田渕義雄・薪ストーブエッセイ きみがいなければ生きていけない

信州の山里に暮らす自然派作家がつむぐ薪ストーブをめぐる物語

A Summer Day of Self-Sufficient Gardener 菜園家の夏

6時に起きた。早起きは三文の得。
三文は60円位かな。だったら、1年で二万一千九百円。
50年だったら百九万五千円。金利に福利も付くだろうから大金だね。

で、金持ちは早起き。
わたしの場合には、早起きが苦手だったから金持ちには成れなかった。
しかし、改むるに遅きはなし!

庭へ下りてネギとホウレン草を抜いてくる。
今年の葱は“松本一本葱”。
夜盗虫がその根本を囓るのは美味しい証拠だ。

夏の朝食は断然ご飯だ!
納豆に刻んだ葱をたっぷり添えた。
ホウレン草のお浸しと胡瓜の糠漬け。
それから、コカブの味噌汁で白米を美味しく頂いた。

納豆は細い木べらでネバネバになるまでかき混ぜると美味しい。
消化もよくなる。
「200回かき混ぜろ」と言うひともいるが、
「50~60回で十分だろっ」というのがタブチ君の意見。

朝がまだ清々しいうちに菜園の草掻きをこなした。
草掻きは毎日こまめにこなすべし。
雑草を大きくしてしまえば草掻きはもの凄く嫌な仕事に。
で、菜園の圃場はいつも綺麗か雑草だらけのどちらかだ。
「雑草だらけの庭みたいだ」という表現がある。
口先ばっかりで実行の伴わない人のことだ。

今日は、玉葱の種を播く日だ。
10月に定植するための苗を育てるんだ。
黄玉葱と赤玉葱の種を播いた。
葱苗の生育はベーリー・スロー。
10日以上前に苗床を作っておいた。
堆肥とストーブの灰を鋤き込み、毎日のようにレイキで表土を掻いた。
地中で発芽している雑草を事前にやっつけておくためだ!
そうしておかないと、苗床の雑草取りに悩まされるだろう。
年を重ねて、いろいろ経験してみて分かることなのだが、
どんな仕事でも下準備が大切なんだよな。

数日前に定植したキャベツの苗が順調に育っている。
苗のぐるりに木灰をまいておいたからね。
キャベツの苗を植えると夜盗虫がやってきて、その根元を食いちぎる。
そして、夜中キャベツの草液を吸い尽くして、昼間は土の中に姿をくらます。
夜盗蛾の幼虫は菜園家の敵だ!
この吸血鬼から野菜の苗を守る戦術、それはストーブの灰で苗のぐるりに結界をつくってやることだ。

♪アベマリア 邪悪な侵略者から我らのキャベツを守り賜え アベマリア♪
そう歌いながら、苗のぐるりにドーナツ状の結界を作るんだ。

夜盗虫は木灰の上を這い回るのが苦手だ!
で、キャベツの苗は侵略者の野望から守られるのである。
ドラキュラには十字架とニンニク。夜盗虫にはアベマリアと木灰。
木灰は雨に当たって溶けて、苗床にしみ込む。
そして、カリ肥料となって丈夫で元気なキャベツを育てる。

陽が高くなって、気温が急に上昇してきた。
高冷地の夏の直射日光は砂漠並みに強烈だ。
11時、昼食用の野菜を収穫して母屋に逃げ込む。
外は真夏日。
木立に囲まれた家の中は25℃。湿度60%。快適。

昼は、ズッキーニ・ボートにスパゲッティーを添えた。
バーモント風のランチだ。
3株のズッキーニが旬だ。食べても食べてもズッキーニは成りつづける。
少しでも油断すると大きなヘチマほどに育ってしまう。
なので、ほとんど毎日のようにズッキーニ・ボートを食べている。

☆ズッキーニ・ボートのレシピ

  • 24,5センチに育ったズッキーニを縦二つ切りにする。
    スプーンで芯を掘り取れば、丸木のボートのよう。
  • 塩を一つまみ落とした熱湯で固茹でする。茹ですぎないように。
  • 固ゆでしたボートに賽の目に刻んだトマトと生のオレガノを詰める。
    その上にピッザァ用のシュレッディッド・チーズを乗せてオーブンに。
    チーズがこんがりとろければ出来上がり。胡椒と塩はお好みで。

★ボートのお供は野菜スパゲッティー
なぜなら、ズッキーニを茹でた湯でスパゲッティーを茹でればいいからである。
なぜ野菜スパなのかといえば、菜園に野菜が溢れているからだ。

食前に白ワインを飲んだ。
アルコールの船に乗って1時間の午睡。
昼寝から目覚めて、渋々書斎へ。
書類を整理する。東京の出版社に電話。
パソコンを立ち上げて、1週間ぶりにeメールを開く。
ジャンクメールがいっぱいだ。消去消去。
それから、検索サイトでお勉強。
といっても、秋に定植するハスカップの情報を覗いてみただけだ。
オフィスワークは早々に終えて、木工室へ。
明日は木工に従事するつもりだ。そのための下準備をする。

夏の陽が傾いてきた。涼しい山風が谷を下りはじめた。
柴刈り機のエンジンをかけて、芝刈り。
この庭の芝を全部綺麗に刈り取るには小半日かかる。
いいんだ、毎日1時間刈ればそれでいいんだ。芝刈りは止めどない。

芝刈りはわたしのウォーキングだ。
最近の柴刈り機は自走式だが、それでも腰と上半身にも力が入る。汗をかく。
1時間の芝刈りは、1時間の山歩きに相当するアウトドア・アクティビティーである。
綺麗に刈り込まれた芝生に囲まれてある菜園を、うっとりと見つめる。
それは、薪小屋に積み込んだ自分の薪山をうっとりと見つめる眼差しと同じものだ。

夕食は、庭に降った枯れ枝で塩鯖を焼いた。
大根おろしをたっぷり添えた。
そういえば、ストーブで魚を焼くための自在鈎を作った。
焼き網を炉室にセットするための自在だ。

アンコールイントレピットの蟹目(アンダイアン)に焼き網の付け根を乗せる。
焼き網のハンドルを自在鈎の溝にセットする。
自在鈎には上下幾つもの溝が刻まれている。
炉室の火力に応じて焼き網の高さを調節することができる。

山桜の厚板を加工した、この“焼き網用自在鈎”は
使って超コンビニエンス(便利)。見て審美的。
秋になったら、ファイヤーサイド本社のカントリーストアーで売り出そうかしら(※)。


(※)こちらの自在鉤は2012年3月現在、
ファイヤーサイドZCOO-SHOPにて販売中です。

Photoes by Yoshio Tabuchi

 



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