ムジナの正体
(写真:山の斜面の畑の周囲をぐりるとネットで囲んでいる)
伊那谷のある山村へでかけたときでした。
野菜畑で獣害防止のフェンスを張っているおじいさんがいたので、話しかけてみました。
『動物が出てきているようだけど、何がくるんですかぁ?』
おじいさん 『いやー ムジナがでてきてなぁー 悪さをするんだに』
『ムジナ? それはアナグマですか?』
おじいさん 『アナグマでない ムジナなぁー』
『じゃあ、タヌキですか?』
おじいさん 『いや、タヌキでない ムジナだ』
『それでは マミっていうやつですか?』
おじいさん 『いや、マミじゃなくて ムジナだに』
『じゃあ、ハチですね』
おじいさん 『いんね ムジナなぁー』
『・・・・・・・・・・・・・』
アナグマのことを地方では「マミ」ともいうし「マミダヌキ」というところもあります。
そして、タヌキのことを「ハチ」とも「ハチダヌキ」ともいって、アナグマとタヌキを区別していたりします。
それでいてこれらをムジナと総称しているところもあります。
だから、「ムジナ」といわれると、マミ(アナグマ)のことか、ハチ(タヌキ)のことかまずさぐりを入れるのですが・・・。
『おじいさん、じゃあそのムジナは背中に漢字の八の字模様がありますか?』
おじいさん 『それは、ハチダヌキであって、出てくるのはムジナだに!』
このおじいさんは、どうもタヌキのことを知っているようなのですが、ここまでくるとボクにはさっぱりその正体がつかめなくなってしまいました。
そこで、その「ムジナ」を見たくなり、一晩そっと見張ることにしてみました。
ちょうど月も12日目くらいで満月に近づいているので、夜間はとても明るそうです。
この月の光を利用して夜行性動物の観察ができますから、ボクは車を畑脇に停めてエンジンを切り、双眼鏡とカメラの用意をして待ち伏せてみることにしました。
夜の8時ころでしょうか、ちかくの林から二頭の動物が連れ立ってやってきました。
月の光に黒い影がくっきりと見えて、それが小刻みに踊りながらこちらに向かってきます。
その動きは、いつも見慣れているタヌキの動きそのものでした。
ボクにはそれがまちがいなくタヌキだと分かっていましたが、念のためカメラを向けてシャッターを切りました。
二つの影はストロボの強烈な閃光を浴びて立ち止まり、その直後にきびすを変えて、すっとんで逃げていきました。
しかし、ストロボで一瞬明るく照らされたその姿は、やはりまちがいなくタヌキでした。
そのあと、10分ほどして再び出現してきたので同じようにストロボを光らせましたが、今度は平気でした。
座り込んで体を掻くようなしぐさをしたので撮影してみたら、ぶんぶく茶釜のような得体のしれない姿・・・・。ジブリの平成狸合戦ぽんぽこそのものです。
タヌキもこのようにいろんな表情をするので、夜間にしっかり観察できない人には「ムジナ」になってしまうのでしょう。
ここは伊那谷の山村。
身近なところに動物がいても、実際には夜、人は出歩きませんから、しっかりと確かめることもせず噂や想像がいまでも先行してしまっているのでしょう。
ムジナという動物はいないので、タヌキもアナグマもハクビシンまでもが現代でも「ムジナ」になってしまっているのです。
ちょっと注意して待ち伏せして、ライトで照らしてみるだけで、動物を観察することはできるのです。
(写真:タヌキは夫婦愛が強く、いつも二頭で行動していることが多いものです。)
(写真:アナグマ。よくタヌキと間違われます。)
(写真:こんな姿を見てむかしの人は「化ける」と思ったのでしょう。ぶんぶく茶釜のようなタヌキ)
あはは、おじいさん、すてき過ぎ。
夜まで張り込むgakuさんもすごいです。
うちの近所のおじいさん達は蛾も蝶もひっくるめて、ちょうちょ。
サギのこともカラスと言います。
「白いカラスが来ていけすの魚食べてった?」とか。
最初はなんと珍しい、と思いましたが、珍しいのは言語のほうでした。
唐辛子のこともコショウって言うんですね。
唐辛子のことをコショウという地域は多いのでは?
>唐辛子のことをコショウという地域は多いのでは?
そうなんですか!
苗屋さんでおじいさんが「コショウはないのか?」と、いうのを聞いて、
black pepperとかの胡椒だと思って、洒落た店だなあと感心したことがあるんです。
柚子コショウ
島蛇さんへ
柚コショウのコショウは、唐辛子だったのですか?
てっきり柚とコショウだと思っていましたが、そういえば
ぴりっとした辛さは、辛子っぽいですね。
そういえば、
「しょっぱい」と「からい」は違いますよね。
なのに、しょっぱいのに、辛いというヒトもいます。
まるで、「ムジナ」と一緒だ、に。
私も、しょっぱいという言葉はほとんど使わず「塩辛い」と言います。単に辛いとも言います。ピリ辛にしても単に「辛い」と言いますね。