田渕義雄・薪ストーブエッセイ きみがいなければ生きていけない

信州の山里に暮らす自然派作家がつむぐ薪ストーブをめぐる物語

Woodstove Visions 薪ストーブの夢

紅葉の季節。
木々の葉がシーズンの役割を終えて、すべてを土に帰そうとしている。
その間際に、木々の葉は紅に黄色にオレンジに燃える。
紅葉の色は、木の葉の緑が変色するんじゃない。
それは、光合成を終えた葉緑素が退色した後に現れた色模様だ。
それは、木の葉が生まれながらに持っていた色の表出としてある。
木の葉は緑の奥に艶やかな色を隠していたんだ…。
普段は化粧気がなくて目立とうとしないのだが、その内面に美しさを忍ばせている婦人みたいに。
だから、紅葉は綺麗なんだ。

緑は希望の色。紅葉は木々の夢の色。

我が庭の大きな白樺の木は、20万枚の化学プラントを稼働させて、夏の一日に300~400リットルの水を蒸発させていた。
光と水と二酸化炭素を主な原材料として、5~6人の人間が一年間に必要とする酸素を大気に供給しながら、その木質に炭素を固定化していく。
木材や薪は、固定化された二酸化炭素としてある。

そうであってみれば、この家で消費される薪代や国内材でわたしが作る家具と椅子は、先ずもってエコ減税の品目であるべきだよ。国内材で造る木の家も、高性能な薪ストーブも。
絶対にそうあるべきだ! どうしてそうならないのだろうか? 不思議だ。
我々は、不思議を不思議としてもっと口にすべきだ。

自分たちがどうありたいのか?自分たちのコミュニティーや国はどうあるべきなのか?
我々は、これからどんな社会を目指すべきなのか? 

我々に必要なのはビジョンだ。ビジョンとは先見のことであり、洞察力であり想像力のことだ。
それは、“ビジブルな夢”としてある。
夢のない政治、夢のない政治家。夢を持たない経済学者。夢のない起業家。夢を持たない市民、町民、村民。
ビジョンなき経済は犯罪であり、新鮮な経済なきビジョンは寝言だ。
夢は元気の元。
ビジョンがないから面白くない社会、ケチな時代になってるんだ。

色づいた木々の葉が舞ってる。
1エーカー(1200坪)の落葉広葉樹林は1,000万枚の木の葉を宿し、今それを土に帰そうとしている。
自然は惜しげない。
ねえー、そこのおばさん。♪枯葉散る夕暮れは 寒さこらえて……なんて、カラオケで歌ってんじゃねーよ。
枯葉散る夕暮れは、薪ストーブに火を起こして庭の馬齢著を茹でるんだ。
鹿が鳴いてる。秋は、鹿さんたちの恋の季節。
ねえー、そこの兄ちゃん。壊れやすい自尊心の殻に閉じ籠もってんじゃねーよ。
好きな女がいるんだったら、押し倒してみりゃーいいんだ。

微笑みと勇気持て。光と風と雲から新鮮なエネルギーを得よ。
薪エネルギーを夢として燃やそう! 

話が唐突に変わりますが、わたし仕事に精を出す決心をしました。天の邪鬼なんです。
景気が悪い悪いってみんなが言うでしょ。
みんながうつむいてるのを見ていたら、持ち前の反抗心が目覚めたんだ。
後ろ向きなんだよな、みんな。

夢のいた場所に未練残すな。
秋の夜空を見上げてみれば、星々はスイングしながら歌ってるじゃないか!
煙道から立ち上る煙は、空に向かって軽やかに羽ばたいている。

「仕事は楽しい!」。そう思うことにした。
楽しいことして、金がもらえるんならもっともっと仕事して楽しもうじゃないか。
気乗りしない仕事だってあるさ! でもそれは、釣れない鱒を釣ってる釣りの一日みたいなもんでしょ。
釣れる日もあれば、釣れない日もある。だから、釣りは面白いんだ。
仕事だって同じだ。

何かと言えば、高齢化、高齢化社会とマスコミがそう言う。
なにを猪口才(ちょこざい)な青二才。高齢者を馬鹿にすんじゃねーや。
森羅万象この世にあるものは、おしなべて齢を重ねていく。
山だって岩だってこの地球だって歳をとっていくんだ。
我々の社会は成熟に向かっているんだ。

伊達に齢を重ねてきたわけじゃない。顔や掌の皺は酸いも甘いも噛みしめてきた証拠だ。
中年婆向けの化粧品コマーシャルをテレビで見せられると、むかつく。
どうして、婆が若ぶんなきゃならないんだ。
婆や爺は自分の皺に誇りと威厳を感じるべきだ。

にしても、自分の齢に自信が持てない中高年が多いことも確かだ。
同世代人として、わたし怒ってます。日本の中高年者よ、背筋を伸ばしてもっとシャンとしなさい!
多くを体験してきた世代として、自分の義務と責任を果たしなさい。
オレンジ色の美しい熾き火となって、人生を煌々と燃え尽きようじゃないか。


「この世の暗さは影にすぎない。その影の向こう側、まだ手が届くところには歓びがある。
その歓びをつかめ」

フラ・ジョバンニ(15世紀イタリアの詩人) 

Photoes & Illustration by Yoshio Tabuchi

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(編集部より)
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