フォトエッセイ「写風人の薪焚き日和」

風のように自由気ままに撮り続けたい…カメラマンの視点から綴る日々の薪ストーブライフ

驚きと感動のグランマーコッパーケトル

先日の週末、信州入りした時の朝晩の冷え込みは、岐阜とは比べものになりません。
寒すぎるなどと我慢することもなく、迷わず薪ストーブに火入れです。


夏に焚いていた時と比べると、
ケトルからの湯気が目立つようになってきました。
それほど室内が冷えているということですね。
それにしてもグランマーコッパーケトルは存在感あります。
数ある薪ストーブアクセサリーの中で、一番のお気に入りかもしれません。

そもそもグランマーコッパーケトルとの出逢いは2006年に遡ります。
あるネットショップのレビューを書いて、
当たったのがファイヤーサイド社のカレンダーでした。

その頃はファイヤーサイドさんとのお付き合いもなかったので、
カレンダーに載っている薪ストーブアクセサリーに衝撃を受けたものでした。


特に目敏く気付いたのが、表紙と1・2月に写っていた銅製のケトル。
カタログにもホームページにも載っていないため、
思い切ってファイヤーサイドさんに直接問い合わせすると、
これはポール社長のお祖母さんが愛用していたケトルで、
現在復刻版を製作中です。商品化まで暫くお待ち下さい、との返答でした。
それまでが待ち遠しくて仕方ありません。

そして念願のご対面。

ピカピカのケトルに小躍りしたことを覚えています。
初期モデルは上蓋にチェーンが取り付けられているのが特徴です。


1年もしない内に焚火との両党使い。
当然煤黒くなるので、暫くすると初期モデルは焚火用になりました。


薪ストーブ用にもう1つ必要なんだよなぁ~、なんて2台目のケトルが増え、
容量の小さいのもあると便利だなぁ~、なんてケトル小やミニも増え、
週末駒ヶ根暮らしが始まれば、当然こちらにも・・・、などと


あれよ、あれよという間にこうなってしまい
グランマーコッパーケトルの虜になってしまったのです。

 

ケトルを生み出す職人技

先日、更に魅了させられた出来事がありました。
ファイヤーサイドの方々と、グランマーコッパーケトルの製造現場への訪問取材です。
そこは世界的ブランドとも言われる金属加工の町、新潟県長岡市&燕市。
ケトルの製造工程は全く知らないまま訪れたので何もかもが感激でした。


成形はてっきり一般的なプレス加工で量産されていると思いきや、
なんと、ヘラ絞り加工でひとつひとつが職人の手作りです。


ヘラ絞りとは、素材を回転させながらヘラと呼ばれる棒を押し当てて成形する手法。
この方法は以前から知っていましたが、実際にみるのは初めてでした。
そのヘラ絞りを含め、80もの工程を経てケトルが作られているとお聞きし、驚きと感動の連続です!


そして、ピカピカに磨き上げられたケトルが完成します。
これはもう単なる商品というより、
何十人もの職人が丹念に創りあげたアートというべきでしょう。
銅の美しさを最大限に引きだす磨き。
この工程を目の当たりにした時、
焚火にぶち込んで粗雑に扱ってきたことを反省しきりです。

そのことをお話しすると、「えっ、焚火で?」「信じられない!」
声にこそ出されませんでしたが、私にはそんな表情にも見受けられました。
そこで、煤で真っ黒になったケトルの手入れ方法をお伺いすると、
いくつか言われた中で、特に印象に残っているのが灰汁(あく)と藁(わら)でした

 

灰汁で磨く

灰汁とは、灰を水に溶かして上澄みをすくった液のことで、
古くから洗剤や漂白剤、食品のアク抜きなどに使われています。
灰と藁は身近なものでもあるので、すぐに試してみました。
灰汁を作る上で注意する点は、アルミの容器は使わないこと。
強アルカリ性の灰汁は、両性金属のアルミニウム、亜鉛、スズ、鉛を溶かしてしまいます。
ガラスや陶器、金属では鉄や銅、ステンレスなどの容器がいいと思います。
また素手で作業すると肌が異常に荒れてしまうので、ゴム手袋などお薦めします。


これは2014年に購入し、知らぬ間に焚火で使い込んでいたケトルです。
かなりコテコテに煤がこびり付いています。


藁を縛り、灰汁の上澄みを浸して磨いていきます。
すると灰汁が垂れ落ちた部分の汚れが剥がれていくので
灰汁の中にケトルを沈めた方が手っ取り早いのではないかと思い、
本体の底1/3程をドボンと沈めてみました。


かなりの洗浄力で、底にこびり付いた煤の汚れはきれいに落ちました。
しかし本体は2回ほど深さを変えて沈めたので境がくっきり付いてしまい、
慌てて満遍なく磨き上げていきました。


いっその事、全部沈めてしまえばムラなく仕上がると思いましたが、
ケトル内部はスズでメッキされているため、
灰汁によって溶けてしまう可能性があるのでその方法はNGです。
かつて色んな方法で煤を磨いたことがありますが、
今のところ灰汁が一番効果があるように思います。
昔の知恵って素晴らしいですね。

 

薪火でつなぐ

ファイヤーサイドさんは今年で創立30周年を迎え、
いち早くイベント開催のご案内です。
信州駒ヶ根を発信源として、薪火の楽しみを味わえる体験型イベント。
テーマは「薪火でつなぐ」です。
私も薪づくりには欠かせない斧のメンテナンスで参加する予定です。


お客様の斧を持ち込んで頂き、日常の手入れ方法などを実演したいと思います。
日時は秋も深まる11月3日(祝)
詳細は今後ホームページ等で案内されますので、要チェックです!
» ファイヤーサイド30周年イベント「薪火でつなぐ」

 
(隔月連載。次回の更新は12月上旬です)

 

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