フォトエッセイ「写風人の薪焚き日和」

風のように自由気ままに撮り続けたい…カメラマンの視点から綴る日々の薪ストーブライフ

真夏の薪割りと飴色の賜り物

春と夏はとても苦手な季節。
それぞれの季節の好き嫌いを書き出すと、やっぱり春・夏の嫌いが多い。
それでも夏の好きなことも多く、中でも爽快な空は一番。


特にモクモクした積乱雲は大好きです。
時に壮大なアルプスをも小さく感じさせてしまう巨大な積乱雲には圧倒されます。
同時に積乱雲は雷雨を伴うので、突然の夕立やゲリラ豪雨に見舞われることも。


そうなると積乱雲は様相を変え、こんな異様な空をも演出します。

そんな変幻自在な雲は、ある意味「炎」と似ているかもしれません。
川床に寝転び一日中空を眺めて過ごしていたいのですが、
夏とはいえボーッとしていられません。
そうなんです、まだ薪割りが残っているんです。
岐阜に住んでいるときは、とても真夏にやろうなんて思った事はありませんが、
今年からは仕事も引退し、外作業が日課のようなもの。
そんな日々の暮らしの中で、今回は真夏の薪割りをご紹介したいと思います。

朝夕涼しい南信州といえど昼間は激暑です。

岐阜ほどの暑さではありませんが、温度計と睨めっこしながらの外作業。


敷地内は木陰がないので、至る所にタープを張り巡らせて対処しています。


簡易的にどこでも手軽に張れるのがタープの特徴ですが、
強風に耐えられないことが唯一の難点です。
(すでに強風で1枚破れ、使い物にならなくなっています。)


先日の台風10号の際は、外壁に固定して強風に備えました。


日陰のない暑い日中では、タープ下でキンクラと薪割り機での作業。
駒ヶ根ではどんな手強い玉切りも斧一筋で頑張ってきましたが、
ついに機械に頼ることになりました。
それでも斧で軽く割れる玉切りは、比較的涼しい早朝や夕方に済ませています。

これまで割った薪はパレット8枚分に積み上げ、もうすでに満杯状態。
新たな薪の置き場所がないため、昨年末に割ったパレットの薪を軒下に移動。

その薪はまだ1年も経っていませんが、
樹皮を剥がしたり細めに割っているので、ある程度乾燥も進んでいるとみています。


試しに2つに割って含水率計を差し込んでみました。
井桁に積んだ薪は22%。
びっしり詰めて積んだ薪は平均で26%。
やはり風通しを良くした井桁の方が乾燥が早いです。
また割ってすぐに薪棚に積んだものはカビも生えやすくなっているので、
数週間は野ざらしにしてから積んだ方がいいようです。


出窓の下には2×4ログラックを1つ新調し、
すでにあったログラックから継ぎ足し7メートルほどの薪棚を作りました。
あっという間に完成したので、
時間をかけて薪棚を作れない方には、このログラックがお勧めです。
薪ストーブから近い軒下には4つのログラックがあり、すぐに燃やせる薪を積んであります。

薪の種類は、購入したナラの原木が8トン。広葉樹の雑木が4トン。
地元で伐採された白樺と桜が軽トラ3杯分。造園屋さんから頂いた雑木が軽トラ1杯分。
ご近所の森から赤松を軽トラ2杯分・・・と、
特に樹種の拘りはなく、何でもござれ!といった感じです。


先日、赤松を薪割りしていくと、飴色の節が出てきました。


これは肥松(こえまつ)と呼ばれ、樹脂が多く含まれている部位です。
松が枯れると重力によって松ヤニだけが下へと移動するので、
こうした枝の付け根や古い切り株の根元に松ヤニが詰まっている場合があります。


これらの肥松はお盆の時期に松明(たいまつ)として迎え火に用いられ、
古くから野外の灯火の具として使われてきました。
この松明、岐阜ではあまり見かけませんでしたが、
長野ではお盆前になると、どこのスーパーでも売られているので
まだ使われている地域もあるようです。


今回、赤松を割っていくと玉切り5個に1つの割合で、
枝の付け根から肥松が出てきました。
普段は節を避けて割るので、気がつかないこともありますが
焚き付け用に細かく割っていたので、これだけの量が見つけられました。
薪はナラしか燃やさないという拘りもなく、
いろんな樹種を割っていると面白いことに巡り会うものです。

薪ストーブユーザーの中でも、
肥松は知らないけどファットウッドやティンダーウッドなら知っている、
という方も多いと思います。
最近では、ブッシュクラフトの流行りから
キャンパーの間でも焚火の火口としても使われています。


ナイフで少しずつ削ってファイヤースチールなどで着火すると、
黒い煙をあげてブスブスと燃え上がります。
肥松は防水性にも優れているので軽く拭けばすぐに使えますし、
耐腐食性があるので長期保存も可能です。

もし赤松が手に入ったら飴色の賜り物を探してみてください。
焚き火でも薪ストーブでも、少し変わった着火が楽しめますよ。

 
(隔月連載。次回の更新は2019年10月下旬です)

 

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