宮崎学「森の動物日記」

森と里と野生動物たちから教わった自然のメッセージ 信州・駒ヶ根在住の動物写真家宮崎学のフォトエッセイです

在日ハクビシンは快進撃中

 
(Photo:柿の木に登っているハクビシン)


(Photo:リンゴを盗みにきたハクビシン)

 リンゴジュースにしかならない規格外のリンゴを農家からたくさんいただきました。家に着いたのが夜だったので、荷物のリンゴはコンテナごと車庫に置いておきました。
朝起きてみると、なにやらリンゴが誰かに齧られた跡があります。こんなことをするのは、テンかハクビシンしかいません。
正体を確かめようと、さっそくコンテナに向けて自動撮影ロボットカメラを設置してみました。翌日になって、カメラを確認してみると、2枚だけシャッターが切れて、ハクビシンの姿が写っていました。

やっぱり、ハクビシンがリンゴを盗みにきていたのです。それも、リンゴを置いたその晩から来たのですから、なかなかに不敵なやつです。
こんなハクビシンを見てしまうと、もはや野生動物とは思えないくらいです。家の車庫という状況下なのに、警戒することなく平気でリンゴを盗みにやってくる度胸がまるで家畜のように思えたのです。

ハクビシンは昔から日本に生息していたという説と、江戸時代には毛皮目的で移入していたのではないかという説があります。さらには、第二次世界大戦中に毛皮需要が高まり、台湾などから数多く持ち込まれ産業が奨励されたともいわれています。
そのハクビシンが、戦争も終わり毛皮の需要もなくなって、放逐されたものが繁殖して大量に野生化してしまったとも考えられます。
現在では、四国から本州の東北地方にまで分布域を広めているようです。
長野県でも、ボクの知るかぎりでは1960年代に伊那谷地方に細々と確認されましたが、そのご爆発的に増加して、今では全県下にまんべんなく多数のハクビシンが生息するようになりました。

日本には昔からキツネやタヌキ、イノシシなどがいましたが、彼らは木登りはしません。
でもハクビシンはどんな木にも登っていってしまいます。日本の自然界にいた動物が入り込めない隙間に、うまく入りこんで爆発的に増えていったことがうかがえます。
とくに、長野県はリンゴやナシ、ブドウやモモなど果樹栽培も盛んですからハクビシンにとっては餌もたくさんあって激増につながった可能性があります。
こうして、数が多くなればハクビシンもどこにでも出現するようになり、ボクの家の車庫にまで現れたのでしょう。まったくもってどこに潜んでいるのか分からない動物ですが、近年では市街地から山野までかなり広範囲に生息していることはたしかです。


(Photo:ハクビシンは「白鼻芯」という字の通り鼻筋が白いです)

まだまだ、謎の多いハクビシンですが、ボクの家のまわりにも普通に生息していることがわかったのでいろんな実験をしてみました。
リンゴが好きなので、そのリンゴをの垂直に立てた鉄パイプの上に置き、ハクビシンがどのようにして盗みにくるのか観察してみました。垂直の鉄パイプだから、どんなに木登りが上手くても、手足が滑って登れないだろうと思ったのです。


(Photo:鉄パイプもカンタンに上り下り)

ところがどうして、ハクビシンは垂直の鉄パイプでもすいすいと上り下りをしてしまったのです。
足の裏の構造がほんとうに木登りに適しているのだなぁーと感心すると同時に、それでは鉄パイプにグリスを塗ってみたらどうするだろうかと思い実験してみました。すると、ハクビシンはさすがに滑るらしく一回で懲りたそうで、その後は二度とリンゴを盗みにきませんでした。
こうして、ハクビシンの盲点を見つけたのでナシ農家に教えてあげたら、ガムテープを粘着面が表に出るように木の幹にぐるぐる巻きにしました。すると、ハクビシンもいやがり、ナシの被害もなくなったそうです。
どうやら、ハクビシンは木登りをする足の裏をとても大切にしているから、ねばねばの粘着質が着くことを嫌がることが、この実験でわかりました。
これは、野生動物をいじめているわけではありませんが、このような実験をしていけば、ハクビシンの食害に悩んでいる農家の方にも何かヒントになるのではないでしょうか。


(Photo:足の裏は、固い角質がスパイクのようになっていた)


(Photo:グリスを塗ったら降参した(左は塗った直後で、右は滑った跡)


(Photo:ナシの木の幹にガムテープを貼ったら、ハクビシンは退散した)


(Photo:ハクビシン対策でモロコシを囲ったけれども、こんなのはカンタンに登ってしまうだろう)


(Photo:リンゴを食べるハクビシン)



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コメント

  1. 頑丈な囲いに電気柵・・・獣害対策には、お金がかかるというイメージがありましたが、野生動物の行動や性質を知り、その裏をかくことによって低予算で対策が可能であることが良くわかりました。
    これなら、お年寄りにも対策ができそうですね。

    野生動物撮影も、また同じく・・・さすがです。

  2. こんんは。
    ハクビシンは道端で倒れてるのしか見ないのですが、記事の中に言われてみれば”おや?”と感じる記述があったので敢えて書かせていただきます。
    そう言えば‥、と言った感じなのですが、先猟期、暗くなって山を降りていると、ありえない場所に橙色のLED電球が二つ灯っていました。
    近づいてみると、なんと!タヌキが木(コメツガかなんか)の上から下ってくる途中で固まってました。
    こっちも14LEDの大光量ヘッドランプだったので多分照らされてまいっゃったんでしょう、タヌキ寝入りってやつですね。
    頭を撫でてあげようかと思ったのですが、我に返ってカカジラれるのも嫌なのでそのままにしときました。
    しかし言われてみると、タヌキが木の上に居るのは不思議ですね、そんな勢いや歩いて登れるような木じゃなかったし‥、間違ってもハクビシンじゃありません。
    そもそも、ハクビシンは固まらないですよね。
    なんか面白いですね。

  3. ■もっち さん
    低予算でもいいけれど、手を抜いてはダメです。
    あくまでも、マメに観察しながら真剣勝負でないと。

    ■いち猟師 さん
    タヌキが樹木の幹を登ることにはきわめて興味がありますが、この場合の周辺環境の描写がわかりずらいのでなんともいえません。
    太い幹で45度くらいの角度ならタヌキも登りますが、垂直の幹だったんでしょうか?

  4. たびたび投稿申し訳有りません。
    宮崎さんが興味を持ってくれたと勝手に判断し詳細記します。

    時刻は日没後1時間弱、17:30過ぎぐらいだったです、実を言うと木の種類までは気にしてなかったのですが、垂直に伸びていく木だったと思います、多分コメツガ、シラビソ、ブナのどれか、場所柄から言っても。
    ただ、タヌキの上方に少し太い幹があったので、杉や檜では無かったです、タヌキは頭を下にして降りてきてました、その時のタヌキの位置はヤツの顔が私の顔と同じくらいの高さ。
    タヌキの大きさは体調40cmほど、♂か♀かは分かりません。
    顔が華奢だったので、もしかすると♀かも。

    その時は別に不思議には思わずに、”なるほど、タヌキは昼間木の上で寝てるんだ、もしかしてクマもそうか?”とか思ったのですが、宮崎さんのブログや、なんかのTVで言ってた”犬科の動物は鎖骨が無いから腕がフレキシブルに動かないので木に登れない”と言うのを知って、なんかおもしろいな、と思ったわけです。

    くどいですが、間違いなくタヌキです。
    ハクビシンやアナグマじゃ有りません。
    よろしくお願いします。

  5. サルナシ類について調べていたらタヌキの糞からその種が出ていたことを知りました。そのため、タヌキが木登りできるものか不思議に思って、学術検索して見つけた専門家による情報でもタヌキの木登りの話が確認できました。つまり、いち猟師さんが観察されたタヌキの木登りは事実と思われます。

  6. Sorry I can’t write in Japanese…
    We have civet cats living behind our house. At first I didn’t know what they were (never saw one in England), I had to ask ‘Ba Chan’…. they climb straight up the steep concrete wall between our house and the mountain behind.
    Amazing climbers! We are not growing fruit so they do not trouble us much.
    Bill

  7. Dear Bill

    I’m glad to have your message from England.
    We have many civet cats in Japan in those years.
    They are expanding ther habitat.
    You may have a interesting knowledge on watching their behavior.

    Gaku Miyazaki

  8. 近所で度々目撃されているハクビシンを先月の夜にやっと目撃。
    鋸を挽くような異様な物音がだんだん大きくなったので、外に出てみたら
    自宅前の畑をぎゅー、ぎゅーと大声で叫びながら、駆けずり回る獣が2頭
    パン、パンと手を叩いたらウドの陰から顔を上げたのは、鼻に白いラインのまさしくハクビシンでした。
    二頭はすぐに、異様な声を上げて激しい追いかけっこを再開して、また畑を縦横に駆けずり回っていました。
    今夜また、あの地獄の悪魔の声みたいなのが聞こえたので、すぐ外に出たら駐車場と隣家のガレージの間の細道を行ったり来たりしていました。
    自宅の南側は大家さんの畑です。翌日聞いたら、畑の野菜(大根、白菜その他)や果物(柿やキウイー、トウモロコシなど)を盗られることは無く、たーだ畑を徘徊してるだけのようです。
    朝に夕に塀の上や畑で見かけると言っていました。
    知人は電線上を走ってどこかに家の二階に入って行くのを見たと言いいます。

    この辺は昔から狸が居ました。吉祥寺と渋谷の丁度中間の閑静な住宅街です。
    住宅街でたまーにかける狸は動きがおっとりしています。

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