森の聞き耳頭巾(ききみみずきん)
(Photo:秋になるとよく啼くオスジカ)
秋も深まってくると、シカの声があちらこちらから聞こえてきます。
「キュウィィィィィーー 」
それは、大きくてよく通る声ですから、
一度覚えてしまえばすぐにわかります。
この声は、繁殖期を迎えたシカの雄が雌を呼んでいるのです。
こうして鳴く雄は、体も立派で、シカの雌たちは集団で惚れていきます。
このため、いい雄は何頭もの雌ジカたちを迎えてハーレム状態になり、
雄ジカは飲まず食わずで交尾を繰り返します。
このように雄ジカの声は秋によく聞かれますが、
普段のシカたちは「ピュー」っという甲高い声をだします。
これは、警戒の声なので一年中聞くことができます。
この声も大きいので、私たちにはすぐにわかります。
(Photo:シカの耳は、体の大きさと対比すると
アフリカゾウに匹敵するくらい大きいです)
ところが、シカ同士が会話するときの声は
まったくといっていいほど私たちには聞こえてきません。
彼らは、私たちには聞こえない周波数の声を出しているからです。
このようなことは、多くの野生動物にもいえることだと思います。
たとえば、「犬笛」というものがありますが、
犬には聞こえても私たちにはまったく聞こえません。
イルカなどを調教するにも、この犬笛を使うといいますから、
多くの動物たちが私たちとは違う音波帯を使って意志疎通をはかっているのでしょう。
たぶん、それでないと種類のちがう動物たちの会話のすべてが聞こえてしまっては、
緊張したり、警戒したり、うるさいし気も休まないから
ノイローゼのようになって生きてはいけないのではないか、とボクは思っています。
(Photo:ツキノワグマの耳は、意外と大きいです)
ツキノワグマだって、明らかに口から呼吸音のように出す音波を
キャッチしながら行動していることをボクは確認しています。
それは、ある夜間にツキノワグマを観察していたら、
ボクが脅した覚えがないのに、すっとんで逃げていってしまったことがあります。
そうしたら、まもなく目の前に大きな別のクマが現れましたから、
このクマの出す聞こえない声を察知して逃げたものとボクは思いました。
また、あるときは、観察中のクマのところに別のクマがやってきて、
「なんだおまえかぁー」といった感じで仲良く行動したこともありました。
そんなクマたちの行動を見て、
これはまちがいなく低周波らしきものを出しあっていて、
それを受け取ってお互いの行動に利用している、とボクは思っているからです。
その証拠に、ツキノワグマは絶えず口をパクパクしながら歩いていますから、
このときに私たちには聞こえない「音波」がでていると思うのです。
(Photo:この唇の動きは低周波を出しているようです)
なので、このような観察をしてしまうと、
ツキノワグマに遭遇しないために「鈴」や「笛」「ラジオ」を鳴らしなさいといわれますが、これって何の効果もないのではないか、とボクは思ってしまうのです。
ラジオなんて、スピーカーから出ている人工音ですから、
ツキノワグマは自然界にある生音と人工音はしっかり区別しているからです。
その証拠に、夜間の中央高速道路は大型トラックが
10秒置きに一台走っていく状態ですが、
ツキノワグマはそんな高速道路脇で寝そべってクリなどを食べているのです。
それより、山野では木の枝が折れたり、幹を叩く音のほうがよほど警戒をします。
さらには、「ヤッホー」といったような人の甲高い「生声」には
ツキノワグマはものすごく反応して警戒します。
(Photo:夜間に大型トラックが行き交う高速道路の下で餌探しをするツキノワグマ)
こうやって考えてみると、野生動物たちは人間界の機械音などがあっても、
聞こえないところとオーバーラップしながら無視したり警戒したりして
「聞き耳」をたてていると思っていいでしょう。
(Photo:アカネズミも超音波まで聞いています)
(Photo:クマネズミの耳もこんなに大きいのでいろんな周波数の音を聞き分けているハズ)
(Photo:ノウサギは、とくにいろんな超音波まで聞いているハズです)
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*隔月連載。次回の更新は2014年1月上旬です。
ブログ記事とは関係ありませんが、愛犬ホタルちゃんが疥癬に罹患とのこと。
犬用の疥癬駆虫剤はないので家畜用を使用することとなりますが、この注射薬の基材となっている溶媒が石油系のものですので、注射時には刺激性があります。
そしてもう一つ、痛みが強くなる理由もありますが、公開のコメント欄なのでちょっと内緒にさせてください。
痛みの理由と言うのは、事前にわかっていることなので、痛くならないような注射のうち方というのもありますよ。
1回の注射で8~9割は改善されますが、どなたかが仰られていたように、疥癬の虫卵には薬が効きませんので、複数回の注射が必要となります。