シェルパ斉藤の八ヶ岳スタイル

八ヶ岳の手づくりログハウスを舞台におくる火にまつわる旅人的カントリーライフ

ドッグランに必要なもの

犬がノーリードで駆け回れるドッグランが、わがカフェ『チームシェルパ』にはある。高速道路のSAや道の駅などにはフェンスで囲われた芝生のドッグランが併設されていたりするが、うちのドッグランはあんなに立派ではない。
野原を網で囲っただけの簡素な広場だ。でも犬にそれ以上の設備はいらない。
目を輝かせ、全力でボールを追いかけてドッグランを駆け巡るセンポが、そう語っている。

ドッグランはカフェ『チームシェルパ』を作ったときに設営した。
僕は犬と野山を歩いて旅する『犬連れバックパッカー』だから、『チームシェルパ』に来るゲストも犬連れが多い。
すべての犬たちが心おきなく遊べる場を提供しようと、隣接した土地の地主に交渉したところ、心優しき地主のFさんは快諾してくれた。
広さは200坪程度だろうか。
Fさんはその土地に杜仲の木を植えていたが(葉が杜仲茶になるのだ)、もう収穫しないから自由に使っていい、と無償で土地を貸してくれたのである。

一般的なドッグランは金属のフェンスできっちり囲われているが、フェンスで囲う構造がどうも好きになれない。
そもそも借りている土地は農地だから、建造物をつくるわけにもいかないのだ。
僕が目をつけたのは、ホームセンターで売られてい防獣ネットだ。
「猪や鹿などの動物よけに最適」と宣伝された防獣ネットを購入し、杜仲の木や打ち込んだ杭に縛りつけて全面を囲った。

作業時間は2時間足らず。
費用も安く済んだし、視覚的にも目立ちにくく、柔らかなイメージもいい。
うちの犬たち(当時は黒ラブのサンポと、その娘のトッポがいた)も楽しく利用したが、そのドッグランは1週間足らずで崩壊した。
友人のNくんが黒ラブを連れてきてドッグランで遊んだのだが、そのあとNくんがカフェでコーヒーを飲もうとドッグランを離れたら、ドッグランに置かれた黒ラブはネットを突き破って主人の元へ駆けて来たのである。
犬に簡単に破られてしまうなんて、猪や鹿の動物よけにならないじゃないか、と笑ってしまったが、別の方法を考えなくてはならなくなった。

しかし、うちの犬たちは外に放してもどこかへ行ったりはしないし、呼べばすぐに僕の元へ駆け寄ってくるので急いでドッグランを囲う必要もない。
ゲストたちの犬に関しては自主性を重んじてノーリードで遊ばせてもらっていたが、この自由すぎるドッグランでは済まされない状況が生じた。

義父が亡くなり、妻の実家で飼っていた柴犬のカイくんをうちで引き取ったのだが、カイくんは脱走癖があった。
ノーリードで庭に放すと「わーい、自由だ!」といった感じで敷地の外に駆け出してしまうのである。
自由になったカイくんは他人の畑に入ったり、車が走る県道を横切ったりする。
最終的には家に帰ってくるものの、そんな悪さをするものだからカイくんを外に出すときはリード装着が絶対条件になってしまった。
でもカイくんにもノーリードで野原を駆け回らせてあげたい。
そう思って再びドッグランを設営することにした。

役立たずの防獣ネットのかわりに思いついたのは、ワイヤーメッシュだ。
ベタ基礎やを壁をコンクリートで固めるときに強度を増すために使う鉄筋で、建築用品としてホームセンターなどで売られている。

種類はいくつかあるが、細い鉄筋を使ったワイヤーメッシュなら曲げたり、切断する加工が容易だし、ネットのように犬が突き破るようなこともない。
1×2mのサイズで1枚400円程度という安さもありがたい。
まとめて50枚ほど買って軽トラで運び、杜仲の木や杭に針金を使って固定した。

出来栄えは予想以上だった。
強度は抜群なのに、細いワイヤーだから目立たない。
時間が経つと錆びてしまうけど、むしろ土や樹木の色に近くなってより目立たくなる。
ワイルドなわが家のドッグランのフェンスとして最適な素材だった。

新たなドッグランはゲストたちにも好評だった。
この広場はキャンプサイトであり、直火の焚き火ができるフリースペースでもある。
犬連れでテントを張れるキャンプ場はたくさんあるけど、ノーリードで犬と自由に過ごせて、焚き火ができるキャンプ場はなかなかない。
犬連れキャンパーにとって理想的な遊び場だと思う。

とはいえ、農地を利用したドッグランだから弱点もある。
雨が続いたり、冬になって霜柱が立つようになると地面がぬかるんだ状態になってしまうのだ。
芝生にすれば解決するだろうが、そこまで施す金銭的余裕もない。
樹木を粉砕したチップを敷けばいいんじゃないかと思い、庭師であり木工家である知人に相談したら、近隣の業者をいくつか紹介してくれた。
業者Aは2トンのダンプカーで家まで運んでくれて、チップの質もいいが、値段もそこそこする。
一方、業者Bは自分で取りにいかねばならず、チップの質も劣るけど、格安で済む。

貧乏性の僕は業者Bを選び、軽トラでチップを製作している現場へ向かった。
軽トラの両サイドにコンパネを立て、そこにシャベルカーでチップを盛ってもらい、シートを被せて固定する。
量はたっぷりあるけど、樹木を粉砕したチップだからそれほど重くない。
春休みで帰省していた次男とともにとチップを撒く作業を行なったが、軽トラ1杯で750円という安さに南歩も驚いていた。

チップを撒いたドッグランはぬかるみが解消され、ますます使い勝手がよくなった。チップはいずれ土に還ってしまうだろうが、そうなったらまた軽トラで買ってきて撒けばいいのだ。
こうして満足できるドッグランが完成したが、このドッグランはさらに進化を遂げていく。
犬だけでなく、子供も自由に火遊びができる『シェルパーク』へと発展していくのだが、その話は別の機会に紹介しようと思う。
焚き火ができて、犬がノーリードで駆け回れて、さらに隣の川で水遊びができるわがドッグランに、この夏は遊びに来ませんか。

Photo:シェルパ斉藤
Illustration:きつつき華

*隔月連載。次回の更新は2019年9月下旬です。

 



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