シェルパ斉藤の八ヶ岳スタイル

八ヶ岳の手づくりログハウスを舞台におくる火にまつわる旅人的カントリーライフ

オープンデッキ再建の道 〜建築編

» オープンデッキ再建の道 〜解体編

30年もつオープンデッキをどう作るか?
そのためには、以前のオープンデッキがどのように朽ちたのかを知る必要がある。
ポイントはデッキ材と根太の接触面だ。
デッキ材と根太が接する部分は雨が降ると水が入り込む。
密着しているから濡れたら乾きにくく、水分を含んだ状態が長く続き、次第に木材が腐食していく。
わが家のオープンデッキは犬たちの居住空間でもあり、埃以外に犬の毛が詰まるからより乾きにくく、腐食しやすい。

耐水性に優れるウリンやアマゾンジャラといった木材を使えば腐食は防げるだろう。
でも高価だし、材質が硬いために加工が面倒だ。
そこで考えたのは、単管を根太に使うスタイルだ。『ぼくらのスロープ計画』で単管を骨組みに使ったが、施工も使い勝手も思いのほか良好だった。
単管を根太がわりに組んでその上にデッキ材を乗せれば、水はけはいいし、そもそも金属の単管は木材のように腐食しない。
おそらく30年はもつだろう。
ダメだったら、そのときはまたやり直せばいい。

方針が固まったところで、近くのホームセンターに軽トラで出かけ、単管やジョイント、ベースなどをまとめ買いし、自宅の庭に運んだ。
5m、3m、2m、それぞれの単管をディスクグラインダーでカットし、ジョイントで組んでいく。

以前のオープンデッキを支えていた柱や梁、桁はそのまま残してあるので、それに添わせて単管を組んだ。
ゼロから測量して設営する手間がかからないし、工事現場の足組に見える単管のフレームを梁や桁がうまく隠してくれる。

フレームや根太を組むときに役立ったのは、軽トラだ。
荷台が足場として便利なのだ。
脚立よりも安定しているし、荷台は広いからいちいち動かす必要もない。
おかげで予定よりも早い日数で単管のフレームを組むことができた。

フレームを組み終えたら、次は屋根材の設営だ。
オープンデッキの下はガレージや薪置き場にちょうどいい。
屋根材はポリカーボネイトなどの化学素材ではなく、安くて耐久性に優れるトタンの波板を使うことにしたが、思い通りにはならなかった。

近くのホームセンターで売られているトタンの波板はすべてブルーの色なのである。
ログハウスとのマッチングを考えれば落ち着いた色のブラウンがいいのだが、ブラウンは店頭に置いてない。
取り寄せ可能ではあるけれど、10枚単位でなくてはならないとのこと(僕が必要なのは7枚だ)。
別のホームセンターに出かけたら、取り寄せに2週間近くかかるという。
少し離れたホームセンターにはブラウンが置いてあったが、中身は同じなのにブルーに比べて倍近い料金設定なのである。

ブルーはいやだなあ‥‥。
でも2週間も待ってられないし‥‥、倍のお金を払うのもアホらしいし‥‥と悩んだが、妻に言われて気づいた。
「何色でも関係ないわよ。上にデッキ材を張ったら見えなくなるんだから」
「いや、それはわかってるけど、正面からだと屋根が見えちゃうでしょ」
「大丈夫よ。屋根の勾配を緩やかにして外枠の板で隠すようにすれば」
「なるほどね」

屋根の勾配が緩いと雪が降ったときに厄介だが、デッキの下の屋根だから雪が積もることはない。
デッキ材の隙間から落ちる雨しか、この屋根には当たらないのだ。
妻のアドバイスどおり、勾配を緩くして外枠の板で覆うような設計にしてブルーの波板を打ちつけ、ガレージに仕上げた。

このガレージにはいま、軽トラを駐車しているけれど、いずれはここに別の車をとめたい。妻も僕ももうすぐ還暦だ。
ふたりの還暦のお祝いに、赤いちゃんちゃんこではなく、赤いスポーツカーを買おうと考えている。
かつてこのガレージにはホンダの軽オープンカー、ビートを駐車していたけれど、あの頃のようにもう一度ふたりで赤いスポーツカーのドライブを楽しみたいのだ。

デッキ材は、水に強いとされるウエスタンレッドシダーの2×6材を考えていた。
ウエスタンレッドシダーの2×6材はホームセンターでも売られているけれど、最長のサイズは12フィートの360cmだ。
うちのデッキは長さが455cmあり、12フィートを使う場合は途中で継ぐことになる。デッキ材と根太の接触面と同じく、デッキ材の継ぎ目も腐食しやすい箇所なので、ホームセンターで購入するのではなく、近所の建材屋に16フィートを発注して自宅まで配達してもらった。

高くついたけど、配達された2×6材はねじれが少ない良質なものばかりだった。
20本の2×6材、すべてを同じサイズにカットして、ステンレスのビスで根太に打ち込んでいく。
猛暑の日々が続いてたけれど、目に見えて進む作業はやりがいと達成感があり、僕は汗を滴らせつつも夢中になって取り組んだ。

これまでもデッキをいくつか築いてきたけれど、完成したばかりのデッキは土足で上がることにためらいを感じるほど美しい。
カフェのオープンデッキもウエスタンレッドシダーの2×6材で作ったが、完成してしばらくは靴を脱いで寛ぐ『ちゃぶ台デッキ』にしていたくらいだ。

今回のオープンデッキの美しさもそれに匹敵する。
でもここは僕のラジオ体操のステージでもある。
完成した翌朝、さっそくここでラジオ体操をしたが、これまでとは違う感覚のラジオ体操となった。
気持ちの問題だけでなく、実際に体操がしやすいのである。
というのも、単管もウエスタンレッドシダーのデッキ材もガチガチに固定されていないから、飛んだり跳ねたりすると、デッキがやんわりとしなる。体験したことはないが、オリンピックの体操の床に似たしなやかさが新しいオープンデッキにはある。

毎朝のラジオ体操が前よりも楽しくなった。
今日も僕はこの場所で犬に見守られて心地いいラジオ体操を楽しんでいる。
近い将来、このデッキの下に赤いスポーツカーが来ることと、これから30年間この場所でラジオ体操ができることを願って。

 
Photo:シェルパ斉藤
Illustration:きつつき華

*隔月連載。次回の更新は2018年11月下旬です。



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