エッセイ集 薪ストーブの里から

ポールキャスナー 薪ストーブのある暮らし

日本における草分け的存在が贈るカントリーライフの提案。薪ストーブにまつわる様々なストーリーをお届けします。

斧の伝統を守るスウェーデンの鍛冶屋グレンスフォシュ・ブルークス

昨年の11月24日にスウェーデンのグレンスフォシュ・ブルークスを訪ねました。

ストックホルムより330キロ北に小さな町グレンスフォシュはあります。
グレンシュフォシュ川が間に通っています。


斧工場の裏に通るグレンスフォシュ川。
鉄分が多いため水が茶色です。
グレンスフォシュの意味は「境川」です。(Grans=境/boarder、fors=小川/creek)
ほとんどの家は壁を赤と白に塗り、いつでもクリスマスのような雰囲気です。

 
朝6時、入り口からのぞくグレンスフォシュ・ブルークスの鍛冶作業所。
昔はグレンスフォシュ川の水力でこの直径1.8mのハンマーミルを作動させていた。
現在は電気ですが・・・




斧作り

アックスマルチハンマーには180トンの圧力があります。
いくつかの金型がついている。
右から穴開け用2つ、刃型2つ、そして横縦などそれぞれの形に作り上げていく。
斧の頭を作る前に金型を設置する。
設置と調整で数日かかるので、これも職人の仕事の一つです。
一つの斧が2分以内に出来上がる。

 
鉄の棒に釜戸の中で1100℃を越える熱を加えて、斧の頭の大きさに切断する。

 
アクを刷り落とす。この火の粉の数で炭素の量がわかるそうです。


頭に穴を開ける。


斧らしい形になってきました。
温度が低くならないうちにすべての作業を終わらせないといけないので忙しい。


ルーン・アンデルセン氏(RA)が薪割り槌を仕上げていきます。


最後に斧の形を確認し、クラウンマークと本人のイニシャルを刻みます。
この人はレナート・ペッテション氏(LP)のミニハチェットを仕上げています。


出来上がった斧の頭。


研磨用ベルトでの仕上げ。


次は斧頭の下側刃の部分を820℃に熱して強化し、25℃の流水で素早く冷やします。
刃の焼を入れた後ロックウエル62の堅さになります。


斧頭は195℃のかまどで60分間熱され、強化されます。
こうすることで鍛治作業と強化の工程で発生するスチールのひずみがなくなり、
刃の先端部分は十分な硬度を持ち丈夫になります。
これでロックウエル57の堅さになります。
最後に革研ぎで刃縁をていねいに鋭くします。


職人は大きなハンマーで縁の角を叩いてそれぞれの質を評価します。
刃が割れなければ合格です。

 
大きな乾燥室で木製柄が保管されています。
完全に乾燥していないと、斧頭に付けた後さらに乾いて緩くなる可能性があります。
木製くさびも完全乾燥したものを使用しています。


斧頭に柄がつけられます。
グレンスフォシュの創立者の孫ラッセ・エリクソンが柄をつける専門担当です。
45年以上の熟練者でグレンスフォシュのすべての工程のマイスターでもあります。


油圧式プレスを使い、木製のくさびと一緒に柄を斧頭に押し入れます。
斧頭に対する柄の角度、並び具合、そして掛かり具合を確認します。
3本脚のスチール製のくさびを木製くさびに打ち込み、終了です。

 
出来上がった斧の保管室です。
あとは革のケースと各言語の斧の本をつけて世界のユーザーへ発送する。
このように手間ひまをかけて一本一本の斧を作り上げています。

グレンスフォシュ・ブルークスで働く人々

Yx Museum = 斧の博物館

スウェーデン、ストックホルムから北へ340キロ離れたヘルシングランド地方に
グレンスフォシュ・ブルークスがあります。
その横に可愛い赤い家があり、白い看板で「Yx Museum」とかけられています。
まわりは草原と林と川…


「斧を作る人は先ず斧の歴史を理解しないと良い斧は作れません」と
グレンスフォシュ・ブルークスの社長ガブリエルさんが語る。
「昔の人の日常生活の中では斧の存在が大きかった。
古代の時代から現在まで世界の斧のコレクションです。」
さぁ、玄関に入ると、驚くほどの斧の数です。何千本あるでしょう。



100年前までは当たり前のように斧が広まっていたため
グレンスフォシュも含めてすべての斧の生産者が大量生産していた。
薪割りだけではなく、木を倒す時も斧で行っていました。
しかし、セントラルヒーティングとチェーンソーなどの開発により、
斧が一般の生活から消えてゆきました。
ボーイスカウトやキャンプだけの道具になりました。

そんな厳しい時代になって、製品の品質を統一化し、ばらつきを少なくするため、
斧の表面を研磨し、ペンキを塗って仕上げていました。
しかし研磨と塗装のテーマとコストがかかり、次々と倒産してしまいました。
その時たくさんの斧の生産者が消えました。


斧の形も時代と共に変わって行く。


斧の形とデザインがたくさんあり、見た事のない形の斧の説明が
スウェーデン語で書かれています。


斧を振り下ろしたとき、柄の部分が木に当たってしまうと柄が痛む。
その問題を解決するため、グレンスフォシュ・ブルークスが開発した鉄のガードを付けています。
(写真の一番上の斧)

 
古代の石の斧です。
左の小さい斧はグレンスフォシュの敷地の土から出てきたそうです。
4500年も前のものだそうです。
手前の白い石の斧は今でもよく切れます。


100年前のグレンスフォシュ・ブルークスの職人たち


現在の職人たちの20年前の写真
左からマッチアシュ・マッツソン(MM)、フレッドリカ・ノルリソン、
シェル・オーケ・シェールンド(KS)、ラーシュ・エナデル(LE)、
ルーネ・アンデション(RA)、レナート・ペッテション(LP)
現在も全員います。


面白いものがYx Museumの外にありました。薪割りヘルパー!
薪が倒れても地面まで落ちない。そして安全性も高まるそうです。
私は古いタイヤを使っていますが、これはスウェーデンの伝統の一つです。

スウェーデンに行く機会があれば、斧好きな方はYx Museumを見るべきです。
PK

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