タヌキの掃除屋さん
(Photo:被災地の泥の上で、捜索隊の足跡をたどっていくタヌキの足跡)
(Photo:あくびをしているタヌキ)
タヌキは、北海道から九州までほぼ全国に広く棲んでいます。
日本特産種であって、ずっとずっと昔から日本の気候風土と共に過ごしてきた野生動物です。
そして人間とも深いかかわりをもって生きてきた動物ですから、漢字で書くとケモノ偏にさとと書いて「狸」となります。
この字が示すとおり、人間のそばで生活しているタヌキはとても多いのです。
タヌキはずっと昔から位置づけられてきた「自然界での役割」があります。
それは、スカベンジャーとして、自然界を掃除しながらなめらかに環境が営まれるようにするという役割です。
タヌキは雑食性で肉類から植物質までなんでも食べます。しかも肉類ではかなり腐敗の進んだところまで平気で食べて処理してしまう胃袋をもっています。
人間の食べ残した残飯を食べて掃除をしてくれるので、昔から日本人と互いに共存関係にあったから「狸」となったのでしょう。
ボクは3月11日の東北地震による津波で被害を受けた町や村にも、タヌキは多数出没しているのではないかと思いました。
そして今回被災地を取材し、実際に、津波被害にあった泥の上にタヌキの足跡をたくさん見つけました。
被災地の皆さんは、タヌキのことまで気が回らないかもしませんが、夜間になれば相当数のタヌキが被災地現場を徘徊してスカベンジャーをやっていたのです。
ソーセージや魚の加工品、人間の食材も水に浸かったとはいえたくさん流れています。
これらは、人間にとっては「ゴミ」ですが、そこに暮らす野生のタヌキたちにとっては大変なご馳走です。
だから、タヌキはそこいらじゅうを歩きまわってグルメをしていたのです。
そして地震津波の被災地だけでなく、原発事故で立入禁止区域になって取り残された家畜などが死ねば、こちらもタヌキたちの宴となっているでしょう。
自然界のシビアな一面を目の当たりにしていろいろ考えさせられました。
私たちは野生動物をただ「可愛い」とか「きれい」なだけで見てしまってはいけないと思います。
生き物にはみな自然の役割があって、そのルールにそった生き方をしているのが野生動物たちの本来の姿だからです。
普段人間が整備した町に住んでいると気がつかないかもしれませんが、昔から自然界を掃除してきてくれた動物がいること・・。
それで人間はずっと助けられてきた歴史があるのです。
牛や豚の死骸を食べてクリーニングしてくれる生物がいなかったら、その死骸から発生してくる病原菌などによって健康な人間たちも生命を脅かされることになるからです。
そうならないためにも、タヌキのような生物を自然界がプログラムしていることはすばらしいことだと思います。
そんなタヌキの存在を確かな視線で見てあげたいものです。
(Photo:泥の上にくっきりとついたタヌキの足跡)
(Photo:水位に沿って歩いたらしく、何回かにわたって水辺を歩くタヌキの足跡)
(Photo:遠景はすべてガレキ地帯。この奥まで足跡は向かっていた。)
(Photo:この流木の下は「「けもの道」になっていた)
(Photo:大津波の威力はすざまじく、すべてのものを飲み込んでいた)
(Photo:まだ冬毛のままのタヌキ)
里に下りてきたけものたちが、良い福音を持ってくる。この考え方に、温かいものを感じました。
たぬきさんこれからも頑張ってください。
檻に入ったら、山に返すからね~。
被災地の写真をいろいろみましたが、こんな写真は初めてだったのでびっくり。
野生動物はたくましいですね。
■uzi さん
こうやって、日本の野生動物と日本人は縄文時代からずっとこんな関係できてたと思います。
その意味でも、改めて人間の存在を知ることで自然も理解できるのではないでしょうか、と思っています。
■春希 さん
時間があれば、このような足跡をどこまでもたどってみたかったです。
そして、自動撮影カメラで追えばかなり新しい発見もできると思いました。
こんばんは、先生。
被災地へ取材に行かれたんですね。
テレビのニュースでしか私は見ていませんが、現地の動物たちが心配です。
掃除屋のタヌキたち
彼らは、被爆していないんでしょうか? 被災地のものを食べても平気なんですか?
安楽死処分の動物たちに謝りたい気持ちでいっぱいです。
Meiko さん
地震や津波からは、人間は必ず立ち直れます。
しかし、原発はまったく答えもでません。
野生動物も含め現代人がこれからいろんな角度から観察を続けていかなければならないと思いました。
マスコミ報道より、やはり現地を見るのが「百聞は一見にしかず」でいちばんいいと思います。
そして、そこでしっかり考えることがいいのです。