宮崎学「森の動物日記」

森と里と野生動物たちから教わった自然のメッセージ 信州・駒ヶ根在住の動物写真家宮崎学のフォトエッセイです

カケスは森の情報屋さん


(Photo:雪の森を舞うカケス。とても美しい飛翔形です)

ボクの仕事場は、中央アルプス山麓の森のなかにあります。
高原の森のなかですから、仕事場にはいろんな野鳥たちがやってきます。
その野鳥たちに混じって最近はカケスが遊びにくるようになりました。
カケスはカラスの仲間で鳩くらいの大きさをした野鳥です。
カラスの仲間だけに頭もよくて警戒心も強いので、撮影するにもなかなか難しいものがあります。
でも、せっかく庭に来るのだからカケスの賢さを逆手にとって、ボクと仲良くしてもらえないか、と考えました。
そこで、ヒマワリの種子を庭に少し蒔いてみたら、カケスは喜んで拾っていくようになりました。
そんなカケスと半年ばかりつきあっていたら、ボクをしっかり覚えたらしく、10mくらいまで平気で近づいてくれるようになりました。
これならもう大丈夫ということで撮影をはじめたのですが、カケスはそのお洒落な衣装で一流モデルぶりを発揮してくれたのです。

(Photo:クリをくわえたカケス。これは夏の写真です)

とにかくカケスはとても美しい羽毛をもっています。
小雨覆といって翼の肘にあたる部分の水色と白と黒のストライプ模様をした小さな羽根のかたまりが美しいのです。
この羽毛がときどき森に落ちていることがあり、それを拾うと誰もがニコニコして宝物にしてしまうほどです。

ほかにも頭のてっぺんの縞模様や腰の白斑や翼の風切羽にある白と黒のストライプ、胸の赤錆色や真っ黒な頬髭、それに水色のスケベっぽい眼。
これらを総合するとすこぶるキザで軽いダンディーさが感じられます。

この「新撰組」の羽織のような衣装は森でいったいどんな意味があるのか、カケスをつくりだした「造化の神」に聞いてみたいほどです。
なのでボクは、この森の伊達男が好きでたまりません。


(Photo:顔だけみてもカケスは森の伊達男のようです)

でも、カケスはカラスの仲間ですから「ジャージャー…」と声はダミ声で決して美しくはありません。
このため、この声だけ聞いてカケスは嫌いだ、という人も少なくありません。
ところがカケスはいろんな野鳥の声を覚えていて鳴き真似をするので、森の情報屋さんとしてボクは大切にしています。

(Photo:森を飛ぶあの翼は青空の木漏れ日のように鮮やかです)

ときにはクマタカやオオタカの声まで発するカケスもいます。
そんなカケスがいるときには、その森に本物の声の主がいることもありますから、カケスの声にはいっつもソバ耳をたてて、周囲をうかがうことにしています。
また、森の奥にクマがいたりするとカケスが騒いで教えてくれることもあるので、ボクも慎重な足取りとなって気をつけなければいけません。

こんなカケスですから「ビアンキ動物記」を書いたロシアの作家ビアンキは、カケスのことを「森の新聞屋」と呼んだほどです。
まあ、紙面で情報伝達していませんので、ボクは「森の情報屋=スピーカー」くらいに思っています。


(Photo:4cmほどのこんな羽毛を拾えば宝物)


(Photo:こうしてみればキザでお洒落を決めている森の伊達男のようです)

(Photo:川に流れるクリの実を拾うカケス)

(Photo:ときには仲間内ではげしくケンカをすることも)

(Photo:この表情はタカよりも鋭く見えます。)

 



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コメント

  1. やはり 綺麗ですね カケスもそうですが ホシガラスも鳴き声がだみ声ですが 姿はなかなかですよね 山道で拾う羽も鳴き声も好きです

  2. 最近はフェイスブックばかりに情報をいれていますが、
    日本の自然は5日単位に動いています。
    カケスもそうした観点で観察していると、餌の嗜好なども季節で端的に見えてくるからオモシロイです。
    あと4週間もすれば、カケスは静かに巣作りに入ります。
    そのときでないと、カケスの巣を見つけることは不可能。
    カラスの仲間だけに奥の深い野鳥…、です。

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