宮崎学「森の動物日記」

森と里と野生動物たちから教わった自然のメッセージ 信州・駒ヶ根在住の動物写真家宮崎学のフォトエッセイです

春の小さな庭の物語


(Photo:オオイヌノフグリの花を見つけると春を実感できます)

どこかの堤にカワセミが来た・・・あの山にはフクロウがいるらしいから探しに行こう・・・などなど。自然というと、なぜか遠くのほうばかりを見てしまいがちです。
ところが、身近な自宅の庭先にもたくさんの自然がころがっていました。
私たちはとかく、見慣れている庭やご近所の普通の風景には、ほとんど関心を示さないものですが、何気ない庭先の変化から春を感じ取ることもあります。

そこで、庭の畑に無人カメラを設置して、庭のようすを見てみることにしました。
そうしたら、
「えっ、えっ、えっ、えっ、… まさか、こんなことが起きているの?」という発見の連続だったのです。

(Photo:ハコベの蕾を食べるスズメ。)

寒い冬が過ぎて春一番に咲くオオイヌノフグリ。その水色の花に喜んでいたら、オオイヌノフグリは夜間には花を閉じて眠ることを知りました。
そして、朝は太陽が登ってきて、暖かくならないと、あの水色の花は開かないのです。
しかも、天気がどんなによくても、風が強く寒い日には、オオイヌノフグリはやはり咲きませんでした。
気温が17度以上にならないと、どうやらオオイヌノフグリは花を閉じて眠ったままのようです。


(Photo:草の根を食べながら土をほじるのでスズメの嘴は土だらけ。)

そんなオオイヌノフグリですが、日を追って暖かくなると、たくさんの花をつけ水色の絨毯をつくります。
しかし、その間にハコベがぐんぐん伸びてきて、小さな白い花をつけます。
やがて、オオイヌノフグリとハコベの花の交代が起きるのですが、このハコベの蕾をスズメが食べていたのには驚きました。
さらにスズメは、春の土を嘴で掘り起こして、ハコベたち植物の根を食べて、嘴を土だらけに汚していました。
身近なスズメなのに、私たちが気づかないところで、春をとても楽しみにしていたのでした。


(Photo:嘴が割れた跡の残るスズメは以前に大怪我をしたのだろう。)

さらには、冬鳥として越冬にきていたツグミは、シベリア地方の雪解け時期に間合いをはかるように、畑に数日間滞在しながら、いつのまにか北帰行をして行くのです。
そんなツグミと同じように、珍鳥でおしゃれなレンジャクたちが畑に数日間居候して、いつのまにか北への旅路についていきました。
レンジャクには尻尾の先が黄色いキレンジャクと、尻尾の先が真紅のヒレンジャクがいて、そのどちらもほんの一瞬に立ち寄って旅を急いでいることが分かりました。
こんな一瞬の訪問も毎日庭先を観察していないと見逃してしまうところです。


(Photo:ムクドリの雄が妻であるメスに怒りをぶつける夫婦喧嘩)

また、あちらこちらの庭にあるツバキが咲いてくると、ヒヨドリはツバキの蜜を求めます。
その証拠に嘴に黄色い花粉をいっぱい付けて庭に舞い降りてくるものですから、ヒヨドリがどんなに澄ました顔をしていても、嘴のよごれで何をしてきたかまでがわかってしまいます。
春の花たちには、そんな素敵があるから観察は楽しいのです。


(Photo:嘴にツバキの黄色い花粉をいっぱいに付けるヒヨドリ)

そして、ムクドリは近所の瓦屋根の隙間で子育てするので、すっかり夫婦になり庭を歩き回っています。
そのムクドリが夫婦喧嘩をしていたり、春は思いのほか庭が賑やかでした。
こんなこと、毎日時間をかけて観察していなければ分からないことなのに、無人撮影ロボットカメラが一部始終を記録してくれるのだから、楽しい時代になりました。

あなたの家の横でも、スズメたちが庭や畑で遊び、ヒヨドリやツグミも加わって、毎日いろんなドラマを繰り返しているんだと思います。


(Photo:ヒレンジャクが花見に訪れた)


(Photo:全身がお化粧のように粉っぽく見えるヒレンジャクは、歌舞伎役者のような不思議な模様をしている)


(Photo:ツグミは何故かいつも真摯的に礼儀正しく動いているところがステキです)


(Photo:アルプスの頂きを見つめながら、ツグミはシベリアへ旅立つ日を考えているようだ)


(Photo:畑で何やら捕まえたムクドリが得意げな様子です)


(Photo:アサツキが自生する畑で餌さがしをするスズメ。スズメから見るとまるで林の中にいるようです)


(Photo:ノラネコが野鳥たちを狙ってときどき徘徊しています…)

 



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