宮崎学「森の動物日記」

森と里と野生動物たちから教わった自然のメッセージ 信州・駒ヶ根在住の動物写真家宮崎学のフォトエッセイです

最近スズメバチに攻撃されて危機を逃れたことがあります


(Photo:オオスズメバチは顔に黄色の部分が多く独特の表情をしています。
大人の小指の元から指先くらいまでくらいあり、とても大きいので、他のスズメバチと区別がつくと思います。)

ボクは、いろいろな目的で森のなかに無人撮影ロボットカメラを設置して自然界の動きを探っています。
その一つに、森の樹洞に巣づくりした「モモンガ」を4年間にわたって追っています。
そのモモンガの巣穴をオオスズメバチが横取りして樹洞内に巣をつくってしまいました。
樹洞はいろんな生物が狙っているのだな、と思いながらオオスズメバチの出入りを観察したことがあります。
ボクは、巣口から3mくらいのところで観察をしていましたが、木を叩いたり振動を与えてスズメバチを刺激しないかぎりこの場所なら大丈夫、と思っていました。


(Photo:モモンガの巣穴から偵察に出てきたオオスズメバチ。外を見ては奥へ引っ込むので何か相談をしているように見えます。)

ところが、スズメバチは樹洞の奥から巣口までときどき出てきてはボクを見つめて、再び奥に帰っていく個体がいました。
それが、スズメバチの監視係だとは知らなかったので、ボクはまだのんびり巣口を見ていました。
そのあと、4匹ばかりが巣口にやってきて、さらにボクを見つめ、そのまま奥に消えていったのです。
この行動こそが、実はスクランプルに出る相談を巣の内部でしていたのでしょう。

まもなく、さりげなく飛び出してきた1匹が、ボクの目の前をゆっくり上下運動をするように飛びはじめました。
この動きは、スクランブルではなくて、このまま餌取りにいく新米スズメバチの行動だとボクは思っていました。

ところが、その動きが執拗で、どうも様子がおかしいのです。
スズメバチはボクの顔から1mくらいのところでゆっくり振り子状に左右に飛びはじめたのです。
すぐに、もう一匹が加わり2匹で振り子状飛翔となりました。
このとき、これは襲う前触れ行動にちがいないとボクは判断して、必死に逃げました。
スズメバチは15mばかり追ってきましたが、ボクは藪のなかに身を隠して難をのがれました。
ここでボクの判断がもし遅れていたら、1匹のスズメバチにロックオンアタックをかけられたことでしょう。

最初の一撃で、「攻撃目標」となるフェロモンをボクは打ち込まれたハズです。
そうすれば、何匹もの後続スズメバチたちがフェロモンに誘導されてアタックをかけてくるから死を覚悟しなければならないほど刺されたことでしょう。
オオスズメバチはこのようにこちらが何もせずにただ見ているだけで、相手が襲撃態勢になることがありますからとっさの逃避行動をとらなければなりません。
とにかく、ハチにはこのような習性をもっていることを覚えておいたほうがいいでしょう。

スズメバチの仲間には、オオスズメバチやキイロスズメバチ、チャイロスズメバチなど攻撃性と毒量の多い危険なハチたちがいます。
とくにオオスズメバチは巣を構わなくても、ただ見ているだけで攻撃してくるという賢い判断をするハチです。
なので、オオスズメバチだけは特に注意をしなければなりません。


(Photo:チャイロスズメバチは近年増えてきてますが、刺されると猛烈に痛いので要注意のハチです。襲わないようなふりをしながら、地面すれすれのところでトラック競技をするように集団で円を描き、そのまま襲ってきます。)

ハチたちにはとにかくこのような習性をもったものがいますから、フィールド歩きには細心の注意を払わなくてはなりません。
最近は、長野県の無料キャンプ場でキイロスズメバチに刺されたといって町を訴え裁判を起こした人がいました。
美しくて素晴らしく豊かな自然には「スズメバチ」も「マムシ」も「ツキノワグマ」もセットになっているのが本来あるべき自然の姿です。
毒虫や毒草、落石、倒木…、とにかく自然のなかにはいろいろな危険が背中合わせとなっていますから、自己責任を忘れないためにもいくつかの予備知識を持って行動したほうがいいでしょう。
少なくとも、オオスズメバチとキイロスズメバチの区別がつけられるようになっていてほしいものです。


(Photo:コスズメバチの巣は木陰にひっそりと作られていることがあります。刺激すればいけませんが、オオスズメバチほど攻撃的ではありません。)

 


(Photo:クロスズメバチは小さなハチですが数が多いので集団になると怖いです。肉食なので、イカの切り身に食らいついているところです。)


(Photo:ツキノワグマに襲われたクロスズメバチの巣。たくさん残されたハチたちが凶暴になっているので、注意が必要です。この撮影中にも2回刺されました。)


(Photo:チャイロスズメバチはこんなところにも巣をつくります。別送の門柱にある隙間から内部に巣を作っています。)


(Photo:アシナガバチは体長3センチくらい。普段はおとなしいけれど、巣などに刺激を与えると襲ってきますし刺されれば毒量も多いので腫れます。)


(Photo:公園のトイレにあるアシナガバチの巣(矢印)。このようなところに巣をかけますが、そっとしておけば、向こうから攻撃してくることはありません。)

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