シェルパ斉藤の八ヶ岳スタイル

八ヶ岳の手づくりログハウスを舞台におくる火にまつわる旅人的カントリーライフ

オープンデッキ再建の道 〜解体編

毎朝ラジオ体操をしている。
6時30分に放送されるNHKラジオの番組に合わせて体操をすることが
朝の習慣になっている。
朝起きて顔を洗うようなもので、
毎朝同じ時刻にラジオ体操をしないことには一日がはじまらないのだ。

旅に出たときも、上京したときもラジオ体操を怠りはしない。
適当な場所を見つけて持参したポータブルラジオでラジオ体操をしているが、
やっぱり家でするラジオ体操が一番気持ちいいし、落ち着く。
家でラジオ体操をする場所は、犬たちが暮らすオープンデッキだ。
見晴らしがよくて森からの風薫るオープンデッキは、
ラジオ体操をするのに最高のステージなのである。

オープンデッキは既存のウッドデッキを拡張しようと、
ログハウス完成から約5年後に妻とふたりでつくりあげた。
サイズは約4.5m×3m、地面からの高さはほぼ2m。
屋根がないから開放感は抜群だ。
ラジオ体操以外にも、ホームパーティーの場としても犬と寛げるリビングとしても居心地がよく、わが家のとっておきの場所になっている。

しかし、開放感と引き換えに劣化は早かった。
定期的に塗装はしたが、風雨に晒されっぱなしの状態だし、2頭目のレトリーバー、サンポが7頭の子犬を出産したこともデッキには悪影響を及ぼした。
子犬たちはデッキのあちこちで排泄をしまくる。
そのたびにホースで水を流して掃除したものの、
犬の毛とともにデッキ材や根太にこびりついたりしたことで老朽化が進んだと思う。

腐敗したデッキ材を張り替えたり、もろくなった根太を補強したりして何度も補修を繰り返してきたが、それも限界が近づいた。
ラジオ体操でジャンプをするたびにデッキ全体が揺れ動き、
ついにはデッキの板が抜け落ちる箇所も出現した。

どうしよう?
もう一度作るとなれば、それなりの手間と時間とお金が必要となる。
もともとある屋根付きのデッキは支障ないから、再建の必要はないかもしれない。
子供たちが巣立った夫婦ふたりの生活だし、屋根付きのデッキでもラジオ体操ができる広さは十分にあるので生活に窮屈を感じることはない。

でも、再建することにした。
心地いい暮らしを求めず、安易に縮小するリストラ案なんて、僕のライフスタイルにはそぐわない。
お気に入りのオープンデッキなんだから、多少のお金がかかろうが、時間がかかろうが、もう一度手間ひまかけてつくり直そう。
どんな要因でデッキが劣化したのかわかっているんだから、その対策を施したオープンデッキを今度はつくれるはずだ。
ラジオ体操をするためにオープンデッキをつくり直したなんて、自分らしくていいんじゃないか、と思うようになった。

上の写真はオープンデッキの劣化が進行する以前の姿だ。
オープンデッキの下には、数年前に手放してしまった軽のオープンカー、ホンダ/ビートが収まっており、ビート以外にも薪が収納されている。
オープンデッキ完成後、この下に屋根を張ればガレージになるし、
薪置き場にもなると考え、根太の下に屋根材を張ったのである。
再建後もオープンデッキの下はガレージと薪置き場にするつもりだが、
今度は先に屋根を張り、そのあとにデッキの製作にとりかかろうと思う。

デッキ解体に向けて最初の作業は、
犬たちが解体現場に来れないように柵を施すことからはじめた。
犬たちは居住スペースが狭まれてしまうが、
それでも屋根下のデッキの面積は30㎡以上ある。

柵を設置したら、デッキ材を一枚ずつ剥がす。
ステンレスの釘やコーススレッドで固定してあるのだが、
デッキ材も根太も劣化しているため、あまり力を入れずに抜くことができた。
よくぞここまで保っていたな、と思えるくらいの状態だった。
デッキ材を剥がした根太の姿は、あちこちに補修の痕跡が残っており、百戦錬磨の老将をイメージさせた。

根太を固定していたのは、ログハウス建築で使用して余ったアメリカ製の細長い釘だ。
2×6材を立てて打ち込めるほど長く、柔軟性もあって固定に最適だと思って打ち込んだはずだが、当時は解体のことなど考えてもいなかった。

頑丈で長く保つデッキをつくろうと意気込んでいたから、簡単には外れない。
特大のバールを使って1本ずつ根気よく抜いていったが、その作業が面倒くさくもあり、誇らしくもある。
18年前の自分に対して
「よくがんばった。いい仕事してるぞ」と褒めてあげたい気分だ。

剥がしたデッキ材は、焚きつけとして使えそうな材は適度な長さにカットして薪置き場に保管し、ボロボロに劣化してどうしようもない材は、ドッグランにあるファイヤープレイスで焚き火をした(猛暑が訪れる前の話である)。

粗大ゴミ、あるいは産廃として処分したら費用的にも労力的にも大変な作業になるが、自分の家で焚きつけとして使ったり、焚き火で灰にできるなんて、DIY好きにとっても火のある暮らしは恵まれた環境だと思う。

補強の木材として所々に2×4材をコーススレッドで打ち込んであったが、
前述のように解体のことなんて頭になかったから、
材に食い込ませてきつく打ち込んである。
それを外すにはちょっとしたスキルが必要となる。
不用意にインパクトドリルを回すと、
ネジの頭の窪みをなめてしまって外せなくなるからだ。

インパクトドライバーのビットを食い込んだ穴に突っ込み、
感触と勘でビットの凸部とコーススレッドの凹部がかみ合うようにセットし、
インパクトドリルを押さえつけて逆回転させる。
一発でコーススレッドが外れたときは、太い薪を一発で割った時に通じる快感が得られる。

仕事の合間に作業を進めたから、スローなペースになってしまったが、
18年前に作ったオープンデッキはまだ使える柱を残してきれいに解体することができた。
ここからはこれまでの経験を生かして、新たな気持ちでオープンデッキづくりに臨む。

目標は30年もつオープンデッキ。
30年後は自分が寿命を迎えるころだから、生涯使えるオープンデッキに仕上げたい。
(次回へつづく)

Photo:シェルパ斉藤
Illustration:きつつき華

*隔月連載。次回の更新は9月下旬です。

 



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