フォトエッセイ「写風人の薪焚き日和」

風のように自由気ままに撮り続けたい…カメラマンの視点から綴る日々の薪ストーブライフ

南信州暮らしの準備始まる

朝は小鳥のさえずりで目覚める。
凍てついた木製の窓枠を開けると外は一面銀世界だ。
ここはそれほど山奥でもない田舎の里山。
1年の半分は薪ストーブを焚いていられる冬の長い田舎暮らし・・・・・
これは8年前に立ち上げた自身のホームページの序章(妄想)の一節です。

いま、南信州・山暮らしの準備をはじめています。
夢は想い続ければ叶うものです。

ここは中央アルプスの麓
仲間と山暮らしを求めて、3年越しで見つけたフィールドです。
前回のコラムでは原野の開拓にしか触れていませんが、
ここには築22年の山荘があります。
約90坪の平屋はシェアハウスとしては申し分のない広さ。
リフォームすれば薪ストーブや囲炉裏、薪ボイラーなど、
火のある暮らしを満喫できそうな条件もそろっています。
まさに薪焚き日和にふさわしい「焚日たきび山荘」

焚日山荘の詳細は追い追い紹介するとして、
11月までの孤軍奮闘ぶりをレポートしたいと思います。

 

焚日山荘のご祈祷

夏以降ことごとく雨にたたられています。
陽当たりや見晴らしを良くするために、
前地主さんが植えたであろう草木を片っ端から切ってしまったからでしょうか?
月に1・2度しか来られないのにこれでは作業が捗りません。

決して信心深い訳ではありませんが、
仲間の勧めもあり、清め祓いのご祈祷をお願いしました。

11月初旬。
心掛けがいいのか、珍しく快晴。モミジも鮮やかを増しています。
山荘の隅々まで清め祓いを済ませ、
容赦無く切ってしまった木々達にもお祓いをお願いしました。
細かな枝まで薪として成仏させてあげましょう。

 

斧で木を倒す

何万年もの間、人は斧で大木に挑んできました。
ノコギリが使われるようになったのは、せいぜい300年ほど、
チェンソーに至っては約50年前からでしょうか。
斧での伐採が遥かに歴史ある手法であることは間違いありません。

今年の10月、伊勢神宮の式年遷宮が行われたのは記憶に新しいです。
その8年前、御神木を最初に伐り出す
「御杣始祭(みそまはじめさい)」が木曽谷の国有林で行われています。
遷宮の用材となる御神木は樹齢約300年の木曽ヒノキ。
高さ30m近い大木であったそうです。
その大木の伐採は、伝統を重んじ斧を使って伐り倒すのです。


(伊勢神宮式年遷宮広報本部より)

これこそが「三ツ紐伐り(みつひもぎり)」と呼ばれる伝統的な技。
木の周囲三方向から三人がかりで斧を入れ、伐り口を木の中心でつなげる。
すると樹が三本足で立っているような状態になる。
そしてその1本を伐れば樹は狙った方向に正確に倒れるのです。
しかも貴重な用材にヒビが入らない(芯が割れない)のが特徴です。

これまで雑草雑木を敢えて手作業で行ってきたのですから、
伐採も斧でやってみたくなるじゃないですか。

単独作業ですから三ツ紐伐りは断念し
手頃なヒノキをはさみ伐りでチャレンジしてみました。


まずは倒す側の「受け口」から伐り込みます。
上から斜めに一撃、下から水平に一撃。これの繰り返し。


柔らかいヒノキですから、それほどの重労働ではないです。

そして反対側の「追い口」を斧で伐り込みます。
倒れる瞬間を連写してやるつもりが、
あっけなくドドッと倒れてしまい、連写間に合わず。

ただ呆然とリモコンを操作する姿しか撮れませんでした。

でも、ファイトォ、イッパァーツって感じで、実に爽快です。


しかしそれも1本体験すれば十分満足。
残りはチェンソーで伐り倒します。
いや~、やっぱりチェンソーは有り難いですね。

 

焚き火でメシを食う Vol.2

作業に夢中になっていると、つい腹が減ったことを忘れてしまいます。
気が付けば午後2時。


枯れ葉と枯れ木を集め、
雑草を絶やすため、毎回違う場所で火を起こします。

焚き火料理の道具は、グランマーコッパーケトルと鉄鍋と菜箸だけ。

若木に刻みを入れてケトルと鍋を引っ掛け、
伐り倒したスギの丸太が上手い具合に支えになりました。

今日のメニューは前日に煮込んだ八丁味噌おでん。
名古屋圏ではこの濃厚な赤味噌が定番です。
この焚日山荘では調理する時間も惜しい。
かといってコンビニ弁当では味気ない。
やっぱり火にかけられた手作り料理じゃないとね。


たまらないですね、この湯気。
木蓋におでんをのせ、かぶりつく。
冷えた身体と空きっ腹に染み渡ります。
立ち食いのまま完食し、腰を落ち着かせる事なく作業に取り掛かる。
このせっかちな性分は、間違いなく親譲りです。

好きなことに没頭していると、時間が過ぎるのも早い。

特にここは中央アルプスに遮られ、瞬く間に陽が落ちます。
夕陽が眺められないのは、チト残念ですが・・・。

冬の時期は何度来られるでしょうか?
伐り倒した木や枝で薪づくりもしたい。
薪小屋もつくりたい。
露天の薪風呂も設置したい。
雪が降れば雪中キャンプもしたい。
やりたいことが多すぎる。

実は山荘には煙突も立っていないのに、
アンコールが静かにスタンバイしているのです。

2月のコラムでは、
この寒々しい姿から暖かな揺らめきを魅せてくれるでしょうか・・・?

 

(隔月連載。次回の更新は2月上旬です)

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コメント

  1. おめでとうございます。
    写真を拝見しているだけでも、うっとりします。
    特に最初の写真は聖地バーモントを彷彿させます。
    私も信念をもって生きる事は大切だと思います。
    やりたい事だらけ・・ 中年の星ですね。

    • matsuzawaさん、ありがとうございます。
      バーモントもこんな感じですか?それは嬉しいですね。
      matsuzawaさんにも色々手伝っていただいて感謝しています。
      キウイの蔓が絡まって倒れなかったヒノキ、あれを倒してもらったのは助かりました。
      薪ストーブや薪棚の作り方など、また色々教えて下さいね。

  2. 夢があっていいですね。時間をかけて少しづつ形になって行くのを見るのは本当に楽しいことで、その間にプランを練ったりして、間の時間も楽しめますね。

    我家を建ててから5年間で、庭の整備を日曜大工と日曜左官により進めてきましたが、この夏にほぼ完成してしまいました。来年からは手入れと薪作りくらいになってしまい、手持無沙汰になるのではないかと危惧しています。今回の記事を見せていただいて、また何かやろうという気になってきました。

    • なかさん、コメントありがとうございます。
      5年間かけてやり遂げた達成感と、寂しさもあるのでしょうか。
      でもその満足感に浸りながら、のんびり暮らす時間もたまには必要かもしれませんね。
      私は3年ほどは通いですから、作業はなかなか捗らないと思います。
      逆にプランを練る時間が多すぎて、頭でっかちになりそうです。
      日曜大工はまったくの素人ですので、色々教えて下さい。

  3. おめでとうございます!
    いろんなブログコラムやお話で聞いていた夢が、叶ったのですね!
    写風人さんの薪焚き日和に憧れ、ちょっとだけ薪に近づいたかな・・・なんて。

     [薪日たきび山荘]
    ネーミングも素敵!
    ますます写風人さんフィールドが広がっていきますね^ー^

    • m.yamaさん、ありがとうございます。
      正確には私のモノではないですけど、管理を一任されたという感じでしょうか。
      ネーミングは、薪を焚く日和を縮めて「焚日」、無理矢理「たきび」と読んでいます。
      m.yamaさんも薪焚きや鉄鍋に近づきましたか?焚き火で料理するときがあれば誘ってくださいね。

  4. はじめまして、あげです。
    直火のたき火いいなぁ。
    私は、たきび道具を使ってのちまちましたたき火しかしてませんが、
    それでも、たき火大好きです。「趣味たき火」です。そういう人多いと思いますが。ときどき、おじゃまします。ではまた。

    • あげさん、はじめまして。
      焚き火仲間からのコメント、ありがとうございます。
      ブログを拝見しました。
      写真がきれいですね〜。特にアルコールストーブの青白い炎はなんとも魅力的です。
      私もチマチマした焚き火の方が、可愛げがあって好きです。直火は雑草を絶やすためでもありますが、それでも小さな焚き火でこっそり愉しんでます。薪に恵まれた環境ですので、今後もいろんな焚き火を紹介できればと思います。

  5. はじめまして…です。
    PCで南信州をフォーカスしていましたら
    ラッキーにも偶然に…ここへ…。
    写風人さん…
    なんて…かっこいい〜おじ様かしら…と、
    釘付けに…(*^^*)
    ターシャに憧れ続けること数十年…?(笑)
    太陽…風…土…水…火…自然、大地と共に生きる…。
    いまだ夢は覚めやりません…。
    写風人さんの歩みをわくわくしながら
    学ばせていただきつつ…夢を叶えるパワーも
    いただきたいな〜と勝手にワクワク…(*^^*)
    寒さが厳しいですし
    どうかお身体御自愛くださいませ。
    ありがとうございます(*^_^*)
    突然のコメント…お許しください。

    • A.MARIさん、はじめまして。
      コメントありがとうございます。
      2日ほど休暇をとり、ちょうど南信州に来ているところです。
      ターシャさんは私も憧れの方であり、自然の中で自分らしくゆったり生きていきたいと思っています。
      ただ、こちらに移住するまでは悪戦苦闘の日々かもしれません。またそれが楽しいんですけどね。
      A.MARIさんも夢を追い求め続けて、ターシャさんのような暮らしが実現できるといいですね。

  6. わ~知りませんでした。おめでとうございます。
    山荘の名称も流石です。ステキ!
    私の長野のボロ家 ”おバカ山荘”が恥ずかしい~!!

    素晴らしいですね。
    男のロマンをドンドン実行して行っちゃう写風人さんはステキ過ぎます。
    やはり 私の神ですわ。

    私は女ですけど・・・本当に真似したい事ばかり。(できんけど)
    近々、バーコのワックス買います。(キャンプ時の枝払い用に)

    また 覗きに来ますね。
    ステキな写真満載のブログ楽しみにしております。

    • BOOさん、コメントありがとうございます。

      バーコのキャンピングアックスを購入予定ですか?
      いいですね、薪ストーブの小枝づくりにも活躍しそうです。

      私の山荘は、恐らくBOOさんの山荘へ行く途中にありますので、是非機会がありましたらお越し下さい。
      お互い長野に山荘を持つ者同士、いろいろな楽しみ方を体験していきましょう。

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