宮崎学「森の動物日記」

森と里と野生動物たちから教わった自然のメッセージ 信州・駒ヶ根在住の動物写真家宮崎学のフォトエッセイです

困ったサル軍団…だけど


(Photo:森の「けもの道」を移動してきた親子ザル)

 
ボクは、中央アルプス山麓の森に囲まれた高原に仕事場を設けています。
そこはツキノワグマやサル、イノシシたち野生動物の生息エリアそのものなのです。
ですから、動物たちがいるのが当たり前で、ボクのほうが「おじゃまします」といって生活しなければならないところでもあります。

 

 
(Photo:人家の庭や屋根でたむろするサル軍団)

 
部屋のなかで仕事をしていると、ときにはなんの前触れもなく「ドスンッ」と大きな音が屋根でします。
それはそれは大きな音なので驚きますが、これはサルが立ち木から屋根に飛び降りたときの音なのです。
体重が10kgも20kgもあるようなサルが、樹上から飛び降りるのですから、音も大きいのです。
そのあと、トタン屋根をのっしのっしと歩く音がして、再び静かになります。
サルは屋根をバイパスのようにつかって、また隣の木に飛び移っていくのです。

 


(Photo:仕事場の屋根からの電線を渡ろうとするサル)

 
(Photo:電線をサーカスする若いサル)

 
こうして屋根から別の樹木に移っっていくのはまだ可愛いもので、なかには電線を綱渡りしていくサーカスザルもいます。
サーカスザルは身軽な若いサルたちなのですが、これが5匹、6匹と一緒になってサーカスされてはたまりません。
全員の体重がかさなって電線が切れそうになり、たるんでしまったこともあります。
ボクは、そのつど電線にアンカーをとって直しているのですが、ちょっと油断しているとまた切れそうになっていることがよくあります。
これには閉口しますが、野生のサル軍団にはなすすべもありません。

 

そこで、大きな音が屋根ですると、ボクは窓を開けて「こらぁーー」っと、叫びます。
すると、サルたちは蜘蛛の子を散らすみたいに逃げていきます。
ボクが、サルたちの生息エリアに仕事場を設けた事の方が、本来はいけないのですがやはりここは野生動物と人間との距離をきちんと示しておかなければお互いによろしくない、と思うからです。

そうしていると、サルのほうでも学習しているらしく、ふだん騒いでいるサルの子どもたちも、ボクの仕事場の近くにくるときには群れ全体がまったくの「無言」で通り過ぎていくのですから、その賢さにも脱帽です。

 

それでもボクが留守をしていると、やはりサル軍団は傍若無人に振る舞っているらしいのです。
電線は垂れ下がっているし、ベランダに置いておいた青ネギを食い散らかした跡があります。
ネギを食べるなんて、サルしかいないので、これは留守中にもやってきていることの確かな証拠となります。

 

そこで、ボクもひとつ考えました。

仕事場の車庫のあたりもサルたちの移動経路にはいっているようなので、ここに無人撮影ロボットカメラを仕掛けておきました。
サルだけでなく、どんな動物たちが歩くかも興味があったからです。
こうして、ロボットカメラを半年くらい設置してみると。

 
(Photo:車庫のバイクを品定め中)

なんと、ボクのバイクを品定めしているサルがいたのです。

ナンバーでも確認しているのでしょうか。
そのしぐさは、やっぱり知恵のある人間そっくりです。
まさか、バイク盗と組んでいることはないと思いますが、こんな行動を無人カメラが捉えているとなるとサルの賢さには感心してしまいます。
外へ変なものは置けないなぁーと思うことしきりです。

仕事場の二階の窓なんてこれまで鍵をかけたことがなかったので、これ以来しっかり施錠もするようになりました。

 

実際のところは「困ったサル軍団」だけど、やはりここはあとからやってきた人間ですから、少し遠慮して生活しなければなりません。
しかし、遠慮もほどほどに、毅然とするところはしっかりやるのが野生動物たちとの付き合い法だと思っています。
お互いに、あまりにも傍若無人になりすぎてもいけないのが自然界のルールだから、です。


(Photo:高速道路周辺にも軍団でたむろする現代サルたち)


(Photo:道路で寝そべってる姿は、かなり横着だ)


(Photo:秋の雄ザルは、目も覚めるような婚姻色が印象的)


(Photo:クリを拾って頬張る若いサル)


(Photo:雪の上の足跡は、一瞬人間の子どものものではないかと思ってしまう)


(Photo:交通事故も増え、最近このような標識も増えてきた)


(Photo:農家にとっても困ったサル軍団…だ)

 



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