イノシシは熊のニセモノだった?
今年も春夏秋冬がどんどん過ぎていき、さいごの季節の初冬となりました。
狩猟シーズンにも突入したので、山歩きにも注意しなければなりません。
愛犬の柴犬と一緒に山歩きをするので、夏の間にしまいこんであった派手な赤い生地の衣類を出しました。
こんなに目立つ服装でほんとうはフィールドを歩きたくないのですが、鉄砲弾には当たりたくないからです。
(photo:初冬の伊那谷風景)
(photo:わが家の柴犬も、狩猟シーズンは赤くなる)
(photo:主人と一緒に、目立つペアルック)
狩猟といえば、この季節の野生動物は冬越し用の脂がのっているので肉がおいしくなります。
最近では、鶏や豚、牛肉などの家畜をふんだんに食べられるようになったので、野生動物の「山肉」を食べるなんて野蛮なことのように思われがちです。
ところが、つい最近までの私たちには、野生動物の肉は貴重な蛋白源でもありました。
動物たんぱくの生産地といえば「自然の山野」であって、ハンターも多くいました。
このため、日本の自然のことを知る意味でもボクは狩猟にはまったく反対するつもりはありません。むしろ、狩猟から自然のなりたちや動物たちの習性を知ることができるから、勉学のためにも狩猟には非常に興味があります。
これまでの日本で、「猟師の究極の獲物」は熊だったと思います。
日本の陸上野生動物としては最大最強のツキノワグマやヒグマですから、ハンターにとってもあこがれと征服観があったにちがいありません。
しかも、昔は熊がとてもいい値段で取引されたから、自然からの思いがけないご褒美ともなって受け入れられていました。
マタギ小説の「邂逅の森」では、腕のいいマタギなら熊だけで御殿が建ったという時代もあったようです。
そのくらい、熊はいろんな意味での需要があったからです。
熊といえば、最高にお金になったのが「ゆうたん=熊胆」でした。
いわゆる熊の「胆のう」のことです。
熊の胆のうは、昔から万能薬として最高級なあつかいをうけてきており、熊胆1グラムが金と同等の価値があるとされてきました。このため、熊胆は江戸時代から幕府の認定した富山の薬売りしか売買ができませんでした。
今日でも厚生省が熊胆の売買を管轄しているので、熊の胆をむやみやたらに売ったり買ったりすることは「薬事法」に触れることになるそうです。
昔から薬売りの仲買人が、全国に繰り出していたわけだけど、熊の胆のニセモノがとうぜんあったということです。
それは、イノシシだったりカモシカだったり、サルだったりしたのですが、昔は山肉のことをすべて「シシ=宍」と称していました。
なので、熊の胆(くまのい)とニセモノの胆(い)を区別するために、仲買人が買う段階で「シシの胆(い)」と言ってしまうと、まわりにいる人にニセモノがバレてしまうので反対に読んで「胆のシシ=イノシシ」と言っていたそうな。
このニセモノ売買のときに、イノシシの胆が圧倒的に多かったので、のちに「猪」がイノシシという名前になったと言われています。
本物の熊胆とニセモノのイノシシ胆でも、薬効の差はどうだったのか分かりませんが、苦さの点では区別がつかなかったのかもしれません。
いま日本の山中に生息しているイノシシには、こうして名前がついたのです。
(photo:高い山でドングリをたべて肉をつけるイノシシ)
(photo:美味しそうに肥え太ったイノシシ)
また、イノシシ肉を「ボタン」と呼びますが、江戸時代は獣の肉をおおっぴらに食べることができなかったので、「ボタン」という花にひっかけて食べていたそうです。
ちなみに、ニホンジカを「モミジ」と呼んでいました。
また、オオカミやキツネ、タヌキ、サル、ノウサギ、リス、カワウソなども江戸時代には食べていたようです。
こうしてみると、現代人はトリ、ブタ、ウシなどの家畜ばかりを食べていますが、昔はもっと野趣に富んだ多彩なグルメをしていたのだと思います。
それがいいとか、悪いとかいうのではありませんが、あらゆる生物が冬を前にして肉質がよくなる理由などを考えながら、日本の季節を知ることも大切なことかもしれません。
肉を食べるだけでなく、薬としてでてきたイノシシの名前の由来が分かるだけでも面白いではないですか。
そのイノシシが、いまはたくさん増えてきております。
胆もふくめて、いろんな利用方法を考えてみてもいいのかもしれません。
(photo:雪山に小型のイノシシがいたけれど、胆はどんな大きさなのだろうか)
(photo:干したイノシシの胆)
(photo:ボタン肉)
(photo:本家「くまのい」を持っているのは、ツキノワグマ。身体の大きさだけでは、胆の大きさは分からないものらしい)
日曜日に中川村の猟友会に同行してきた娘が鹿肉5キロいただいてきました。
その日は「イノシシとれるぞ?」っと言う予定だったのに、
とれたのは鹿でした。ほんとはイノシシのほうがうれしかったけど。
私は東京に生まれ育ち、目に入るものはたくさんの建物ばかり。
でしたので、美しい山河がいつも見えて、そこに出て来るキノコや、
走り回っているけものを食べることができる。
ということが、すばらしい奇跡のように思えるのです。
でも、近所の奥さん達のほとんどは、勤めに出て稼いだお金で食品を買う。
ということに重きを置いているので、もったいないなあ、と思います。
胆はなにに効くのでしょうか。
それほど高価なものなら、薬効もかなりのものなのでしょうかね。
>近所の奥さん達のほとんどは、勤めに出て稼いだお金で食品を買う。
田舎の土地がどっさり余っているのに、もったいないことですね。
ウチも、ちょっとの土地で、たくさんの野菜ができるからありがたいです。
>胆はなにに効くのでしょうか。
腹痛とか胃炎などに…
こんばんは。師走になりましたね。
宮崎先生の相棒は黒柴くんなんですね、カワイイ!!
私の相棒は、三毛猫と黒白猫とミドリガメです(笑
富山の薬売りの話が出てましたが、私の実家は富山です。
熊の胆はとても高価な薬で、子供の頃、父が知人から手に入れてきて
ナイフで削って飲ませてくれたのを覚えています。
熊は、富山ではとても身近な生き物ですね。
なんだかすごい山奥で育ったようですが、い?え、普通に町中で育ったんですよ。
それでも、熊は常に話題に上る動物でした。
先日、熊の油を頂きました。火傷の痛みをとるのに効くそうです。
早速塗ってみると、ちょっと生臭かったけど、火傷のヒリヒリがなくなりました。
うちの村では、猟師の家の孫は捕れたての熊の生の目玉が好物だとか、冬眠中の熊を起こして撃ったとか、すごい武勇伝をたくさん聞きますが、最近は野生動物に押されぎみです。
私は野生動物のお肉、おいしいから大好きですけどね、日本の几帳面な法律に阻まれて、なかなか販売できないようです。その他の山の物も、以前は仲買人が買いに来ていたけれども、それがなくなって困っているみたいです。
長野は雪でしょうか?
今年も、あとわずかとなりました。
メリークリスマス&よいお年をお迎えください、先生。
Meiko さん
富山でしたか?
熊の胆は、苦いけれど、なんだかとっても効きそうでうれしくなるような「苦さ」がいいですね。
やはり、いまでも高価なものです。
とも! さん
熊の脂は、冷蔵庫保存ですね?
あれは、常温だと水のように溶けてしまいます。
でも、よく効くらしいですが、ボクはまだつかったことありません。
一般に、野生動物の「脂」はトゲを抜いてくれたり、いろんな用途があるそうです。
>山の物も、以前は仲買人が買いに来ていたけれども、それがなくなって困っているみたいです。
野生動物は、やはり「ジビエ」として近隣で消費していくのがいちばんいいのでしょうが、現代人は鶏とか豚、牛の肉に慣れてしまったからクセのある野生の肉はかなり敬遠されますね。
しかし、なんとかせんといかん、です。
gaku さま
私が頂いた熊油は、脂身をフライパンでゆーっくり温めて搾り出したものです。
冷蔵庫保存すると何年でも持つらしいです。
効能は、やけど、あかぎれなどです。
鹿も昔は皮や角付き頭蓋骨なんかも高く売れたらしいですね。
今はそういうものを細工する人もいなくなってしまって、本当に使い道がない状態です。
野生の肉を食べるにも、調理の技術がないからおいしく食べられない、ということもあります。一頭ずつ硬さとか匂いとか違うし。
こんにちは!
熊の胆について調べていたらこちらのWEBサイトにたどりつきました。
僕はまたぎのじっ様と仲良くなり。
熊の胆を撮る機会と偶然めぐりあわせたので、撮らせていただきました。
実物を手に取り観察していましたが、無臭でつやつやしていて、臓器と繋がっていたであろう器官が干しあがっていました。
いろんなつくり方があるみたいですが
僕が撮影したのは乾燥させた状態から重しをして平べったくのばしているものでした。
それから、熊の肉や脂もいただきました。脂は生が美味しかったです。
またぎの方々、その後の(熊の胆)扱いに興味がある今日この頃です。
では、また覗かせていただきます~(動物写真に興味がありますので)