ポールキャスナー 薪ストーブのある生活

日本における草分け的存在が贈るカントリーライフの提案。薪ストーブにまつわる様々なストーリーをお届けします。

パーフェクトファイヤーツールの探究:FIREBIRDが登場しました

薪ストーブを使っている人ならよくわかる話ですが、
薪を入れた後そのままにしておくと薪や熾きが動き、燃え方が変わります。
薪が燃焼するにつれ崩れたりします。
それで最初にいい調子で燃えたものが燃えすぎたり、燃えにくくなることがあります。

薪ストーブの大きな魅力はこの薪をいじる作業です。
ペレットストーブのように自動的に燃えたら面白くないと思っています。
どの薪ストーブでも薪を入れた後、ファイヤーツールを使って薪の位置を替えたり、いじったりする必要があります。
薪の位置を変えることにより最高に効率の良い燃焼のコントロールができます。
これがウッドバーナー(薪ストーブ使う人の意味)にとって最も楽しい作業です。 

 

ファイヤーツールの歴史

ファイヤーツールはいくつかの種類があります。
主に使うツールは火かき棒[POKER]と火ばさみ [TONG]です。

■火かき棒
火かき棒は薪を回転したり、ひっくり返したり、突っついたり(POKE)、押したりします。一番よく使うツールです。

↑ヨーロッパの昔のアイアンポーカー。
格好いいが機能的にはどうでしょうか?

 
■火ばさみ

火ばさみは薪を移動したり、持ち上げたりします。
また炭など移動したりします。
薪の燃えた後の燃えさしは灰の中に埋まっていきます。
灰から掘り起こして新鮮な空気を入れる。
特に新しい薪をくべる前に燃えさしを元気にすると、
追加した薪が調子よく燃えてくれます。

↑アンチークのトング(火ばさみ)。
数百年にわたってデザインが変わらない。
伝統の職人のギルドで伝わってきた形状です。 

その他に灰かきや、シャベル、ほうき、ふいごなども薪ストーブに必要なものです。
 

 

日本のファイヤーツールをつくる!

私は35年以上にわたって薪ストーブを使っています。
その間、数種類のファイヤーツールを使ってきました。
その道具の中には、調子のいいものと全く使いものにならないものがありました。
伝統的なものと近代的なものがありますが、
機能的に使いものになるかどうかは実際に試してみないとわからない。
実用性よりも「飾り物」が多いことがわかりました。
また一つの目的で使えても、他の目的では使えないものがほとんどです。

どうしても新型ファイヤーツールを日本で開発したいと思っていました。
日本は世界一の技術力と品質の高さがあります。
そして素晴らしい和のセンスのデザインを条件にしました。

自分はデザイナーではないがアイデアマンと言われます!
工業デザイナーを探してSAAT DESIGNの安次富 隆さんに巡り会いました。
安次富 隆さんも薪ストーブユーザーですので、共通点がたくさんありました。
そして「物づくりの心」と「使う人の気持ち」などの考えがぴったり合いました。


デザイナーの安次富 隆さん。

アップルのスティーブ・ジョブズ氏の「Think different」の言葉からヒントをもらい、今までのファイヤーツールではなく、使いたい機能を中心に考えて、どんなものだったら理想的なファイヤーツールになるのか「発想の転換」をしました。

火かき棒と火ばさみをハイブリッドして一つのツールができないか?
二つのファイヤーツールの機能を一つのものにできないのか?

まずは従来の火かき棒や火ばさみの良いところと良くないところを調べて、なぜその形になっているのか研究しました。

 

デザインは機能 Design is Function

火かき棒の先端形状。
少ない力で薪に差し込みたいので、
先端の丸いものや鈍いものは使いにくいと思う。丸いと滑る!

角度も関係あります。
手前に薪を転がすので90°以上だと滑りやすいでしょう。
自分で開発するファイヤーツールにはこのことを反映したかった。
理想的な角度を見つけるために、あらゆる角度になったらどう性能が変わるかSAAT DESIGNの安次富 隆さんがマメに研究しました。

FIREBIRDは、デザインワークで使うピンセットをヒントにデザインしました。
要は指先の延長の道具。
ここで重要なのは指先にあたる刃先のカタチです。
色々なカタチが考えられますが、シンプルなほうが狙った獲物を外さないことに気づきました。鳥のクチバシのようなカタチになったのは必然だと思います。


前面から見たFIREBIRD。クチバシが鷹の爪にも見えるようになっています。


クチバシが薪にするどく喰い込み、目が熾きをとらえる……
火ばさみと火掻き棒が1つになったこのツールは、
シンプルなフォルムの中に多くの機能を秘めています。


最も苦労したのがこのバネ部です。
男性でも女性でも握りやすく、強度もあるバネにするために、
形状や熱処理の方法を試行錯誤しました。

 火ばさみがグリップしやすいものが使いやすい。

薪や炭を挟み込み、移動することが 多いです。鋸のようなギザギザがないと滑る。
従来の火ばさみのグリップ部です。薄いステンレス製で曲がりやすい。
右の写真はヨーロッパの近代デザインのもの。すべすべして使い勝手が悪い!


火ばさみは片手で使えるといいと思っています。
両手でないと使えないものが多い。
重い薪を移動する場合は両手を使いますが、ほとんどは片手で十分でしょう。
昔のものは元々暖炉のために設計されたので、今の薪ストーブに適していない。

100円ショップやホームセンターの安いステンレス製の火ばさみも使ってみました。
しかし炭の移動や焚き付けには十分ですが、5、6cm以上の薪の移動は苦労します。
グリップ感の良く片手でも使えるものにしたかった。
そして握力の弱い女性でも簡単に扱えるものが欲しかった。


鋭いクチバシを薪に刺してひっくり返したり、薪をつかんで位置を変えたり、熾きをつかんで移動させたり、ヘッドで熾きを砕いたりすることができます。


ヘッド部。
バーリング加工で作った目の裏面に意図的にバリを作り、薪に食い込むよう工夫しています。クチバシのカーブが薪をホールドし、目が薪がクチバシの中で回転するのを防ぐという仕掛けです。


トップローディングに最適な角度で薪をつかんで調子よく燃える位置に置ける。


手の延長で細かいコントロールができ、指と手首を動かすと薪をグリッブします。


薪を回転したりする作業は火かき棒より簡単にできます。


鋭い嘴が薪に喰い込み、滑らずに回転や移動ができ、口が2点なので安定します。
 

新しい薪を入れる直前に、燃えきった薪を砕いて熾き火を広げると火移りがよくなります。私は必ずやっています。
※撮影のためドアが開いていますが、この作業はドアを閉じたまま行います。


熾きをつかんで移動するのにFIREBIRDは最適です。


ツールは自分の手の延長なので、指先の間隔で簡単に操作できるものがいい。
薪ストーブや暖炉で使用できる他、焚火やバーベキューなどの野外料理で薪の位置を調節したり、熾きを移動することにも使えます。

薪ストーブは非常に熱くなるのでファイヤーツールの長さも大切ですね。
必ず革製のストーブグローブを使って操作しましょうね。
それでも短いツールは火に近くなるのでグローブをしても熱い!
長いツールは理想ですが、長過ぎるとまた使いにくいこともあります。
ちょうどいい長さはどれぐらいでしょうか?
当然ファイヤーツールは燃えないよう鉄やブラス(真鍮)で出来ているので、
素材からしてかなり重い。それを長くするほど重量が上がります。
しかし使いやすさを考えると重くないものを求めます。

結果的に、フックにも掛けやすい形状になりました。
問題を解決した結果、思いもかけなかった利点が生まれる。
デザインの面白さの一つです。


ウォーミングシェルフなどにSフックにかけると便利です。


南信州で生産するということで駒ヶ根市の製造業者にお願いしました。
地元なので細かな対応していただけることと、地元の経済のためにもなります。 


完成したFIREBIRDは、黒染めで仕上げました。
黒染めは、金属の表面に酸化皮膜をつくり赤錆を防ぐ防錆処理。
しっとりとした黒色が美しく、色がはがれることもありません。

格好いいデザインのファイヤーツールは、
薪ストーブや暖炉のそばに置いてアクセサリーとして飾りたいね!
ただ見た目が良くても機能性が悪いと使いものにならない。
しかし機能性だけで格好悪いものも置きたくはない。
理想的なファイヤーツールが機能性が高い格好いいものでしょうね!


特殊な鉄材を使いました。
普通は手に入らないが、製造者に無理していただきました。

理想なファイヤーツールを実現できるまで2年かかりましたが、
私は薪ストーブユーザーとしてこれ以上はないと思います。
また日本の独自の発想で世界の薪ストーブユーザーも認めてくれるでしょう!
 FIREBIRDを使うと、薪や熾きを思いのままにコントロールできます。
つまりFIREBIRDは「身体と心を温める炎をクリエイトできる道具」と思っています。
薪焚き人ならFIREBIRDを一度使ってほしい。
きっと評価していただけるでしょう! 

 
注意:
ファイヤーツールの先端はかなり熱くなります。
また鉄で作られており鋭い部分があります。
床に置いたまま踏んづけたりするとケガされます。
小さい子供の手が届かないように気をつけましょう。
使い終わったら必ず片付けましょう!
カバーをして、フックに掛けて仕舞いましょう。

Always put all of your fireplace tools away properly when you are done with them! Almost all fireplace tools are going to be made of metal. As such, these tools can be quite dangerous if just left strewn about the home. Take the time to pick them up, and avoid a potentially life threatening accident!  

 



このWebマガジンはファイヤーサイドが提供しています。

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コメント

  1. こんにちは。平塚市のすずきです。

    ちょうど私も悩んでいました。100円ショップのものは、買ったばかりなのにすぐ曲がっちゃいました・・・

    HPで知ったときには、「おお!!」と叫びました。

    さっそく使ってみました。

    いいですねええ!今まで使っていた物よりさすがに重いのですが、やりたいことがちゃんとできることが、嬉しいです。

    本当にいいものを世の中に出していただいて、ありがとうございます!

  2. こんにちは、島根県のRustic Craftさんで先ほど入手してきました。
    使い勝手、さすがです。
    今の日本で火ばさみはバーベキューなどか
    ゴミ拾いに使うという認識なのか
    やわな作りのものが多く、とても使いにくかったので
    良いものを作ってくださったととても喜んでいます。
    今日は薪ストーブを焚いていますが、焚かない日は火鉢です。
    薪ストーブの中の大きな薪から火鉢の中の小さな炭まで掴めて、
    本当に嬉しいです。

  3. さっそく購入させていただきました。素晴らしい使い心地です。これからも、使いやすいストーブ用品の開発をお願いします。

  4. zukky, Rosemary,なかさま、

    ご評価ありがとうございました。一つ一つストーブの道具を大切に開発していきたいと思います。
    使いやすいかっこいいものを作っていきます。
    薪ストーブの火の管理を楽になれば嬉しいです。

  5. リターンライダーさん、

    コメントありがとうございました。デザイン最中に名前を考えました。
    なんか鳥のような顔に思った。『双頭の鷲』はまた面白い。

  6. 松田さま
    ファイヤーバードに興味を持っていただきありがとうございます。
    先ほどメールもお送りしましたが、
    定価は¥8295(税込)になります。

    購入は販売店からしていただけます。
    全国の販売店はこちらのページに掲載しています。
    http://www.firesidestove.com/dealer/
    最寄りのお店にお問い合わせをお願いします。

  7. ポールさん、こんにちは。
    とっても素敵な暮らしをしていらっしゃいますね。
    今、私は、これから日本経済再生に向けてのブログを作ろうと思っていたところで
    いろんな情報を調べているうちにこのサイトにたどり着きました。
    駒ヶ根は、以前からよく知っており、南アルプスや駒ケ岳の景色がとてもきれい
    ですよね。近くにアピタやベルシャインもありますから暮らしやすい場所だと
    思います。大田切川など懐かしいです。
    薪ストーブは、都心では、扱いや導入が難しいと思われますが、山沿いの暮らしには
    適しているのでしょうね。薪をどこから買うのかはわからないですから、日本人は、
    その部分が心配なのでしょう。そして、煙突の工事など、取り付けのコスト負担の
    心配をするのでしょうね。ただ、日本人もポールさんのような発想を見習うべきだとは
    思います。実際、ポールさんは、薪ストーブで生活をされているわけですから、
    日本人の人たちもできないはずはないのですけどね。
    とにかく、日本人っていうのは、変化を恐れ、変化を嫌う性質があるのです。
    ただ、私は、これから「新しい日本を作ろう」という活動をしたいと思っていたので、
    ポールさんのサイトに出会えて良かったです。セレンディピティを感じました。
    また、時折、コメントいれますね。これからも情報を楽しみにしてます!

  8. あっこさん、
    コメントありがとうございました。
    我々のサイトへようこそ!
    日本は森林が豊富な国なので、だれでもやる気があるば薪ストーブと暮らすことは可能ですね。
    問題はやる気だけでしょうね。しかし最近特若い人たちが薪ストーブに興味を持っている。
    ストーブと煙突と工事のコストは一時的なので、その後長い使うことですので最終的に非常に経済的です。
    「新しい日本を作ろう」のであれば薪ストーブと暮らすことが大切ですね。

  9. Dear Paul,

    As a bizenyaki potter, who deals with firewoods on a regular basis, I have been looking for perfect fire tongs that can handle some extreme conditions. We use thousands of red pine wood bundles to fire our potteries at temperatures reaching up to 1200 degrees celcius. Would this fire tong be suitable for our use? I came across this website with great interest. The only problem is that we live in Okayama prefecture and there seems to be no distributor of your product around here. Can you kindly tell me how to go about purchasing this firebird fire tongs?

    p.s. I cannot read Japanese, so I would appreciate your reply in English…

    Thank you.

    -Yosuke

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