場で練習したあと、先導の方のうしろからホピ、ペイチェック、ナバホと
インディアンの部族名がつけられた馬に乗って牧場の外へ。
そこでいきなり、娘の馬が首をのばして道端の草をむしゃむしゃと食べ始めてしまいました。
「負けないで、手綱をひっぱって!!」
後ろから励ましても、馬の強い首の力にひっぱられ、いまにも落ちそう。どうしよう・・。
「それじゃ、逆から行きましょう。」
先導さんの機転で馬をUターンさせ、なんとか前に進み始めました。
アスファルトが砂利の山道に変わると、馬も慎重になり足運びがゆっくりしています。
さっきからの雨も青空になって初夏の林はさわやかな緑の匂いであふれています。
前をゆくポールさんが笑顔でこちらを向きました。
「みなさん、キャロットケーキのこと、考えてる?」
「さっきからケーキのことばっかりですよ、早く食べたいですね!」
そう、実はそろそろ、あっちこっちが痛くなってきた・・・。
見覚えのある牧場の看板が曲がり角のあたりに立っています。
すっかり、馬になれたメンバーが無事に牧場に戻ってきました。
そのまま、馬と記念撮影をしたり、あたたかい鼻先をなでたり。
◆
馬のりから帰ったみんながキャロットケーキの置いてあるテーブルに集まりました。
「ぼくは、にんじんが苦手で・・。」
とは松澤さん。あら、さっき、セロリも苦手って・・・?
とにもかくにも太陽のようなオレンジ色に焼きあがったキャロットケーキを、ざっくり切り分けます。
飛び入り参加のレーズンとパインがあちこちから顔をのぞかせて、
「おいしいよ!」
と言っているよう。
「さあ、味はどうですか?」
ケーキを口に入れたとたんに、みんな笑顔になりました。
「これ、おいしい!おかわりしたい。」
とにんじん嫌いだったはずの松澤さんもお気に入りのようです。
たちまち、ダッチオーブンの中は空っぽになってしまいました。
「キャロットケーキのにんじんが残ってるんだけど、お馬さんたちにおすそわけしたいね」
厩舎にむかって走っていく娘と、岩村さん。
気が付けばまぶしかった太陽も、おだやかな夕日にかわってきていました。
ダッチオーブンに始まり、ダッチオーブンに終わった一日でしたが、
これ一つでごはんを炊いたり、蒸し焼きにしたり、ケーキを焼いたり。
様々な料理の可能性を広げてくれる素敵なお鍋の魅力にみんながとりこになった特別な一日でした。
そして、きっかけを与えてくれた1冊、いえ、2冊の本に感謝。
料理を作る楽しさはいつの時代も変わらないという大事なことを教えてくれたのですから。