エッセイ集 薪ストーブの里から

宮崎学 フォトエッセイ 森の動物日記

森と里と野生動物たちから教わった自然のメッセージ 信州・駒ヶ根在住の動物写真家宮崎学のフォトエッセイです

モモンガの棲む森

2011/5/26 miyazaki | カテゴリー: モモンガ | comments(2) »

モモンガ

いまから30年も前のこと、中央アルプスの森林帯でボクはクマタカの撮影をしたことがあります。
太い樹の上にボクの身を隠すブラインドを張って、そこに隠れて撮影をしていたのです。
そのブラインドに、あるときモモンガが7匹も棲みついてしまったことがあります。
モモンガたちは、ボクの汗拭き用に置いてあったタオルを布団がわりにして、木の皮と一緒に巣をつくって寝ていたのです。
そんな熟睡しているところに、いきなりボクが登っていってブラインドを開けたものですから大パニックになってブラインド中を走りまわっていました。
モモンガは本来は樹洞に巣をつくると思っていたのに、ブラインドというテント生地の中に7頭も棲みついたのには驚きました。

モモンガは、リスくらいの大きさで、目がまん丸で大きくて、とても可愛らしい顔をしています。
夜行性で、植物の芽や実などを主食にして生きている動物です。
夜の森でひっそり生活していますので、その姿をなかなか見ることはできません。
このため、とても数が少なくきわめて珍しい動物のように思われてしまっています。
ボクも以前は、「モモンガはどこにいるんだろう」と思い、長い間あこがれていた動物でした。
偶然ボクのブラインドに巣を作ったモモンガたちも、会いたいと思うとなかなか顔を見せてくれないのです。


(Photo:モモンガはキツツキの開けた穴を借用して巣にすることがあります)


ところがそのモモンガに、ある夜間やっと出会うことができました。
林につづく道路を車で走っていたところ、文庫本をひろげたくらいの大きさの生き物が、真っ暗闇の暗い林の樹間を滑空していったのです。
モモンガは、ムササビのように腕と腿にかけて膜をもっており、これをマントのように広げて高いところから低いところまで空中を滑空することができます。

その現場は、意外にも人家に近いところでした。
こんなところにもモモンガが生息しているのだ、というのがそのときの第一印象でした。
ボクはこの出会いをして以来、「モモンガは身近なところに確実にいる」という考えに変わりました。
そして、山野にでかけるたびに、モモンガが巣穴にしているであろう樹木の穴を丁寧に探すようになりました。
すると、モモンガの巣穴が、樹幹にも見つかるようになり、モモンガに近づくことができているとう確信が持てるようになってきました。


(Photo:滑空してきて着地した瞬間のモモンガ)


しかし夜行性のモモンガを撮影するのはなかなか難しいことでした。
ボクの得意なロボットカメラで見張ることを思いつき、無人での観察からスタートして少しずつモモンガのことを観察していったのです。
いつ顔を見せるかわからないモモンガを待って真夜中ずっと起きているのは不可能に近いです。
しかし、ロボットカメラなら夜間のどんな時間帯でも、きちんと予測をたて、センサーをしかけておけば確実に撮影してデータを見せてくれます。

林のなかに設置されたロボットカメラは、3台。
それぞれに、樹幹にそってときには1年間にもおよぶ撮影を試みました。
その結果、ロボットカメラはモモンガの動きを確実に捉えてくれました。
樹幹にそって登っていったり、下ってきたり、とにかく夜の森のなかでモモンガは活発に行動していることを記録してくれたのです。
日本の自然界はわからないことばかりです。
それをどうやって身近なものへもちこむには、観察あるのみです。
観察していれば必ずヒントが生まれ、「黙して語らない自然界」を少しずつ知っていくことができます。
モモンガ観察は、ボクにとってやっとはじまったばかりですが、これから夜の森でモモンガと語り合えると思えばうれしくなります。
 


(Photo:昼間の樹幹で遊ぶモモンガの子供たち)


(Photo:昼間なのに、樹幹をさかさまになって降りてきたモモンガ)


(Photo:モモンガの好きな林)


(Photo:こんな別荘地のある林も、モモンガの棲みかです)

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