まちがいだらけの自然保護
(photo:ハッチョウトンボのオスは、とても美しい赤色をしています)
ハッチョウトンボって、知ってますか?
小さな、ちいさなトンボです。
体長は、28ミリくらい。細くて小さいので爪楊枝を半分にして羽をつけたみたいです。
オスは、全身が真っ赤となり、メスは黄褐色です。
とにかく、小さくて可愛らしいトンボですから、ハッチョウトンボのファンは多いものです。
そのハッチョウトンボが、中央アルプス山麓のある湿地帯に棲んでいました。
そして、このトンボを守ろうと保護会もできていました。
そのハッチョウトンボの棲む湿地へ行って驚きました。
春の産卵期を迎えたヤマアカガエルが、湿地の水溜りに卵を産んであったのですが、そのカエルの卵塊が、土手の上に捨てられていたからです。
カエルの卵ですから、水分を含んだゼラチン質に包まれていますからそんなにすぐ死ぬことはありません。
なので、ボクは卵塊を拾ってもとの水溜りに戻してあげました。
そのあと、2日ほどしてハッチョウトンボの湿地へでかけてみると、カエルの卵はまた陸に捨てられていました。
なので、また、水に戻してきました。
そんな繰りかえしが5回ほどつづきました。
これは、あきらかにヤマアカガエルの卵塊に悪意をもった人間がやっていることとしか思えませんでした。
(photo:小さいので見つけるのが難しいです)
(photo:ヤマアカガエルは山林に普通に見られるカエル)
そんなことがあったので、次には少し時間をずらして早めに出かけてみました。
すると、年配のおじさんがカエルの卵塊を水からすくって捨てているところにちょうど出会いました。
「おじさん、その卵はヤマアカガエルという林や森に棲むカエルの卵塊ですが、どうして捨てるのですか?」
「オレは、ハッチョウトンボを守っとるのだで、カエルのおたまじゃくしがトンボのヤゴを食べちゃうから、邪魔せんようにこうして退治しているんだが…
学校の先生も、そうするように言うとるし…」
「それって、まずいんじゃあないですか?ウシガエルのような外来生物の卵を駆除するのなら意味も分かりますが、ヤマアカガエルは日本を代表する水辺環境の生きものですが…」
おじさんは困ったように抵抗します。
「そうはいっても、あの小さなハッチョウトンボを守らなければならないから、なぁー
この水辺にはシオカラトンボもギンヤンマやオニヤンマもいて、みんなハッチョウトンボをねらっておる…で」
「いや、自然界ではみんなが食いくわれる関係にあるので、小さくて可愛いからといってハッチョウトンボだけを守るのはよくないと思います。
ハッチョウトンボだって、いろんな生物に狙われながら生きのびてはじめて、生態系の一員になっているのですから、やっぱりヤマアカガエルの卵を駆除するのはマズイことです。
野鳥のメジロだって、小さくて可愛らしい野鳥ですが、そのメジロをタカたちが狙って殺して食べてしまいます。そのタカをメジロのために殺すようなものですから、それはやっぱりマズイでしょう?」
「そこまで言われてしまえば、そうだなぁー」
おじさんは解ってくれたようで、ヤマアカガエルの卵塊を水に戻していました。
(photo:ハッチョウトンボはこのような湿原に棲んでいます)
そういえば、この水辺では、背が高くなる植物のショウブの芽も積極的に潰して、オニヤンマなど大型のトンボの羽化を妨害していました。
自然界には、いろんな生きものがいて、それぞれに関係しあって生きているのが生物多様性です。
それなのに、小さくて可愛いからといって、ハッチョウトンボだけを守ろうとすることは生物のバランスをくずしていくことになりますから、それは「まちがい」だと思います。
あらゆる生物には、この地球上に生きる意味をもっているので、その生活現場を理解してから見届けていくことが保護なのではないかと思います。
(photo:ウシガエルは食用に輸入されましたが、日本各地で生態系に問題を起こしています)
(photo:こんなきれいなオオシオカラトンボだって、天敵のクモにはかないません)
(photo:小鳥を襲うタカの一種であるツミ)
(photo:ジムグリは、こんなに優しい顔をしていますがネズミには天敵です)
テレビ番組でも、そのようなこと多いです。
以前、里山にアイドルグループが掛けた巣箱にアオダイショウがやってきた折、メンバーたちが必死になってアオダイショウを排除していた場面がありました。
大半の番組視聴者は、「良かった~」「よくやった!」の感想でしょう・・・。
番組的には、「悪」と「善」の対決は、視聴者には受けが良いのだろうけど、自然に対する見方を思い切り履き違えていて、こういう報道のあり方にも、やはり問題がありますね。
まさに、一事が万事、そのようの事は、良くあると思います。
全体のバランスを、十分に理解せず、ひとつの種を、ひたすら保護しようとする結果、他の種を、闇雲に迫害しようとする事になってしまいます。
人が、「可愛く」見えるものを保護しようとするのは、ある種自然な、感情的な成り行きであって、無理からぬ部分もあるのですが、それだけで物事を判断してしまうと、他の「可愛くない」動物たちは、立つ瀬がありません。
こんにちは、はじめまして。
最近、写真を撮り始め、動物が好きなこともあって
動物写真家さんのブログを探していてたどりつきました。
いろんなお話、とてもためになります。
人間と他の生き物たちとの共存は、永遠のテーマですね。
わが家には、猫、カメ、メダカがいますが、彼らから教わることはとても多いです。
素敵なブログ。また、拝見しにきます。
■もっち さん
報道のあり方次第で、ほんとうに自然は正反対になってしまうことが多いものです。
やはり、きちんと自然をみていくことが大切ですね。
■小坊主 さん
自然に親しんでいる人でないかぎり、やはりキチンと理解することは難しいことかもしれません。
そのためにも、こうしていろいろと発信していかねければならないのかもしれません。
■Meiko さん
写真をはじめられたのですか?
写真は奥が深くて面白い世界ですので、どうぞ、どんどん楽しんでください。
技術はあとでついてきますが、知識はどんどんつけていったほうが楽しいと思います。
オオムラサキならオオムラサキだけ、ギフチョウならギフチョウだけ。ひどいところでは、食草に対しての知識も希薄なので、林を切り開いて探勝路を付け、展望台を作り、ベンチを設置し、案内板を設置。そして、いなくなる。
他所の産地で採集して来たそれらを飼育して放蝶して、美談として取り上げられる。
自分たちが森や草原を切り開いてスキー場開発やロッジを建てて自然破壊と引き換えに生活しているのに、自然の守り神のような顔をして、わずかばかりの蝶の採集家を犯罪者扱いにする。
切りがありませんね?。
一番くやしくて????だったのは、時々、モリアオガエルやトンボの観察に出かけては、ひょっとしてヒメヒカゲでもいるんじゃないかと楽しみにしていた山の中の小さな湿地がある年の春ブルドーザーが入り、林道工事でつぶされるのかと思って残念がっていたのが、梅雨時に訪れてみれば、なんと2m以上もある木の板のフェンス(イヤ壁です)で囲われて、自然保護の為立ち位置禁止!観察会がいついつあるので...ウンヌン。
ナニヲカンガエテイルノカサッパリ???
カエルの卵とりのおじさん素直な人でよかったですね。宮崎さんの説得力ですかね。
ハッチョウトンボはどこに居るのか分かりませんでした。
でも,「湿地ある所トンボあり」が分かってきました。
雄は目も覚めるような赤い色をして目立つのに
雌は地味な色で目立たないようにしていることに気づきました。
雄の顔が奴さんに似ていておかしくなってしまいました。
宮崎さん、私のfbにこの記事をアップさせていただきました。
そうしましたら、鐸木能光さんとある女性がコメントを下さいました。
鐸木さんは作家、作曲家、狛犬研究家、そして趣味(を超えてますが)がカエルの繁殖地の見回りというかたです。
私が宮崎さんのことを知るきっかけとなったのは、鐸木さんが宮崎さんのfb記事を何度もシェアされていて、それを拝見してその記事に夢中になったからです。(土管の中の仲良しのカエルさん2匹の記事他。)
今日、鐸木さんがくださったコメントをコピーします。
カエルのおたまじゃくしがトンボのヤゴを食べちゃうから~」←そもそもこれがおかしいでしょ。逆はいくらでもあるけれど、オタマジャクシがヤゴを食うなんてありえない(あの小さな口で)。成体のカエルも、水中で動くものは食わないですね、なぜか。
かわず庵のオオカミ池(鐸木さん手作りのカエルさんのための池 ←小島より)には、去年、いろんなトンボが産卵していきました。今、凍りついていますが、氷の下でヤゴとかが越冬しているとすれば、春になるともぞもぞ出てきますね。そこにカエルも来て産卵して、ヤゴが孵化したばかりの小さなオタマを捕まえて食うわけですが、だからといってヤゴだけ駆除しようとかは思いません。それが生態系というものだから。カエルはオタマの時代もカエルになってからも、常に補食動物、つまり、食物連鎖の中では下のほうにいて誰かの餌になる運命なんですよね。だから「数で勝負」するしかない。アカガエルなんかは数で勝負する代表種ですね。アカガエルは他のカエルよりも産卵時期が早い(オタマの期間が比較的長い)ので、田んぼに水が入るだいぶ前に、ちょっとした水たまりができたり、U字溝の水たまりの中なんかに産みつけてしまうから、田植えが始まると同時に卵が大量死します。ヤマアカガエルは山の中の人目につかない湿地なんかに産むからまだいいんですが、ニホンアカガエルは比較的人里に棲息しているので、農業環境の激変で、一気に絶滅危惧に追い込まれました。栃木県のレッドリストでは絶滅危惧種II類に指定されています。
もうお一人はアメリカ在住の女性です。
学生時代はジャーナリストを目指していらした方だけあって、いつも的確なコメントをくださいます。
いい記事ですね。宮崎さんのとまどい、おじいさんの戸惑いがよく分かります。
文中、おじいさんが、「学校の先生も、そうするように言うとるし」と言い訳するのが、とても癪に障りました。
そういう狭い考えの先生が古臭い知識で保護運動を指導し、偉い先生の言うことを疑いもせずに従う。この国の縮図だなあ、と。