宮崎学「森の動物日記」

森と里と野生動物たちから教わった自然のメッセージ 信州・駒ヶ根在住の動物写真家宮崎学のフォトエッセイです

沖縄の飛べない不思議な鳥 ヤンバルクイナ


(Photo:ヤンバルクイナ。顔や動きは古代の恐竜のような風貌です)

 

先日、沖縄のヤンバルにいってきました。
ヤンバルは沖縄本島の北部にある広大な密林地帯です。
ヤンバルを漢字で書けば「山原」ですから、たしかに山が原っぱのように広く濃密にひろがっています。

そのヤンバルには、飛べない野鳥の「ヤンバルクイナ」が生息しています。
もちろん、ボクはそのヤンバルクイナに出会いたくてでかけました。
ヤンバルクイナは、世界的にもここヤンバルの森だけにしか生息しておらず、数も少ないし珍しく、沖縄が世界に誇れる貴重な野鳥です。
それだけに、なかなかそう簡単には出会えるような野鳥ではありません。
ボクも、これまで何年も何回も挑戦してきましたが、まったくダメでした。
 


(Photo:山原《ヤンバル》の森は深く広くどこまでもつづきます)


(Photo:山原《ヤンバル》にいくと、このような巨大なヤンバルクイナの展望台が迎えてくれます)


(Photo:やんばる地方に行くと、このような道路標識があります。交通事故も心配です。)

そのヤンバルクイナですが、はじめはどのように鳴くかもまったくわかりませんでした。
ところが、密林の中でけたたましく「ケレケレケレケレ・・・・」と響く声があり、その声がヤンバルクイナの声だとわかった時から、ボクにはヤンバルクイナ探しのコツがつかめたのです。
この声だったら、何年か前にも聞いたことがありますが、まさかそれがヤンバルクイナだとは当時思いもよりませんでした。
静かに深い森に向かって耳をすませていると、遠く近くいろんなところで「ケレケレケレ・・・」と鳴くのがわかります。

ここまでわかれば、あとは密林に入って静かに待つしかありません。
藪蚊の攻勢にあいながらも、毒蛇のハブに注意しながら待ちました。
すると、50メートルほどのところからいきなりヤンバルクイナの声が聞こえてくるではありませんか。

確かに、「いる」。
それも、近所に。
でも、姿はみえない。
しかし、確実にヤンバルクイナはいる。

そんなはやる気持ちをおさえながら、とにかく、静かに待ってみました。
密林の樹影で息をひそめていれば、ヤンバルクイナはどこかに必ず出てくるハズ。
たぶん、ボクはまだヤンバルクイナに見つかっていないハズだから、地面だけを注意していればいいと思いました。

そんなボクの緊張とは裏腹に、ヤンバルクイナはいきなり姿を見せてくれました。
20メートルほど先の密林の草陰で、真っ赤なくちばしをしたハトくらいの大きさの野鳥がボクのほうをじっと見つめています。それは、まぎれもないヤンバルクイナです。
撮影したいとはやる気持ちを押さえながら、このようなときは絶対に動いてはならないことを経験から知っています。
とにかく、ヤンバルイナのほうで動いてくれるまで、こちらは待つしかありません。
 


(Photo:)森陰から、赤い嘴と目でこちらを静かに見ています)

すると、ヤンバルクイナはそろりそろりと広場に全身を見せてきました。
足も、くちばしと同じように真っ赤です。
広場の地面で、なにやら種子のようなものを探してはくちばしで摘んでいます。
それをみてボクは、もう撮影しても大丈夫だ、と思いました。
三脚につけたカメラの望遠レンズをゆっくり向けて、連写をしてみました。
意外にも、シャッターの音にはまったく反応を示しません。
これなら、カメラのファインダーにかぶりついたまま、ヤンバルクイナの動きにあわせてレンズを振っていけばいい、直感的にそう思いました。

ヤンバルクイナは、そのまま20分ばかり広場に姿を見せてくれました。
ゆっくり歩きながら、周囲に警戒の気配りをし、ときには10メートルほどのところまでやってきてくれたではありませんか。
これにはボクのほうが驚いてしまいましたが、ふだんから密林に生活している野鳥だから、人間に対してはそれほど警戒心も強くないのではないかと思えました。

こうして、ボクはとうとう幻の野鳥ともいえるヤンバルクイナに出会うことができたのです。
太古の昔にいた「始祖鳥」のような表情をした不思議な魔力を宿している風貌。
進化の過程で飛ぶ必要性を感じないまま沖縄の山原にいままで生き延びてきた野鳥だから、古くから島にいなかった動物などの進入があれば、あっという間に捕まってしまうのも実感できました。
人間が変えてきてしまった島の自然だから、貴重な種が絶滅してしまわないように、私たち日本人が守っていかなければならない野鳥なのだと実感しました。


(Photo:赤い嘴と目は、太古の恐竜のようで不気味です)


(Photo:歩く野鳥だけに、足は大きくて丈夫そうです)


(Photo:つがいのヤンバルクイナ。2羽づれでやってきてくれたのはラッキーでした)

 


(Photo:泥についたヤンバルクイナの足跡)


(Photo:ヤンバルクイナの糞。鳥そのものだけでなく糞や足跡、鳴き声を観察するのも大事)


(Photo:パッションフルーツが近所の農園で咲いていました)


(Photo:南米原産のトックリキワタという木が街路樹になっていました)

 



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コメント

  1. 迫力ある写真、堪能させていただきました。ありがとうございます。

    観察の要領は、餌を置いて野良猫を手なずけるときと同じでした。
    リラックスして気配を消してって、なかなか出来ませんが・・・

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