シェルパ斉藤の八ヶ岳スタイル

八ヶ岳の手づくりログハウスを舞台におくる火にまつわる旅人的カントリーライフ

秋の夜長の外メシ

外メシのおいしい季節がやってきた。
といっても、レストランに出かける外食ではない。
八ヶ岳スタイルの初回でも紹介したが、わが家は庭やウッドデッキで火を使って楽しむ食事を外メシと呼んでいる。
外メシはオールシーズン、仲間が集まったときや新鮮な食材が手に入ったとき、あるいは気が向いたときに楽しんでいるが、火が恋しくなって食欲も増す秋の夜長の外メシは格別だ。

外メシで活躍するのは、能登半島の天然珪藻土から職人が切り出した角型七輪と三河の瓦職人が手づくりしている黒七輪だ。
そのふたつは3年前に紹介済みなので、もうひとつの自慢の逸品、ハンドメイドの大型鉄板を披露しよう。

平面のサイズは60cm×64cmもあり、四辺の縁が1cm立ち上がっている。
誇るべきはその厚さだ。
3mmの重厚な鉄板を使っているため、耐久性に優れるし、熱がじんわりと伝わって食材が焦げにくい。
さらにコタツのように鉄筋の4本脚がついているため、焚き火の上に安定させることができる。
薪や炭の遠赤外線効果によって鉄板焼きのあらゆる料理がおいしく仕上がるのだ。
どんな高価な電気ホットプレートだろうが、薪や炭の火を使うこの重厚な鉄板にはかなわない。

デッキで鉄板料理をするときは焚き火台が重宝する。
脚の長さが34cmなので、スノーピークのLサイズの焚き火台がぴったり入る。
薪や炭を足すときは焚き火台の脚を持って引きずり出し、足し終えたら焚き火台を戻して火をコントロールするスライド方式だ。

でも最近はモノラルの焚き火台、ワイヤフレームを鉄板用として使うようになった。
スノーピークの屈強な焚き火台と違って、こちらはコンパクトに収納できて重量は約1kg。
バックパッキングの旅にちょっとつらいけど、自転車やオートバイの旅なら楽に持っていける重量だ。

オリジナルのモデルは特殊耐熱クロスを火床に使っていて、熾き火中心の自然のスタイルに近い焚き火が楽しめるが、鉄板に使うときはオプションのメッシュ素材の火床に交換している。
メッシュは空気が通るため燃えやすく、火力が強いのだ。

プレートを組み合わせたスノーピークの焚き火台は、鉄板を被せると空気の通りが悪いために煙が出やすい。
鉄板で調理をする人が煙で燻されてつらい目に遭うが、メッシュのワイヤフレームを使うと煙も軽減できる。
薪でも炭でも白い灰になるまで完全燃焼してくれる。
また脚の高さも低いために火床と鉄板の隙間も開いていて、途中で薪や炭を足しやすいという利点もある。

じんわり焼くときは炭を使い、強い火力が欲しいときは建材などの木っ端を使う、というように燃料を使い分けている。

この鉄板でつくる焼きそばは「冷めてもおいしい」と好評だが、娯楽性も含めて最も楽しめる鉄板料理は、餃子だ。
スーパーで売られている市販の餃子でもこの鉄板で焼くと中身はジューシーで、皮がパリッとしたおいしい餃子に仕上がる。
真っ黒に焦げることがほとんどない。
焚き火の底力だろう。
適当に焼いてもいい具合に仕上がるのだ。

仲間が集まるときは、手作りの餃子も仕込んだりする。
野菜を切り刻み、しっかり捏ねて寝かせたあと、自分たちで皮に包んで焼く。
具がはみ出ていたり、きちんと閉じていなかったり、人によって包み方のうまい下手もあるけれど、それも手作りならではの味だ。

鉄板が大きくて余裕があるため、焼き上がった餃子は鉄板の隅に置いておくこともできる。
時間が経っても冷めずにおいしく食べられるし、皿を使う必要もない。
みんなで鉄板を囲って食べる、そのスタイルも楽しい。

なお、焼きそばにせよ、餃子にせよ、鉄板料理では大型のヘラと特製大型ボウルが役立つ。
ヘラはかき混ぜたりひっくり返したりするときに便利だし、両手で2個操ることで鉄板料理気分が盛り上がる。
また大型ボウルを鉄板に被せれば、焼きそばも餃子も簡単に蒸らすことができる。
ヘラは市販されているが、大型ボウルはホームセンターで売られているステンレスのボウルに穴を開けて取手をつけた。
直径38cmもあり、一度に大量の餃子や焼きそばをカバーできる優れものなのだ。

昨年は家をつくりはじめてちょうど20年ということで、チームシェルパ(わがカフェの名前でもあるが、家づくりに関わってくれたわが良き仲間たちを意味している)のメンバーとともに、20周年パーティーを開催した。

パーティーの参加ルールとして呼びかけたのは「生の餃子を持って来ること」である。
市販の餃子でもいいし、自分たちで具を捏ねて包んでもいい。
みんなで火を囲んで鉄板で焼ける餃子を調達してくるようにルールを課した。

すると、さまざまな餃子が集結した。
デパ地下の餃子、餃子専門店の餃子、中華料理屋に頼んで分けてもらった餃子、親子で包んだオリジナル餃子など、バラエティー豊かな餃子パーティーが開催された。

「最初はシンヤの餃子から」「はい、次はウッチーの餃子!」というように次々と鉄板で焼いて、みんなで鉄板を囲んで焼き立てを食べる。
具の内容も味付けも異なるし、皮も薄かったり、もっちりとしていたりとさまざまだ。
でもどの餃子もおいしくて、ビールもすすむ。
持ち寄った300個以上の餃子はすべて焼かれて、みんなの胃袋に消えた。
お腹も心も満たされた、充実した20周年パーティーになった。

ところで、この鉄板。
どこでどう手に入れたのかを最後に教えよう。
わが家をつくっているとき、わが家族とチームシェルパの面々は現場から数キロ離れた借家で暮らしていた。
その借家と現場の間に小さな鉄工所があり、僕らはときどきそこに立ち寄って家づくりに必要な部品などを発注した。

鉄工所の愛称は「ぼーや」という。
その意味も字も知らない。
屋号かもしれないし、主人が昔から坊やと呼ばれていてそれが定着したのかもしれない。詳しくは知らないけど、地元の人々から愛されているし、腕が確かな信頼できる職人であることは間違いない。
「こんな感じのものが欲しいんだけど……」とお願いすると、僕らが望む以上の品を仕上げてくれるのだ。

たしか、家づくりが一段落して庭にファイヤープレイスをつくったときだったと思う。
妻が「焚き火で使える大きな鉄板を作ってもらいたいんですけど」とリクエストしたら、ご主人は「こんな感じのやつか?」と、鉄工所の隅に置いてあった脚つきの鉄板を見せてくれた。
庭でバーベキューをするときのために作ったオリジナル商品だという。
気に入った妻が「そういうのです!」とお願いしたら、「これでよけりゃー、ゆずってやるよ」とほんの2千円程度で譲ってくれたのである。

それがこの鉄板なのだが、さすがは職人のハンドメイド。
手に入れてから20年以上経つというのに、どこも錆びていないし、ゆがんでもいない。
しかも長年使い込んだおかげで油がしみ込んで、一流の料理人が愛用している中華鍋のような道具に進化した。
20年前よりも焦げつきにくく、見た目も風格が出たように思う。

薪ストーブと同じく、これからもずっとこの鉄板を使い続けていくことだろう。
こういう逸品を僕は、宝物と呼ぶ。

 

Photo:シェルパ斉藤
Illustration:きつつき華

*隔月連載。次回の更新は11月下旬です。



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