シェルパ斉藤の八ヶ岳スタイル

八ヶ岳の手づくりログハウスを舞台におくる火にまつわる旅人的カントリーライフ

山小屋パーティーは餃子パーティー

山岳雑誌『PEAKS』で『シェルパ斉藤の山小屋24時間滞在記』という連載をしている。タイトルのとおり、全国の山小屋に出かけて24時間滞在するレポート企画だ。
2010年にスタートして昨年の秋に100回を迎えたが、その100回記念企画として山小屋のスタッフをわがカフェに招いて焚き火パーティーを開催した。

取材に協力していただいた山小屋のスタッフに感謝の気持ちを伝えたかったし、アウトドアのスキルが高くて個性豊かな人々が集まれば楽しいパーティーになるに違いない、と思って開催したのだが、盛り上がりは予想以上だった。
あまりに楽しかったものだから「来年もまたやろう」の声が参加者の誰ともなく上がって、今年の秋は『連載112回記念』として山小屋パーティーが開催されることになった。

通年営業の山小屋もあるけど、多くの山小屋は10月か11月上旬に小屋締めとなる。「今シーズンもお疲れ様でした」の慰労の意味合いを込めて、今年は11月12日に開催することにした。
1年前のパーティーが終わるとき、月齢カレンダーをチェックして「来年は満月の夜に開催しよう」という話になったのだ。
そのねらいがあたって、秋晴れとなり、満月と焚き火が美しいパーティーが幕を開けた。

山小屋パーティーは餃子パーティーでもある。
「生餃子を持参すること」が参加のルールだ。
餃子は酒(とくにビール)のつまみとしても最高だし、主食を用意しなくても餃子だけで食事が完結する。
酒飲みが集まるラフな焚き火パーティーにちょうどいいメニューなのだ。

山小屋のスタッフがそうであるように、持参してくる餃子も個性豊かだ。
手作り餃子もあれば、近所の中華料理の餃子や人気店の餃子、デパ地下の餃子など、種類が異なる餃子が今年もたくさん集まった。

集まった生餃子は、我が家の自慢である厚手の鉄板と炭火を使って焼き上げるが、今回は火床に工夫を凝らした。
これまではスノーピークの焚き火台か、モノラルのワイヤフレームを火床にしていたが、ワイヤフレームのメッシュは酷使したため穴が空いて破れてしまったし、スノーピークの焚き火台は長時間使っていると灰が溜まって空気の通りが悪くなって次第に火力が落ちる。

そこで買い足したのがロストルだ。
これをスノーピークの焚き火台の中間に敷いてその上で炭を燃やせば、燃え尽きた灰が網の下に落ちて空気が通るから、炭を足し続けても常に安定した火力を得られる。
スノーピークの純正品ではなく、頑丈なステンレス製のユニフレームのヘビーロストル(MADE IN JAPANの刻印が誇らしげに感じる)をスノーピークのLサイズの焚き火台に設置したら、サイズも質感もジャストフィット。
焼いては食って、食っては焼いて、を延々と繰り返す餃子パーティーにはぴったりの鉄板燃焼システムが完成した。

「では、次はKさんの餃子でーす!」と鉄板にみんなで餃子をぎっしり並べ、少量の水を加えたらすばやくステンレスボールを利用したフタをかぶせる。
「夏の〇〇小屋だな」「うん。ぎっしり詰め込まれてる」といったジョークは山小屋のスタッフならではだ。
蒸らしが終わってフタを開けた瞬間は誰ともなく「オーッ!」の声が上がる。
厚手の鉄板と炭火は餃子を焼き上げるのに最強のコンビネーションだ。
表面の皮がカリッとして、中身がジューシーの完璧に焼きあがった餃子を次々にたいらげては、「では、次はYさんの餃子でーす!」というように何度も何度も餃子の宴が続いた。
食べた餃子は15種類、600個以上を焼き上げてみんなの胃袋に消えた。

今回集まった山小屋のメンバーは、北アルプス、南アルプス、八ヶ岳、御嶽、尾瀬というように山域はバラバラである。
それぞれの山域で交流する機会はあっても、別の山域の山小屋と接する機会はあまりない。
初めて顔を合わすスタッフたちが自然と打ち解けて笑顔になる姿を目にすると、このパーティーを開催した僕もうれしくなってくる。

かつて連載でも書いたが、山小屋で働く女性は理想的な結婚相手だと僕は思い込んでいる。
限られた水や食材で料理を素早くつくるスキルを身につけているやり繰り上手だし、お金の無駄遣いもしない。
毎日風呂に入れず、化粧がむずかしい環境にあってもお洒落心は忘れない。
登山者を優しく迎えるホスピタリティーが身についていて、性格も概して明るい。
健康体であり、重い荷物を背負って山道を歩けるたくましい体の持ち主でもある。
とくにこのパーティーに集まった女性たちは強さも際立っているな、と感心した。

最後に宣伝をしておくと、『PEAKS』で連載している『シェルパ斉藤の山小屋24時間滞在記』はイラストレーターの神田めぐみさんも同行して、それぞれの山小屋の詳細な間取りイラストを描いてもらっている。
過酷な自然環境に建てられた山小屋は、随所に創意工夫が見られるし、山の地形に合わせて作られているから同じ建物が存在しない。

写真では表現しにくいオリジナリティーをイラストで詳しく紹介しようとはじめた連載だが、他の山岳雑誌にはなかった山小屋企画だから評判もいい。
訪れていない山小屋がまだあるので、連載を続けていこうと思うし、来年の秋は『連載124回記念』の山小屋パーティーを開催するつもりでいる。

Photo:斉藤政喜
Illustration:きつつき華

*隔月連載。次回の更新は2020年1月下旬です。



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