頓馬な政治と切れない包丁は危険だ
夏の盛りにケチな国政選挙があった。
我が選挙区においては、野党候補者がおしなべて愚かしく思えた。
で、ボイコット闘争とした。
バランスが全てだ!
健全な与党は、健全な野党によってこそ成り立つ。
与党の圧勝は善くない。それは、ファッシズムの温床となる。
「現政権のリーダーは、日本をイスラエル化しようとしている」。
近隣諸国はそう思っている。
現政権は、無い金を印刷しまくっている。
それは、我々とこれから生まれてくる子供たちの借金としてあるのだが……。
多くの大人たちは、それを喜んでいる。
現政権のスローガンは“日本を取り戻す”。
何を取り戻そうというんだろうか?
古代ギリシャの哲学者であるヘラクレイトスはこう言っている。
「同じ川を二度渡ることはできない。違う水が絶え間なく流れているからだ」
真夏の国政選挙はよくない。
夏だというのに憂鬱な気分だ。
こんな時には、心静かにして刃物を研ぐのがいい。
家中の刃物を研ぎ究めるんだ。
政治家と切れない刃物ほどおぞましい物はない。
そうだ、“おぞましい”と言う言葉は“鈍ましい”と書く。
鈍ましいとは、文字通り鈍いということであり、転じて愚かしいという意味。
鈍ましい刃物と政治は危険だ!
何故なら、切れないから強引な力が加わり、怪我を誘発するからである。
人の才能もそうだと思うが、切れない刃物という物はない。
どんなに安物の刃物でも錆び付いたそれであっても、
研ぎ究めることができれば同じようによく切れるものだ。
では、高級な刃物とそうでない物とは、どう違うんだろうか?
その違いは、切れ味の持続性にある。
切れ味の持続性は、刃物の鋼の“硬さ”に由来する。
この見地からすれば、セラミックの地金のその刃にダイヤモンド粒子を塗布したナイフが一番よく切れるのかも知れないし、切れ味の持続性にも優れているのだろう。
しかし、この刃物は“研ぎ直す”ことができない。
それは、使い捨てだ。
持続性に優れた硬い鋼を持った刃物には、難点がある。
硬すぎる鋼で造られた刃物は、研ぎにくいのである。
“良い刃物とは、鋼は柔らかく研ぎやすいのだが、
切れ味が良く刃こぼれしにくい刃物のことである”。
硬くないのだが、切れ味とその持続性に優れているという
“矛盾”を克服しているそれが、最高の刃物といえる。
チエンソーの切れ味は、「研ぎ七分、機械三分」といわれる。
それと同じ事が全ての刃物にもいえる。
刃物は使い手と砥石を選ぶ。
一万円の包丁は、それに見合った砥石の使い手あっての高級品である。
翻って言えば、100円ショップで買った包丁や鋏であっても、砥石の使い手次第で良く切れるようになるものだ。
刃物と砥石は一体の物としてある。
砥石は、砥石の母材と研磨材である砥粒と気泡から成っている。
刃物が砥石とぶつかり合うことで、砥粒と母材が削れる。
砥石が削れることで、砥石から離脱した砥粒と母材にある砥粒が刃物を削っていく。
砥石母材の性質(硬さや砥粒保持力)、砥粒の細かさ粗さ、気泡の多さ少なさによって、砥石の性格が決まる。
砥石には、天然砥石と人造砥石がある。
人造砥石は、樹脂やセラミックに砥粒材を練り込んで結合材で固めた物だ。
上質な天然砥石はほぼ掘り尽くされて、工業用としての使命は希薄になっている。
今は、人造砥石が業界を席巻している。
とはいえ、地史からの贈り物である天然砥石には、
地球の石の神秘が宿っていて、木工家を誘惑しつづけている。
で、高級な天然仕上げ砥石には1丁数万円の値が付く。
砥石には大きく分けて、荒砥石、中砥石、仕上げ砥石の3種類がある。
人造砥石はJIS規格により、粒度の表示が義務付けられている。
粒度は“#”で表示される。#80/100の砥石は、
177ミクロン(0,177㎜)直径換算の粒子からなる。
#2000では、5〜10ミクロンと定めらている。
天然砥石は天然の石であれば、その砥粒には巾があり経験値で取り扱われる。
荒砥(#80〜400)は、
刃の形状を作ったり刃直しに用いる粒度が一番粗い砥石。
最も身近で安価な荒砥は金剛砥と呼ばれる人造砥石。
粒度の粗い鉄の粉を、粒子の粗い母材に練り込んだ砥石だ。
中砥(#600〜2000)は、刃研ぎに用いる重要な砥石。
台所で使われるナイフや包丁なら、#2000の中砥で十分な仕上げ研ぎとなる。
仕上げ砥(#3000以上)は、中砥で刃研ぎした刃を更に研ぎ澄ます砥石。
木工用の鑿(のみ)や鉋(かんな)を仕上げるには無くてはならない砥石だ。
天然の仕上げ砥は、#5000〜万単位の粒度といわれる。
いずれにしても、仕上げ砥は高価な砥石だ。
砥石は、少なくとも荒砥、中砥、仕上げ砥の3丁が必要だ。
どの粒度の砥石を仕上げ砥とするかは、その刃物の使い手が決めることだが、
#2000の中砥を仕上げとするなら#1000位の中砥がもう1丁必要になる。
なんとなれば、#100の荒砥から#2000の砥石に移行することには無理無駄があるからである。
刃物メーカーの製造工程では、5種類以上の大型回転砥石が用いられる。
さて、これからがこの項の本題に入るところだが、それは次回に。
来月は、刃物の種類と刃物研ぎの実際を。
木工歴30年ならではの企業秘密的秘密兵器も初公開致しましょう!
追伸;きみの奥さんが料理好きではないのは、
きみの家の包丁が鈍ましい物だからだ。
研ぎ澄まされた包丁がそこにあれば、
人は誰だって包丁の切れ味を楽しみたくなるものです。
良く切れる包丁が、より豊かな食文化を育む。
そして、与党と野党が互いに切磋琢磨しながら国政を担う政治が、
国民をより善き道に導く。
Photoes by Yoshio Tabuchi