宮崎学「森の動物日記」

森と里と野生動物たちから教わった自然のメッセージ 信州・駒ヶ根在住の動物写真家宮崎学のフォトエッセイです

生命を守る髭センサー

(Photo:山林のどこにでもたくさんいるアカネズミもこうしてアップでみると、立派で長い、たくさんのヒゲで防備しているようです。)

森で出会う野鳥や動物などは、つい、全体像で見てしまうことが多いものです。
ボクも、これまで、ずっとそのような見方をしていました。
でも、撮れた写真を見ていたら、いろんな特徴を備えたパーツのあることに気づきました。
しかも、そのパーツはそれぞれの生きものたちにとって、生きるためにとても大切で必要としながら進化してきたことに気づいたのです。
そう、思いはじめたら、それはそれは面白くてググ~~んと生物に近づきたくなってしまいました。


(Photo:ヒメネズミも両脇の身体の幅をヒゲで測り、地面の凹凸や、穴や隙間をくぐり抜ける時などに役に立ちます。フクロウなど上空からの天敵には尻尾をセンサーにして行動していることが多い。)

たとえば、ノネズミなんてどこにでもたくさんいるのに誰も観察しようともしません。
ましてや、撮影なんてほとんどしないと思います。
でも、実際に撮影をはじめるとこれがまたあまりにも難しくて、とても技術の要ることに気づきました。
そして、技術と闘っているうちにますますノネズミのような小さな動物でも自然界ではとても必要とされていて、生きるために意味のあることに気づきました。
だから、これまた動物の存在がますます好きになってしまって、撮影も夢中になれる楽しさを味わってしまいます。

(Photo:足元は下に向いたヒゲで、背中の部分までは上に向いたヒゲで間隔を的確に測っていることは確かです。)

そんなノネズミのヒゲは、自分の身体全体を安全にカバーしながら身を守る大切なセンサーだったのです。
普段ではこのヒゲの存在すらにも気づかないものですが、角度を変えて見ていくと、ヒゲの向きや長さがいろんな情報を拾っていることに気が付きました。

上のほうに伸びた長いヒゲはノネズミの背中の位置までをも進む方角の障害物を予め測ることに使っています。
両サイドに伸びたヒゲは自分の身体の両脇の間隔を未然に測っているようです。
さらに、顎ヒゲは足指の先まで感覚が通じているらしく、行くべき先の足下を確実にセンサーしていたのです。

こうして、ノネズミだけをとってみてもヒゲは生きるためにとても必要なカタチに進化しながら日々の生活を確保してきたことに理解がいきつきます。

(Photo:ノウサギは耳がよく目立ち理解されていても、ヒゲが耳と同じ以上に長いことには案外気づいていないものだ。)

また、ノウサギはこれまで耳だけが進化して生きてきているようにいわれつづけてきました。
でも、耳以上に顎ヒゲが長いのです。ノウサギは、この髭で地上の凸凹をはかりながらキツネなどの天敵に出会ったときは脱兎の勢いで走って逃げていくことに使っているのです。
それは、まさに身を守る安全の「杖」みたいに利用しながら今日まで生きのびてきたからなのでしょう。

なので、このヒゲだけをテーマにしていくつもの動物を見比べてみると、ヒゲの応用利用法がみえて、それぞれの動物の生活史までもがわかってくるから楽しいです。


(Photo:リスには頬髭とは別に顎にもヒゲがあるけれど、これは樹枝での顎アッパーを避けるためだと思われます。)

(Photo:リスの顎ヒゲ。ジャンプした瞬間に、バランス、止まり木までの距離、位置などを一瞬にして測っているように見えます。有効なセンサーとなっているにちがいありません。)

(Photo:テンは、ヒゲとは別に上下の睫毛がこんなにも長かったとはオドロキ。)

(Photo:樹洞で寝起きのムササビをみたら、やっぱり彼にもヒゲがあり「眉毛」がとても長いことに気づく。)

(Photo外来種のヌートリアは、草食動物だけにヒゲは下向きに生えている。このヒゲで餌となる植物の感覚を測っているようです。)

(Photo:サルのヒゲは「無精髭」で生活にはそれほど役立ってない、と思われます。)

(Photo:口から長いヒゲのはえたサル?いえ、これは麦どろぼう中の瞬間でした。)

 



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