エッセイ集 薪ストーブの里から

宮崎学 フォトエッセイ 森の動物日記

森と里と野生動物たちから教わった自然のメッセージ 信州・駒ヶ根在住の動物写真家宮崎学のフォトエッセイです

ノウサギはどこへいった

2011/1/1 miyazaki | カテゴリー: ノウサギ | comments(8) »

 
(Photo:晩秋、白くなりかけのノウサギ 約30年前に撮影 リバーサルを複写)


(Photo:冬になり全身が白くなったノウサギ 約30年前に撮影)

輝かしい2011年の幕開けとなりました。
今年の干支は、ウサギ。
元気に脱兎の勢いで走りぬける年となるのでしょう。

ウサギといえば、ノウサギ。
日本の山野には、昔からノウサギが生息していて私たち山里の民にはとても親しまれてきた動物です。
唱歌に
「♪うさぎ追いし、かの山、小鮒釣りし、ふるさと…」
と歌われているように、のどかで素敵なふるさとが昔は日本中にころがっていたはずです。
そうした原風景のなかに、ノウサギはたしかにいました。
雪が降れば、いたるところにノウサギの足跡があり、子供たちはそれを追い、うまく捕まえられればそれはそれは美味しいご馳走になった時代です。


(Photo:ノウサギが新雪を走ってきた足跡)


その昔は、ほんとうにノウサギはたくさんいました。
中央アルプスに「駒ケ岳ロープウェイ」ができたころ(1960年代後半)、ボクは「けもの道」の撮影のために、管轄区から許可を貰って、駒ヶ根高原からロープウェイ乗場までの道路を四輪駆動車で通っていました。
夜間にその林道を走れば、50頭ほどのノウサギがいたるところから出てきたものです。
ノウサギは、車のヘッドライトのなかをピョンピョンとしばらく道路にそって走っていって、やがて横っ飛びに藪へ消えていった思い出があります。
そのくらいノウサギはたくさんいました。

そのノウサギが、ここ30年ほど前からめっきり姿を消してしまいました。
とにかく、同じ道路を車で走ってみても、まったくノウサギは出てこなくなったのです。
雪が降っていろんな動物の足跡が見られるのに、ノウサギの足跡はひとつも見つからない状態・・・。
どうしてこんなにもノウサギがいなくなってしまったのかと考えれば、どうやら周辺環境の樹林の変化にあることがわかりました。

ノウサギは、敵と戦う武器を持っていません。
このため、唯一の武器は、感度のよい耳で敵の存在をいち早くキャッチし、脱兎の勢いで全力疾走をして逃げることです。
このためノウサギは、スキー場とかゴルフ場のように遠くまで見通せるような環境がなければ、得意の「逃げる」という武器を使えません。
見通しが悪く斜面のあるような場所でキツネやテンなどの天敵とニアミスをおかせば、ダッシュ力にまさる天敵に、あっという間に捕まってしまいます。


(Photo:ヤマブキの小道を歩くノウサギ 約28年前の撮影)

その昔、広大な面積が皆伐されていた当時は、ノウサギはたしかにたくさん生息していました。
ノウサギは山野の地肌が出ているような明るい草原が好きなのです。
その後山に植林がされ、下草も刈られないまま放置が続き、雑木林は年々繁茂しはじめます。
そこはまさにノウサギの住めない環境になってしまったと考えていいでしょう。
藪があってはノウサギは走りにくいし、敵が近くにいても気がつかずに捕らえられてしまうのです。

大きな樹が増えてきた森では、サルやツキノワグマのような樹上にまでいける動物たちが激増してきます。
このように、野生動物が極端に増えたり減ったりすることは、自然界のバランスが悪いことなので私たちはそのへんのバランスを考えて自然を見ていくことが大切なのではないかと思います。

中央アルプス山麓にノウサギが再び定着できるようになるには、樹木がさらに成長して森の林床に隙間ができ見通しが利くようになってからでしょう。
それまでには、あと20~30年の歳月が必要なのかもしれません。


(Photo:人里にあるノウサギの足跡。こんな光景はめったにみられません)


(Photo:なかなか出会えない動物は糞を発見することでその生息を知ることができます)


(Photo:こんな食跡をみつけたら、近くにノウサギが・・・)


(Photo:フランス料理では今でもノウサギの料理が普通ですが・・日本ではみられなくなりました)

 

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