エッセイ集 薪ストーブの里から

宮崎学 フォトエッセイ 森の動物日記

森と里と野生動物たちから教わった自然のメッセージ 信州・駒ヶ根在住の動物写真家宮崎学のフォトエッセイです

森の勇者クマタカ

2012/2/29 miyazaki タグ: ,
| カテゴリー: クマタカ, 野鳥 | comments(2) »

 
(Photo:雪の上でウサギを食べるクマタカの若い個体

ボクは、ワシやタカなどの猛禽類が大好きです。
とにかく彼らは体を張って生きているので、いかにも強そうな姿形がいいのです。
それでいて、孤高で寂しそうな孤独感がたまらないからです。

なかでもボクは、クマタカがいちばん好きです。
クマタカはイヌワシについで大きな森林の王者です。
その体躯は、荒削りで野武士のような魅力があります。
ノウサギなどの獲物を豪快に狩り、深い森林を棲みかにして、孤独な生きかたをしています。
それだけに、誰の力も借りずに自らの責任で生き、狩りに失敗して負傷でもすれば静かに身をひいていきます。

そのクマタカが、信州の山野には少なからず生息しています。
クマタカは翼を広げると1.7メートルにもなりますが、ひっそりと息をひそめて生活しているので私たちが目にする機会は少ないのかもしれません。しかし、クマタカは太古の昔より信州の山野には確実に生息してきました。


(Photo:若いクマタカが獲物を捕まえた


ボクは、そんなクマタカの巣を知っています。
もうかれこれ40年ちかくも、クマタカの巣をそっと見守ってきました。
クマタカの巣は、標高1600メートルの中央アルプスの山懐にあります。
樹齢200年になろうとしているコメツガの地上25メートルの高さに巣はデンっと架けられています。
この巣でクマタカは、ほぼ一年おきに子育てをしています。
たった一つだけの卵を産み、生まれたヒナを丁寧に育てて一人前にするには一年近くもの時間がかかってしまうので、繁殖も隔年となってしまうのです。


(Photo:生後50日ほどのヒナを養うクマタカのメス

クマタカの営巣行動を観察するのは、新しい発見の連続でとても楽しいものです。
クマタカは警戒心が強く視力もいいので、人間の姿を丸出しにすることはできません。
観察するにはブラインドテントに身を隠して、気づかれないように行うしかありません。
このため、一度テントに籠もれば、3日間くらい外へでることもできません。
息を殺して、とにかくクマタカに見つからないように観察するしかないのです。

観察してみると、クマタカは夫婦での仕事分担が見事に分かれていることに気づきます。
オスは狩りに特化していて、獲物を狩っては巣へ運び入れます。その獲物をメスが料理してヒナに与えます。
そして、巣を中心にした近いところはメスが守り、オスはもっと広範囲に目配りをしながら家族全体を守っているのでした。

クマタカはこのような生活をしながら、何十年にもわたって世代を繰り返し、一定地域に暮らしていきます。
それには、自然環境が深く豊かでなければならず、まさにクマタカの生きる森は日本の森の理想郷といえましょう。
クマタカは深くて豊かな森林がなければ生きられず、孤高ゆえに環境変化には対応しきれない脆さも合わせもつ鳥類の王者なのです。
そんなところが、ボクのもっともあこがれるクマタカの姿です。
 


(Photo:森林上空を飛ぶと、実に存在感のあるクマタカ


(Photo:巣の中で押さえている獲物はモモンガ


(Photo:雪の上のクマタカの足跡


(Photo:生後10日ほどのヒナなのに、気品にみちている)


(Photo:獲物を押さえ興奮気味のクマタカのメス


(Photo:翼の幅の広さが、森の帝王を特徴づけている飛翔姿

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