ファイヤーサイドスタッフブログ われら薪焚人(まきたきびと)

中央アルプスの麓、標高800mの大自然より四季折々の話題をお届けします。

2013 Mar. 5

火を焚きなさい

カテゴリー: 文化

少し前になりますが、
信濃毎日新聞(略してしんまい)に載った
いのちの言葉~詩人・山尾三省(やまお さんせい)と信州~を読んで、
この詩を知りました。

山尾三省さんは屋久島に生きた詩人です。
氏にとって薪を燃やすことは生活に欠かせない営みだったそうです。

火を焚く行為は、なんとなく、懐かしい。
なんでかな?
その答えがじんわり心に沁みる美しい詩でした。

 

「火を焚きなさい」  山尾三省

山に夕闇がせまる
子供達よ
ほら もう夜が背中まできている
火を焚きなさい
お前達の心残りの遊びをやめて 大昔の心にかえり
火を焚きなさい

~中略

人間は
火を焚く動物だった
だから 火を焚くことができれば それでもう人間なんだ
火を焚きなさい
人間の原初の火を焚きなさい
やがてお前達が大きくなって 虚栄の市へと出かけて行き
必要なものと 必要でないものの見分けがつかなくなり
自分の価値を見失ってしまった時
きっとお前達は 思い出すだろう
すっぽりと夜につつまれて
オレンジ色の神秘の炎を見詰めた日々のことを

山に夕闇がせまる
子供達よ
もう夜が背中まできている
この日はもう充分に遊んだ
遊びをやめて お前達の火にとりかかりなさい
小屋には薪が充分に用意してある
火を焚きなさい
よく乾いたもの 少し湿り気のあるもの

太いもの 細いもの
よく選んで 上手に組み立て
火を焚きなさい

火がいっしんに燃え立つようになったら
そのオレンジ色の炎の奥の
金色の神殿から聴こえてくる
お前達自身の 昔と今と未来の不思議の物語に 耳を傾けなさい

 

「びろう葉帽子の下で/山尾三省詩集」より抜粋

 

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