南信州 ナチュラルソロキャンプ
夏休みともなると、どこのキャンプ場も予約でいっぱい。
最近は「オシャレ」「かわいい」といった「メルヘンキャンプ」や
巨大テントとリビングでゆとりを楽しむ「ゴージャスキャンプ」など
様々なキャンプスタイルがあるようです。
まるでキャンプギアのお披露目会とでも申しましょうか・・・。
かく言う私もかなりの道具好きで、つい余分なモノまで持ち込んでしまうタイプです。
便利で快適なキャンプは、満たされているようで今ひとつ心に響きません。
ここは一度、野外生活の原点を見つめ直し、
より自然なスタイルでソロキャンプを試みました。
道具は最小限に絞り、食材を除いてこれだけです。
片手斧(ハンター)、ナイフ、ノコギリ、ファイヤースターター、
山食器、浄水ボトル、麻ひも、グローブ、ビビィサック。
テント・タープ類は持ち込みませんでした。
最近よく目にするのが「ブッシュクラフト」。
当初は「茂みの枝を利用した工作」と解釈していましたが、
どうやらそんな単純なことではなく、
自然の恵みを利用して野山で暮らすための知恵や技術を示すようです。
過酷な環境での生存や脱出を意味する「サバイバル」とは少し意味が違います。
ただ実際に体験した訳ではないので、本来のブッシュクラフトではないかもしれません。
ですからブッシュクラフトごっこという事で・・・。
野営場所はいつもの南信州フィールド。
薪を拾い集め、まずは焚き火の準備。
用意した着火道具は、マグネシウムで火花を散らすファイヤースターター。
今回はフェザースティックを作ってみました。
これに直接着火させるので、かつお節のように薄く薄く削るのがコツです。
麻紐や綿などには一発着火させやすいですが、
フェザースティックは多少熟練が必要です。
着火すれば火持ちがいいので、枯れ葉や小枝にゆっくり火を移していけます。
次は寝床になる小屋づくり。
森林作業の仮設小屋やビバークするためのシェルターとして、
枝と葉で作る差し掛け小屋があります。
先日、皮むきした丸太を利用して作ってみました。
支柱を2本突き刺すために、グレンスフォシュのハンターで鋭角に削ります。
欧米のブッシュクラフトでは、ほとんどの人がナイフとグレンスフォシュの斧をペアで持ち歩くのだそうです。
小屋は常設したいので、地中に埋める部分を焚き火で炭化させました。
麻紐で縛りながら、枝を組んでいきます。
夜露を凌ぐために屋根にヒノキの葉を積み上げて完成です。
日陰を選んで設営しましたが、さすがに日中は暑いです。
熱中症も気をつけなければなりませんが、
尿管結石を患ったばかりですから水分補給だけは欠かせません。
フィールドのすぐ脇には山から湧き出た水が流れています。
この浄水ボトルは浄化が早いので、すぐに飲料水として飲めるのです。
アルプス天然水は冷たくて美味しい!
腹も減り、そろそろ夕食準備に取り掛かります。
カトラリー類は一切持ってこなかったので、枝で代用します。
ハンターで一生懸命削っているのは肉を刺す串。
斧といっても、しっかり研いでおけばナイフのように削れます。
斧や刃物は日頃の手入れが大切です。
このロケーションならジビエ料理がいいんですけど、私に狩猟は無理。
代わりに持ってきたのはベーコンの塊です。
ベーコンは塩気も多い、常温で保存できる、食べ甲斐がある、そして何より安い。
野営には便利な食材でよく利用します。
肉塊を焼いていると、まるで原始生活してるみたいです。
日没後に訪れるブルーモーメント。
辺り一面、青い光に照らされる僅かな隙。
焚き火が最も美しいと感じる瞬間です。
一連の焚き火シーンを見てお分かりいただけると思いますが、太目の薪を枕木にして、その中でチビチビ燃やしています。
次第に枕木の内側は燃えて、熾きとなって長持ちし調理もできます。
ピラミッド型や井桁型に組んでボウボウ燃やすのは、単なる薪の無駄遣い。
食事が終わった焚き火は太薪を寄り添うように並べかえます。
これで長時間燻り続け、ヤブ蚊も近寄ってこないでしょう。
寝具は防水仕様で保温性の高いビバークサック。
この時期、岐阜の地なら長袖だけで眠れるでしょうが、さすがに南信州の夜は冷え込みます。
翌朝はちょっと寝坊して6時に起床。
完全に陽が昇ってしまいました。
すべて灰になった焚き火跡で、新たに火を熾します。
朝食は粉末ポタージュとベーコンの残り。
蓋付きのシェラカップは食べ残しを保存したりフライパン代わりにもなるので重宝します。
さて、こんな粗雑で素朴なソロキャンプでしたが、
直火のできるキャンプ場なら誰もが体験できるのではないかと思います。
差し掛け小屋は無理としても、枝とタープでシェルターを作り、
何もないサイトで焚き火キャンプしてたら、きっと目立ちますよ。
焚き火ってホント病みつきになります。
火起こしは現実社会に必要ないかもしれませんが、
震災時に焚き火は生きる支えになっていましたし、
山で遭難した時なども、火さえ起こせれば必ず生き延びられると思うのです。
薪ストーブライフも決して便利で楽な生活とは言えませんが、
普段から薪や火に関しての知恵や技術を身につけておくことも大切ではないでしょうか。
(隔月連載。次回の更新は10月上旬です)