宮崎学「森の動物日記」

森と里と野生動物たちから教わった自然のメッセージ 信州・駒ヶ根在住の動物写真家宮崎学のフォトエッセイです

ムササビの眠る森


(Photo:樹幹を登るムササビがこちらをじっと見ていました)

本州から四国、九州の山野には、ムササビという動物が棲んでいます。
リスの仲間で、大きさはネコくらい。
前肢と後肢の間に皮膜があり、これを座布団のように拡げて森を滑空することもできます。
夜行性で、昼間は樹洞などに寝ているためにほとんど目にする機会がありません。
このため、神社や寺の境内、里山にもムササビは生息しているのに、その存在にほとんど気づいていないのが普通です。

ボクは、そんなムササビの存在が好きでたまりません。
どこにでも生息しているのに、それに気づいていない人間にある意味興味があるのかも知れません。
あまりにも身近にムササビがいるのに、ほとんどの人が気がつかないということは、みんなが身近な自然にまったく無関心な証拠だからです。


(Photo:このようにムササビは夜の森を活発に動き回っています)

そんなムササビをもっと知ってみようと、ボクは仕事場の庭にある樹木に巣箱を仕掛けてみました。
巣箱には、内部が観察できるように赤外線のCCDカメラを埋め込み、映像ケーブルを部屋までつないできていつでもモニターできるようにしました。
赤外線カメラなのでムササビには光も見えませんから、安心して普段どおりの生活をしてくれるのでムササビを脅かすことはありません。
とにかく、こうして夜行性のムササビが昼間はどんな生活をしているのかを見てみたかったのです。


(Photo:庭に仕掛けた巣箱)

仕掛けた巣箱には、ムササビがすぐに入ってくれました。
そして、昼間はぐっすり眠っていて、夕方になると巣の外へ出勤していったのです。
このようなムササビの毎日をほぼ10年にわたって観察してみました。


(Photo:ボクが廊下を歩くと、このように巣箱からすぐに顔を出してくる)

そこで、気づいたことは、ムササビは思いのほかたくさん生息しているということでした。
とにかく、100メートル置きに一頭いるのではないかと思えるくらいに、数が多かったのです。
こんなにも数が多い動物なのに、やはり人々はなかなかその姿を観察することはできません。
ムササビが夜行性なので、私たち人間の目で観察するのには限界があるからです。
でも、巣箱だけでなく、ボクは森の樹木の空間にも無人撮影ロボットカメラを何カ所かに設置して、ムササビが樹間を滑空したりして活動するところも狙ってきました。
すると、やはり、無人カメラにはムササビが思いのほか活動的に撮影されることが多かったのです。

こうして、夜行性でまったく見ることのできないムササビの活動を無人撮影しながらそのときの時間や行動パターンを分析して、見えない夜の世界を想像していくのです。
撮影された現実を点と線でつないでいくと、ムササビの生活がかなり実感として想像できるようになりました。

黙して語らない自然の姿を少しずつ「語らせる」ことに、ボクはとても楽しみを覚えます。
あなたも森で木を観察して、大きめの穴を見かけたら、ムササビが眠っているかもしれないと思って見てみてください。


(Photo:樹洞でこんな寝相で寝ているとは思わなかった)


(Photo:昼間、巣穴から顔を出した若いムササビ。眠くて眠くてよだれがたれてしまいました)


(Photo:滑空してきたムササビをロボットカメラがキャッチ!)


(Photoム:ササビの糞はこんな形をしています。)


(Photo:注意してみると森の中にムササビの巣を見つけることができます)


(Photo:巣穴から顔を出してこちらを見ています)


(Photo:ムササビは樹洞以外にも、このように枝先に巣をつくることもあります)

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コメント

  1. こんにちわ。初めてコメントさせて頂きます。

    眠くてよだれが出てしまったムササビちゃんのあまりの可愛さに、顔のニヤケが止まりません。
    昨年、宇都宮市郊外にある山林の中を歩いている時、頭上に『座布団』が!
    あまりの大きさに思わず頭を手で覆ってしまいましたが、滑空していく先を見ると尻尾が付いており、ムササビだったんだと気がつきました。初めて見る姿と大きさに感動!そしてビックリでした。
    見たのは昼間だったので、貴重な経験だったんですね。

  2. こんにちわ、初めてコメントさせて頂きます。むささびカワイイですね。
    我が家では3月中旬に1回、4月中旬に2回、むささびが天井裏に侵入しました。3回とも同じむささび君(雌雄は確認しませんでしたが)のようで、侵入の都度出口を探してドタドタと天井裏を走り回り、点検口を開けると部屋に降りて人の肩に平気で乗るなど、なぜか人馴れしているのでした。
     当初はペットとして飼われていたフェレットではないかと思っていましたが娘がネットで調べた結果むささびと判明し、家族一同大感激です。
     足尾山塊の末端に位置する我が家のあたりは鹿も出没するので、むささびがいても不思議ではないのでしょうが、夜行性なので人目につく事が稀なのかもしれません。
     天井裏に侵入されるのも困るので5月連休に2個の巣箱を近くに山かけて様子をみます(まだ入る気配は有りませんが)
     入ったら報告します。

  3. ■栃木のむささび さん

    昼間のムササビ座布団を見られてよかったですね。
    ボクの巣箱にも、朝いなかったのが昼頃には入っていたりすることありますから、昼間でもときどき活動するのもいるみたいです。
    昼間見たあたりを夕方観察すれば夜間滑空も目撃できるかも、そして鳴き声も聞かれますよ。

    ■ぐんまのむささび さん

    人慣れムササビも不思議ですね!
    家に入ってくるくらいなので、周囲にはかなりのムササビが生息していると思います。
    夕方や夜間には、ムササビの声も聞かれると思いますよ。
    巣箱にも、必ず入ることでしょう。
    報告お待ちしています。

  4. 4月25日に 「山の木を切り倒したら ムササビの赤ちゃんが落ちていた」
    とのことで、保護されてきたのを見ました。 
    まだ目の開いていない乳飲み子でした
    犬用のミルクを哺乳瓶で飲ませていただいて 順調に育っているのが
    信濃毎日新聞に出ていました。
    1本の木には いろんな生き物が住んでいたり 利用したりしていることがあるので
    伐採するときは よく観察してから 行っていただきたいものだと思いました
    ムササビなどが 営巣できるような太い幹の木の茂る森林が
    大切にされていくことを願います

  5. 昨日山間部にある廃校になった小学校に行く機会がありました。こんな山奥によくも小学校があったものだと話をしていたら、私の頭すれすれをムササビが滑空していきすぐ近くの木とまりました。2,3m程木を登りそのままじっとして動きませんでした。
    どうも小学校の板壁に沢山穴が開いていたので、そこを巣にしているようでした。我々が大きな声で話をしていたものだから、びっくりしたのではと思っています。
    ムササビの飛翔を実物で見るなんて、これが最初で最後でしょう。

  6. ■c,s さん
    目の開かないムササビの子供を拾って飼育された方を知っていますが。
    ほんとうに人間にもよく慣れてネコ以上になっていたのには驚きました。
    ムササビは、よく観察すれば予想以上にたくさん生息していますので、日本の森のことを知ってもらうには多くの人たちにいろんな意味で関心をもってもらいたいと思っています。

    ■めだか さん
    いい出会いをされましたね。
    その廃校に車を停めて夜間の月夜の晩に車のなかから静かにムササビ観察をされるといろんな発見があると思います。
    鳴き声も聞かれますし、複数個体のムササビの滑空も見られると思います。
    そのように、自然に対して興味を抱いていくと楽しいことだらけとなりますからぜひやってみてください。

  7. 写真がすごいですね!感動しました。
    私もムササビが好きで好きでたまりません。
    毎夜イヌの散歩の時会うのが楽しみです。頭の上を飛んで行ったりしてお茶目な奴です。しかし毎年鳴き声が減っている。オオカミやコウノトリやトキのようにそのうち絶滅してしまうのではと心配です。

    陸の孤島(?)だった裏山が公園に整備され、ムササビがいるというのですごいサーチライトを持った人が来るようになり鳴き声がすれば照らしています。
    目がくらんで木に激突してしまうのではと心配です。
    夜行性、ということは人間より眩しさに弱いのですよね?

  8.  巣箱にムササビが入りました。
    6月2日朝に、先月設置した巣箱からムササビが顔を出しているのを発見しました。
    おっしゃる通り短期間で入りました=ムササビも住宅難?

    近くのラジオ体操の音が気になって顔を出したようで、その様子がとてもカワイイです。
    若い固体のようですのでこれからこのあたりを縄張りにしようとしているのかもしれません。静かに見守りろうと思います。
    (高性能のデジカメが欲しくなってきました・・・)

  9. ■寝小屋のムササビ さん
    >夜行性、ということは人間より眩しさに弱いのですよね?
    強烈なサーチライトで照らし続けることは、あまりおすすめできませんね。
    どこかへ、引っ越してしまう可能性があります。
    が、しかし、ムササビはしっかり観察するとほんとうにたくさんいます。
    その公園は、車からのアプローチも楽なのでしょうか?
    そういうところのムササビは、人間に見つかってしまうと不幸です。

    ■ぐんまのむささび さん
    巣箱に入ったそうで、よかったですね!
    ボクのライブカメラでもわかるように、ムササビは毎日同じ巣穴を使わず、いくつかの巣穴を転々と移動して使い分けているようです。
    また、これからの時期は、巣内部にアリや虫がたくさん発生しますから、巣箱に帰ってこないことのほうが多いですので、そのような生態もあることを念頭において観察してみてください。

  10. はじめまして。岩手県のハム太郎です。うちにもムササビがいます。5月1日に体重320グラムのハム太郎を畑でみつけ、ミルクをあげて育てました。今はもう大きくなり体長75センチになりました。今では庭の巣箱に住み、夜は森へ散歩にでかけます。名前を呼ぶと木から座布団のように落ちてきたり、鳴き声をまねすると森の奥から返事がきます。山へ返す日がだんだん近づいていると思うとさみしいです。 もう息子のような存在で、ついつい朝方になると無事を確認しにいきます。するとなかなか離れなくなり、結局ふとんで一緒に寝てしまいます。ベッドでは人間のように仰向けで眠り、腹には布団がかかっています。こんなにかわいいハム太郎が心配でたまりません。今のこの時間を大切にしたいと思います。

  11. はじめまして。愛媛県に住んでいます。ムササビの写真がとてもカワイイですね。私は市営住宅の5階に住んでいますがまわりにはどんぐりの実を付ける樹木や桜の木が多くありそのせいか最近毎夜ベランダにムササビがやって来ます。大体同じ位の時間に同じ経路を通ってお隣のベランダに消えていきます。この前ベランダに置いているドングリから育てた植木の葉を食べられてしまいました。今日はミニバラの葉がなくなっていて、バラの葉も食べるのかと少し驚きました。でもかわいいのでゆるします♡子供がムサシと名前を付けてやって来るのを楽しみにしていますが朝、早かったり夜、遅い時間だったりであまり会えません。写真を撮ってみたいのですがフラッシュに驚いて来なくなると悲しいのでやめました。

  12. ■ムササビのハム太郎さん
    返信が遅れて申し訳ありませんでした。
    なかなかに、いい体験をされていますね。野鳥や野生動物たちは、思いのほか人間観察をして生活しているものですから、ムササビも助けてくれた恩をわすれないのだと思います。
    ムササビとのこうした出会いも何かの縁ですから、どうぞこれからもしっかりムササビを観察しながらいい時間を過ごしてください。
    そして、その後の報告もできましたらお聞きしたいものですね!

    ■ムサシさん
    いいところにお住まいですね!
    そちらでは、ムササビのことを「モマ」とも呼ぶようですが、ベランダにやってくるとはすばらしいことです。
    ムササビの生態はまだまだ分かってないことだらけですので、ベランダにいろんな植物、ピーナッツ、クルミ…など年間を通して置きながら、「嗜好」テストも同時にされていくといろんな発見があると思います。
    ぜひそんな発見をされて、またご報告をいただけるとうれしい、です。

  13. はじめまして。宮崎県に住んでいます。
    昨日 ちょっと「むささび」という言葉に出会い、早速検索しましたら、こちらへ辿りつきました。もともと北海道出身なのでムササビ・・いや、宮崎県に来てもムササビがいるとは知りませんでした。
    テレビなどでは見たことがありますが。
    現在 霧島連山のふもとに住んでいるのですが、いるかなあ。
     見ることはまず無理だと思いますが、「いるかもしれない!」と思うと、わくわくします!

     
     かわいいですね。
     

  14. ツリーハウスにむささびが巣を作っていました。
    このまま住み着いてくれるにはどうすればよいか 思案しています。

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