シェルパ斉藤の八ヶ岳スタイル

八ヶ岳の手づくりログハウスを舞台におくる火にまつわる旅人的カントリーライフ

薪ストーブとハンモックチェア

今年も薪ストーブの季節がやってきた。
この連載でも書いたとおり、薪ストーブを使う前に煙突掃除をしないことには火を入れる気になれないのだが、それ以前にしなくてはならない室内の作業がある。

ソファーの配置換えだ。
わが家にはベッドがわりになる3人がけのソファーがあり、薪ストーブを使わない時期は薪ストーブの前にソファーを配置している。
このソファーを窓辺に移動して炉台の前を開けなければ、薪ストーブを使えないのである。
だったら最初からソファーを窓辺に置いておけばいいじゃないか。
そう思うかもしれないが、薪ストーブの前にソファーを置いておきたい理由があるのだ。

わがリビングは薪ストーブの向かい側の壁にテレビと120インチのスクリーンを設置している。
薪ストーブ側の棚にプロジェクターがあり、WOWOWやアマゾンプライムを利用してハイビジョンの映画を上映できるホームシアターになっている。
オーディオ装置もそれに合わせてレイアウトしており、薪ストーブの前に配置したソファーは、映画や音楽を楽しむベストポジションなのである。

そんなわけで薪ストーブのシーズン開幕後はソファー以外のイスを配置して映画を鑑賞することになる。
最も利用しているイスはスノーピークのTake!チェアだ。
その名は竹を意味しており、フレームに竹の集成材を使ったキャンプ用のイスだが、リビングに置いても違和感がない美しいデザインだし、座り心地もいい。
とくに背もたれ部分が大きくてゆったり寛げるTake!チェア・ロングは、映画鑑賞するのに最適なのである。

うちには通常のTake!チェア以外にカスタムモデルもある。
市販のTake!チェアには6号帆布が使われているが、それを特製レザーに変更した特注モデルだ。

製作してくれたのは、木工もレザーも得意なクラフト作家の真島辰也さん。
お洒落なだけでなく、実際に使いやすい作品を多く手がけており、Take!チェアをチームシェルパのオリジナルモデルに仕上げてくれた。
背もたれ部分にわがカフェのマークを着け、フレームがあたる部分は二重のレザーで補強。
また滑りやすいレザーの弱点をカバーするため、座位の部分には起毛したスウェードを施してお尻が滑りにくくしている。

その座り心地は抜群で、使えば使うほど体に馴染んでくる。
妻と僕、色違いで2脚作ってもらったのだが、レザーの伸び具合の違いで微妙に座り心地が変化してきていることにも味がある。

そんなお気に入りのTake!チェアだが、今シーズンは新たなイスを思いついた。
わが家はログハウスであり、薪ストーブの上はガッチリとした三角フレームのトラスがある。
そこにチェアタイプのハンモックを吊るせばちょうどいいことがわかったのだ。

もともとうちにはハンモックがいくつもある。
夏場は川辺の樹木に大型のハンモックを吊るしているし、ゲストハウスの縁側にはメキシコ製の手編みのハンモックも吊るしてある。
さらにカフェの入り口の梁には、ハンモックチェアを吊るしている。

そのハンモックチェアはうちから歩いていける距離にあった『ハンモック2000』というギャラリー兼ショップが販売していたモデルだ。
ゲストたち、とくに子どもたちに大人気で、長年愛用し続けたものだからところどころロープが擦り切れてしまい、同じモデルを買い直したくらい、気に入っている。

同じモデルをリビング用に加えようかと最初は思ったが、『ハンモック2000』は都内に移転してしまったし、前後に張り出した棒がリビングでは邪魔に感じるかもしれない(前後の張り出し棒があるから、座り心地がいいことも事実だけど)。
ネットを検索して検討した結果、前後ではなく左右にだけ棒が張り出した布タイプのハンモックチェアを購入することにした。

ハンモックチェアをトラスに吊るすフックは、軽トラにオートバイなどを積載する時に使うタイダウンベルトだ。
強度は抜群だし、ベルトの長さを簡単に変えられることも都合がいい。
ハンモックチェアを吊るして座ってみたが、その座り心地は想像以上だった。
全身が包み込まれる安らぎがあるし、やんわりと動くファジーな揺れも気持ちがいい。

吊るした場所も最適だった。
薪ストーブの温かみが背中からお尻にかけてじんわりと伝わる。
温泉に浸かっているような温もりだ。
猫のポノを抱き上げたらポノは僕に抱かれたまま眠ってしまい、背中は薪ストーブ、お腹は猫の温もりにサンドイッチされて、この上ない幸福感を味わった。

妻も僕も大満足のハンモックチェアだが、難点がなくもない。
座り心地がよくて、薪ストーブの温かみも感じて、適度に揺れるものだから、ここに座るとつい居眠りをしてしまう。
プロジェクターで映画を観ていたのにいつのまにか寝てしまった、ということが立て続けに起きた。
それはそれで、幸せな時間でもあるんだけどね。

Photo:シェルパ斉藤
Illustration:きつつき華

*隔月連載。次回の更新は2019年1月下旬です。

 

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